破壊的な貿易協定であるTPPのかわりに、持続可能な社会、自然、経済、貿易のルールをつくろう

破壊的な貿易協定であるTPPのかわりに、持続可能な社会、自然、経済、貿易のルールをつくろう

提携米研究会 2011年1月26日版


■提携米研究会の政策提言趣旨
一、短期的経済利益に目がくらんだTPP交渉参加を行わないこと
一、人類と地球生態系にとって持続可能な世界的貿易ルール構築に向けて積極的な役割を担うこと
一、日本国内の第一次産業の自立と、人口減少社会における国土保全のビジョンを示すこと

■提携米研究会の自由貿易に対する考え
国際紛争を抑止し、協調ある国際社会を維持し、発展させる上で「自由貿易」は重要である。しかし、それ以上に、人類と地球生態系の持続可能性は重要な課題である。今日、生物多様性条約締結国会議では「遺伝資源の持続的な利用と公平な分配」が議論され、気候変動枠組み条約では、「石油資源の使用削減ルール」が議論される。世界の貿易ルールにも、「持続可能性」を前提に取り入れる必要がある。
世界の人口は引き続き増加し、栄養不足人口が増加、水資源やエネルギー調達の機会も失われつつある。食料、水資源、エネルギーが国際紛争の原因となり、その公平な分配も課題である。

なかでも、食料における節度のない自由貿易は問題である。アメリカをはじめ、多くの食料輸出国は、持続不可能な石油エネルギー多投型農業で成立しており、自国の自然環境を破壊し、輸入国の地域の農業、食文化、生活を破壊する原因となっている。
世界の気候が不安定になり、異常気象が多発する中、石油エネルギー多投型農業は、石油資源の行き詰まりとともに生産量の不安定さを見せている。
2008年には、食料輸出国の多くで不作と国際価格高騰を受けて、輸出制限措置が行われた。2010年にも、ロシアが麦の輸出を制限するなど、食料はいざとなれば自国の供給を優先する性質を持つ。無制限の自由貿易品目にはなり得ない。

日本政府は、TPP(環太平洋連携協定)交渉への参加を検討している。WTO(世界貿易機関)の交渉が行き詰まりを見せる中、自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)による、2国(地域)間の協定が進められている。
TPPは前提なき自由貿易を標榜しているが、その中心にいるのはアメリカであり、生物多様性条約にも、気候変動枠組み条約にも積極的に参加せず、持続可能性の視点を持たない国の発想によるものである。TPPを受け入れられるものではない。

日本は、貿易相手国として、アメリカと中国に深く関わっている。地政学的にも、ふたつの超大国の双方に影響を持つ重要な位置を占める。
国内においては、少子高齢化による人口減少社会が到来し、新たな将来展望を生み出し、行動する必要がある。
過去の発想に縛られ、経済成長国、資源小国、工業製品輸出国、アメリカ依存という自らが生み出した幻想にとらわれ、可能性を制約するべきではない。

世界に対し、地球生態系や人類の持続可能性をふまえた貿易ルールを示す必要がある。それと同時に、あらゆる国や地域の自然環境、伝統、文化を尊重した第一次産業と生活の自立を支持し、日本における第一次産業の自立と持続可能性を追求する必要がある。
日本における人口減少社会に合わせた国土計画、農山漁村と都市の関係、第一次産業の経済としての自立と、その前提となる社会インフラを維持する農山漁村の役割の分担など、喫緊の課題は多い。
すでに多くの農民、市民、科学者、政治家が、様々な提言とともに具体的事例を提示している。明確なビジョンを構築し、提示することが必要だ。

提携米研究会は、2009年5月「日本の農地と食を守ろう! 田んぼに自由を、そして自給率を上げよう」の中で、農業を中心に政策提言を行っている。
この要旨は、小麦、大豆、菜種等に対する生産・消費誘導政策、米の生産調整政策の撤廃と激変緩和措置、米麦の国家貿易の廃止とWTO体制に対する食料安全保障の例外措置への国際的合意にむけた取り組み、環境保全政策、有機農業や中山間地対策等についての提言である。参考にされたい。