農水省米政策シミュレーションとパブコメから5月22日まで

新聞報道などで減反政策についての議論が出ています。
農林水産省は、米政策に関するシミュレーション結果や農政改革の検討方向などを公表し、意見募集をしています。
5月22日までです。
提携米研究会も、早急に意見をとりまとめ、公表および提出する予定にしています。

以下、農水省の意見募集ページ
http://www.maff.go.jp/j/nousei_kaikaku/iken_bosyu.html

(以上、4月24日公開、以下、5月10日に追記)

意見募集では200字までの制限となっており、
一言しか言えなくしています。
これでは、本気で意見を求めているとは言えないのではないでしょうか?

改革の検討方向とシミュレーションについて、提携米事務局として問題点を整理、指摘したいと思います。

農政改革の検討方向について 事務局メモ 問題点の整理と指摘

農政改革の検討方向について
Ⅰ 基本的な考え方
1 農政改革の必要性とその目的
(1)我が国農業・農村の現状に関する認識
「また、燃油、肥料等の農業生産資材についても、世界的な資源問題の深刻化から、安定的な輸入に一層の努力を払わなければならなくなってきていることも忘れてはならない。」とあるが、世界的な資源問題の深刻化から、日本における資源を活用した循環型の農業体系確立に一層の努力を払う必要があるという視点をとるべきではないか?

2 改革の成果の共有
(1)改革によって期待される成果
「また、グローバル化の進展にも対応し得る農業構造の確立も図られる」とあるが、同時にグローバル化に対し、国際的な食料貿易のあり方に提起するための基盤となるよう改革を行うべきと考える。

Ⅱ 検討項目と検討方向
1 食品の安全性の向上
(3)消費者への食品情報提供の充実による信頼性の向上
この内容に対しては、情報のアクセスに関し、消費者の「安心」を希求し、「予防原則」に立った価値観を尊重した生産、流通上の情報発信の自由の確保、不用な情報制限を行わない、情報格差を生まない取り組みが必要である。
とりわけ、「イ食品の品質管理や消費者への情報提供などに意欲的に取り組む食品事業者が適正に評価される仕組み。」については、評価の仕組みが必要であるとしても、政府等による規制や管理に基づく評価であってはならないと考える。民間が主体的に取り組むような政策で十分であり、政府の仕事であるとは言えない。

2 担い手の育成・確保
国が個人経営体や小規模経営体である農業の性質を理解し、経営発展を行うことは、過去において失敗を繰り返している。国が直接的に担い手への関与を行うべきではない。国は、新規参入や既存の経営体に対し、基盤整備や低利融資(担保)などを行い、経営体が自立して経営する上で、民間金融(農協を含む)や、公共事業面を担うことが必要である。同時に、不作や価格の急変時の緊急救済措置などセーフティネットの整備のみでよい。
また、過去・現在において「担い手」誘導政策に米の生産調整措置を盛り込む、経営規模での選別を行う等、様々な「経営への口出し」を行い、それを条件としている。結果として、国の農業経営への関与が農業経営者のやる気を失わせ、経営への自立的責任を失わせてきたのではないか。担い手の育成・確保において、農業経営には関与せず、経営に関わる制約を設けない融資、基盤整備が必要である。
ただし、将来の食料不足、資源不足を考慮し、持続可能な循環型農業体系や地域計画等についてはインセンティブをつけるなどの個別経営ではなく、政策的誘導措置は行うべきである。

3 農地問題
「農地転用規制の厳格化や農用地区域からの除外の厳格化」を確立するとともに、農地を所有者が貸借した場合の自作と同様の税の措置が望ましい。農地の税制優遇上の判断として、輪作等による必要な休耕を除き、生産活動(作付け、収穫)を行っていることを条件に位置づけることで生産誘導へのインセンティブは図られる。それ以上の権利委譲誘導や集積誘導は、私有財産に対する過剰な政策となり、日本の地形や労働体系に即した自作農的農業体系を破壊することにつながりかねない。

4 農業生産・流通に関する施策のあり方
別途政策提言の通り、米の生産調整(減反)を基軸とした施策を廃し、自給率の低い主食的穀物等への誘導政策を積極的に行うことで、財政的に効率的な形で自給率向上を図ることが可能になる。自給率の低い主食的穀物等は、価格面で国産品が圧倒的な不利条件に置かれており、長年の輸入を軸とした流通体系が確立した結果、国産品を流通させるための生産、流通、加工体系が失われている。この点に重点を置いた生産、流通、消費の誘導措置を取るべきである。

