平成20年6月13日、福田首相が設置した消費者行政推進会議による「消費者行政推進会議とりまとめ~消費者・生活者の視点に立つ行政への転換」が発表された。
これは、いわゆる「消費者庁」設立に向けた文書であり、今後、この文書(以下、とりまとめ)を中心に省庁間調整や法律のとりまとめなどが行われることになる見通し。
とりまとめでは、消費者基本法の理念に立って、消費者行政を一元化し、行政のパラダイム転換の拠点とするとしている。また、地方自治体の消費者生活センターの強化充実と消費者庁がその司令塔になる全国体制の構築をうたっている。
消費者庁については、内閣府の外局の位置づけで強力な調整権限、勧告権限を持たせている。さらに消費者行政にとって必要な情報は、消費生活センター、国民生活センター、保健所、警察、消防、病院等の情報を一元集約するとしている。
所管する行政権限としては、
食品に限らず、商品・サービスに関する「表示」に関すること。
金融を含む「取引」に関すること。
食品に限らず、消費生活用製品、それ以外の製品、食品、サービス、施設等の分野も視野に入れた「安全」に関すること。
独立行政法人等の調査、検査、試験等機関に対しての調査等要請権限や規定。
緊急時の物価統制等。
そのほかの関係することなどが取り上げられている。
「表示」では、景品表示法、JAS法、食品衛生法、健康増進法、家庭用品品質表示法、住宅品質確保法などが移管共管等。
「取引」では、消費者契約法、無限連鎖講防止法、特定商品預託法、電子消費者契約法、特定商取引法、特定電子メール法、金融商品販売法、出資法、貸金業法、割賦販売法、宅地建物取引業法、旅行業法などが、移管、共管等。
「安全」では、製造物責任法、食品安全基本法、消費生活用製品安全法、食品衛生法、有害物質含有家庭用品規制法などが移管、共管等。
さらに、「消費者や生活者が主役となる社会の構築、物価行政に関する法律」として、消費者基本法、国民生活センター法、個人情報保護法、公益通報者保護法、特定非営利活動促進法、国民生活安定緊急措置法、買い占め及び売惜しみ防止法、物価統制令が消費者庁へ移管される。
食品表示問題を考えると、食品衛生法(厚労)、JAS法(農水)、景品表示法(公正取引委員会)の3法が主な法律であり、複雑かつ重複した状況の中で、適切な表示のあり方を求めることが難しく、これらの表示部分が一元化されることは、望ましい考え方である。
消費者行政を一元化するということそのものは一定の評価できることであるが、消費者庁構想にはそれを超える問題点がある。
内閣府の外局という位置づけでありながら、国民ひとりひとりの生活に大きな影響を及ぼす個人情報や物価統制、NPO法など様々な法律を所管し、大きな権限を持つ省庁が誕生することになる。
消費者庁が上位に立つということは、消費者庁を監視し、コントロールするものが少なくなるということを意味する。
消費者庁構想の本当の目的が、最後の「消費者や生活者が主役となる社会の構築、物価行政に関する法律」の一元化にあり、国民の人、物、情報を権力によって管理するためのものとなれば、消費者(国民、生活者)の正義の名目で、強権が発動される可能性もある。そのことを考えると少々恐ろしくなる。
すでに、来年度(平成21年、2009年)設置に向けて調整中だとも聞く。諸手を挙げて賛成するのではなく、消費者庁構想のあり方については、広く国民、議会等で議論していく必要がある。
首相官邸
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消費者行政推進会議とりまとめ~消費者・生活者の視点に立つ行政への転換
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shouhisha/dai8/siryou1.pdf