新農政の骨抜きがはじまった

農水省は、2007年度(平成19年度)より、米を含む主要作物について、品目横断的経営安定対策、米政策改革、農地・水・環境保全向上対策の3つの政策をもって、1.生産者の選別、2.米からの転換、3.環境保全と水路等のメンテナンスを地域主体にする目的で新政策を本格化させているが、2007年夏に参議院選挙で自民党が大敗したこと、民主党がばらまき的な農業政策を発表したこと、秋の米価格が一度大きく下落したことから、これらの政策の骨抜きが行われようとしている。
この新政策が日本の農業、食料政策、あるいは、農村や農業者にとって望ましいかどうかは別として、またも、農政は「猫の目」的な政策を続けようとしている。

2007年12月21日には、「農政改革三対策の着実な推進について」として、第一弾の政策転換を行った。
その特徴は、
1 農地集約化、生産者集約化をあきらめ、選別からばらまきに戻る。
品目横断的経営安定対策では、担い手となる大規模農家への農地集約および、集落営農による地域の農地および農業経営の集約をねらいとしていたが、そもそもは、集落営農さえ考えていなかった。ところが、今回の見直しでは、面積要件を事実上見直すとともに、年齢制限を廃止、さらには、一定期間内に経営を統一することが求められていた集落営農についても、このしばりを弾力化させるなど、事実上の骨抜きが行われた。
2 減反政策を強制政策に戻す
米の生産調整については、国が行わず民間が主体的に行うことになっている。そもそも、食管法がなくなり、食糧法となった時点で、生産調整を国が行う理由はなくなっているのだが、事実上続いていた。これについて、2007年より本格的に民間による主体的な生産調整がはじめられたことになっていたが、ここにきて、強制色を強める政策転換が行われた。
2007年度(平成19年度)に目標未達成だった都道府県、市町村を中心に、「生産調整目標達成合意書」の締結を求め、その対象者としてJA関係、農業者団体、集荷団体、地方農政局、農政事務所などの長、都道府県担当部長、市町村長などを具体的に示しており、事実上、国、地方、JA関係の官民上げての強制という姿勢を見せている。さらに、これまでの地域協議会についても、会長や事務局のありかたに関わらず、JA、行政が主導を行うよう公文書で指示している。
減反の方策についても、近年の数量カウントから面積カウントも示すことにしており、減反を強化した都道府県には産地づくり交付金を加算し、減反目標を減らした都道府県には産地づくり交付金を減らすなどのペナルティを課している。さらに、目標未達成の場合、産地づくり交付金を「予定通り交付されないことがある」「21年度の補助事業・融資に不利な取り扱い」「21年度の産地づくり対策を不利に」などの脅し文句が並べられている。
生産者に対しても、認定農業者の融資に対して、生産調整非実施により認定がはずされた場合、繰り上げ償還や利子助成措置を停止するなどの「後出しじゃんけん」での圧力がかけられ。それ以外の政策融資や融資残の補助などの政策支援について、生産調整非実施者を対象としないなどとしている。
加えて、生産調整非実施者の米の集荷に、引き受けや価格での差をつけても「原則として問題ない」としている。さすがにこれは法的な問題が大きいと感じたのか、かっこ書きで「なお、生産調整非実施者について、一律に不利益な扱いをすることは問題となるおそれがある」との一文までついている。
「農政改革三対策の着実な推進について」 (2007年12月21日、農水省)
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/kihyo02/nousei_kaikaku/