5 農業所得の増大
農業所得の増大は、農業生産者の経営者としての努力の結果である。ただし、現状では仕入れサイド(農協、集荷業者等)の権益が重視され、個々の農業経営者に不利な規格、取引慣習がある。この点の改善を行う以外に、国が農業所得の増大に向けた関与を行うべきではない。
コスト削減に対しては、基盤整備、インフラ整備に力を入れるべきである。ただし、その場合、農業経営者を含め、地域的な合意が必要であり、政策への参加の有無にかかわらず地域が合意することを前提にすべきである。

6 食料自給力問題
生産面ではなく、エネルギー、肥料等の資源確保が国の農業経営に対する食料自給率上の課題となる。安定的な輸入調達の必要性もさることながら、国内資源の循環的な利用確立によるエネルギー、肥料等資源の確保のための研究、モデルづくり、誘導措置を政策として行うべきである。

7 農山漁村対策
農山漁村における中山間地等直接支払いや、生物多様性確保のための農地水環境保全向上対策などは、地方への財源、権限委譲を行い、地方自治体が主体的判断で、農業経営では担保できない地域環境等に対し、直接支払い等が行えるよう政策を是正すべきである。
全国一律の直接支払いや対策は、結果的に個々の農業経営を圧迫する要因になる。
国土保全上重要な地域、流域環境保全上重要な地域の農産漁村の環境保全については、それぞれの地域、流域が、独自の財源と判断をもってその担い手である農林漁家に対し、施策を行うべきである。
都市と農山漁村の対流、交流については、それぞれの地域的な施策の中で、地域の判断によって行うべきものであり、これも全国一律にする施策ではない。
すべての過疎地域を同列に扱うという判断は廃し、地域ごとの動機、必要な施策(人、もの、金)によって、地域による合意の元で地方自治体が施策を行うことが望ましい。
国は、地方自治体からの施策要求や実行に対し、民主性、必要性等を判断し、また、地域住民等利害関係者と地方自治体の間での係争が起きた場合のみ、その調整役として出動すればよい。

8 連携軸の強化
民間への関与ではなく、政府部内での縦割り行政の解消などによる施策の連携が求められる。

9 新しい分野への挑戦
(2)重点プロジェクトの推進
「イ) アグリ・ヘルス産業開拓プロジェクト」
遺伝子組み換え技術、クローン技術等の高度なバイオ技術の導入は、社会的な議論と合意形成を優先し、安易に行うべきではない。とりわけ、開放形環境に対する導入は、生態系のシステムや生物の遺伝子システムが解明されていない以上、一度放出したものを回収することが困難であり、行うべきではない。
従来の研究、開発技術や伝統的な技術で高度化できるものは多くある。
植物工場の普及・拡大については、物質、エネルギー大量消費型のものとなる場合が多く、低炭素社会(循環可能かつ持続可能な物質・エネルギー利用)と相反する。
国の施策として優先すべきは、循環型の環境技術の高度化である。

米政策に関するシミュレーション結果について
シナリオ5 生産調整廃しシナリオを額面通りに受け取り、他の作物への誘導措置(小麦等自給率の低い品目への生産誘導措置)を取らない場合であっても、動学的モデルの変動幅は、今の一等米の農家手取り価格の国内・品種による価格幅と変わらない。静学的モデルであって短期変動幅は極端な価格下落が想定されているが、静学的なモデルは実態を反映しているとは言えず、政策変更による急激な価格変動の最悪のリスクとしてとらえるべきであろう。最悪、この価格に対する希望する農業経営者への緊急無償(低率)融資制度を用意する必要があるということである。
さて、動学的モデルについて、生産量、需要量の統計モデルについては、需要量の制約要因について、モデルが複雑になるとしても検証が必要であろう。同様に作付け面積についても、1年目220万ヘクタールの作付けは、土地条件、生産者(労働)条件、機械、育苗、資材、水管理等の条件からしても検討が必要ではないか。こちらも、モデルとしては複雑になるが、他の品目への生産誘導措置が取られないとしても、現在の「作付け可能な水田」の実態や生産者の高齢化、労働力不足、機械等の更新の停滞などを考え、上位、中位、下位予測等は行うべきであろう。
シナリオ5を考えても、生産調整を廃止してなんら不都合はないと考えられる。