輸出規制をめぐるWTOへの提案内容とは

日本政府は、スイスと共同で、WTOにタイして、新たな輸出規制に関する提案を行うとした。

WTOにおける輸出規制に関する新提案について
http://www.maff.go.jp/j/press/kokusai/kousyo/080501.html

これは、
・世界の食料需給がひっ迫
・輸出規制により、途上国をはじめ、食糧輸入国の食料安全保障に影響
・実効性のある規律強化が必要
というもので、新規に食料の輸出規制を行う場合利害関係国(輸入国)との事前協議を義務づけ、WTOでの紛争解決の道を開くというものである。

背景は、報道にある通り、穀物をめぐる暴動やパニック、あるいは国や地域によっては飢餓の危機が迫っていることからとなっている。

同資料によると、コメの国際価格高騰は激しく、2008年になって、4月時点でトンあたり835ドル(タイ長粒種)と、大豆、小麦に比べても2倍前後となっており、ずっと300ドルベースであったため3倍近い急騰である。
中国、ブラジル、ベトナム、カンボジア、インドネシア、エジプト、インドでは米が輸出禁止、規制対象となっている。
その他の穀物では、ウクライナ、ロシア、カザフスタン、セルビア、アルゼンチンが穀物などを輸出禁止、規制している。

日本は、経済力のない(貧困な)途上国ではないが、輸出禁止を行われるとカネがあっても食料は購入できない。しかも、カロリーベースの自給率を考えれば、「貧困な」経済力のない途上国よりも低かったりする。そこであわてているわけだ。
食料は、輸出国にとっての戦略品目である。
WTO体制による過度な食料貿易増長にこのようなリスクがあることは分かっていたことである。食料の主権を失えば、その国の国民は大変なことになるのだ。
さて、日本は、WTOルールによって毎年80万トン近いコメを義務的に輸入している(MA=ミニマムアクセス米)。このほとんどがタイ産である。しかし、日本国内ではコメは余っているわけであり、これらは外国料理店向け、加工用(せんべいなど)、食料援助、飼料用に販売されている。
日本では、強制的なコメの生産調整(減反)が行われている。
矛盾だらけである。
輸出国に倫理を求めるならば、振り返って、この事態を受けてMA米を一時停止し、コメの国際市場を少しでも落ち着かせることと、同時に国内での生産調整をやめるぐらいの、提案国としての倫理も必要である。