やっぱり不思議な生産調整

食料・農業・農村政策審議会食糧部会(3月26日開催)資料一覧
http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/0803/

に、毎年策定される「米穀の需給および価格の安定に関する基本指針」の案が示されている。これについては別途取り扱うとして、資料3として、担い手に対する経営安定のための交付金(収入減少影響緩和交付金)について、新たな税金投入の説明が加えられている。
この交付金は、「品目横断=水田・畑作経営所得安定対策」のひとつで、対象品目の価格下落による収入減少が起きたとき、参加した農家の積立金が1、国からの交付金が3の割合で減収分を標準的収入額の9割になるまで補填する制度である。平成19年度の米価格下落によって、予定していた補填によっても標準的収入額の9割にみたないとして、法律によってその分を国が新たに交付金を出すという制度を追加で加えた。これによって農家の不安を払拭するとしている。
生産調整が必須条件である「品目横断」の一メニューである。

さて、そもそも「品目横断」は強い農業づくりとしてはじまり、農家の規模を拡大し、生産性を上げて経営体力をつけさせるという農水省の目的ではじめられた。
水田をたくさん引き受けた担い手にとってもっとも望ましいのは、水田で稲を栽培することであるが、生産調整は約4割あり、そこには、飼料用などきわめて価格の安い米を除いては稲を植えてはならないのである。
矛盾を抱えているからこそ、生産者は不安があるのではないか。
それが政策としてよいかとどうかは別として、農水省の本来の目的である規模拡大、集約という点から言えば、価格が下がることは望んでいた結果ではないのか? そこにわざわざ新たな税金を投入するというのか?

生産調整への圧力が続く限り、この政策の目的であったはずの、安定した経営も規模拡大も、担い手の強い農業も難しいであろうことは想像に難くない。

収入減少影響緩和交付金の金額の算定省令の一部改正説明(PDF)
http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/0803/pdf/data3-3.pdf

水田・畑作経営所得安定対策の実施状況 平成20年3月 農水省(PDF)
http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/0803/pdf/ref_data.pdf