遺伝子組み換え隔離圃場の見学
[ 2005年09月11日 橋本明子 ]
遺伝子組み換え隔離圃場の見学
提携米ネットワーク 橋本明子
9月7日、日本モンサントの隔離圃場を見学した。茨城県河内町、
そこは利根川近く、竜ヶ崎市をではずれて、成田空港にむかう田園地帯のなかにある。隔離圃場とは、モンサントの説明によると、
「普通の環境を模した圃場で、遺伝子組み換え作物が自然に増えないように、花粉等が圃場の外の植物に影響を与えないよう木々やフェンス、
防風網に囲まれています。」
なにからの隔離なのか
現地は、集落の一角にあって、周囲には人家があり、なかでも1軒は、圃場の一隅に食い込んでいて、
その家の庭先で遺伝子組み換え芝とてんさいの実験が行われているのには、驚いた。もちろん、庭はフェンスで隔てられてはいるものの、
ひろがる圃場が、その家の庭から見える景観の大部分である。圃場はまず、人からの隔離を考えてはいないようである。
周囲に巡らされたフェンスは、頑丈ではあるが、人が越えられる高さである。モンサントの説明どうり、これは防風網であって、
花粉などの飛散防止措置としては不十分である。当日は台風一過後で、まきかえしの強風がふきすさんだが、防風網など、
なきに等しい状態を実際に体験した。また、監視カメラがついているそうだが、肉眼では確認出来なかった。
圃場の上空はなんの障害もない大空である。カラスよけに、かかしが3体,組み換えとうもろこしのそばに立てられていた。この程度では、鳥、
虫は自由に出入りできる。事実、とうもろこしには、食害された痕跡をみることができた。穂先のない実は、鳥などにもちだされたに相違なく、
持ち出した動物の糞尿が周辺を汚染することは、確実である。
残っていた雄ずい(とうもろこしの雄しべの穂)
組み換え作物の実験後の処理は、
すきこみ、実などの焼却、とのことであるが、作業手順を聞いてみると、一定の日にとうもろこしの花(雄しべの穂)のつみとりをして、あとは、
マニュアルにしたがって他の作業にうつるそうである。遺伝子組み換えとうもろこしは、40本植えられていたが、そのうち2本からは、
あとからでた脇芽に花がつき、それがそのまま立ち枯れているのをみた。説明では、この花には受粉能力がないという。はたしてそうか。
疑念は残って当然である。
隔離というのは、人里も離れず、鳥、虫の出入りも自由であるとは想像していなかったので、同じ茨城県内で、畑をたがやすわたしには、
これではだめだ、という失望と怒りがこみあげてくるのを、どうしようもなかった。なのに、この圃場は、
国の認可をうけていると広報の女性は鼻高々であった。
虫がついていた害虫抵抗性組み換えとうもろこし
長方形のとうもろこし畑は、
真ん中に組み換えとうもろこし、周辺に普通のとうもろこしが2つ、ひとつは殺虫剤散布区、ひとつは散布なしの対照区がつくられている。
モンサント810系統種で、飼料用のデントコーン、茨城地域の適作 品種で、すでに商品化の許可をとっているとの説明であった。
モンサントの説明では、この品種は世界的に広く栽培されており、その害虫駆除の効果を確認できるよう、展示圃場として公開しているのだそうだ。
見学者が多いことは、もとはたんぼであろうか、粘土質の土がかたく踏みかたまっていることからも想像できた。
が、注意深く見ていた見学者のひとりが、組み換えとうもろこしの実に巣くっているアワノメイガを発見した。
組み換えでないとなりの対照区ではじめみつけたのだが、アワノメイガをみたことがなかった消費者に「これがアワノメイガです」
との説明があった直後である。説明した場長は、この虫はどこにでもいますよ、とつけくわえたのである。 うけあったとうり、
次のアワノメイガ発見された。が、こともあろうに、虫を退治するはずの組み換えとうもろこしから、アワノメイガが発見されたのだ。
モンサントの名誉にかかわるではないか。
遺伝子組み換えはだめってことですね。ムムムーーー。見学者の周囲をとりかこむように、モンサントの技術系の社員が5,6人つきそっていたが、
沈黙あるのみであった。
さらなる問題は、アワノメイガ駆除目的の組み換えとうもろこしでは、他の害虫に効かない。
甘い汁を吸って実をだめにするカメムシが多い茨城では、遺伝子組み換えアワノメイガ駆除も100パーセント期待出来ない上に、
カメムシその他の害虫駆除に、ことなる殺虫剤まで上乗せして使わねばならないという、ナンセンスな事態を招くことになる。
また、組み換えとうもろこしのなかに生き残っているアワノメイガが,耐性を持ってしまうだろうことも、容易に想定できる。
BT剤はCODEXでも、日本の有機JASでも承認ずみのいわゆる生物農薬で、ヨーロッパをはじめ日本でも使用されている現状である。
組み換えによる耐性をもった生物が、BT剤に与える影響は、深刻なものになると想定される。
はじめてみたアメリカの搾油用大豆
以前、アメリカのコーンベルト地帯を視察したとき、地平線までひろがる広大な畑にとうもろこしか、
大豆のいずれかが栽培されていたのを思い出したが、残念なことに、どちらも生育途中で、実をつけた大豆は、
ここではじめておめにかかることとなった。
とうもろこしと同じように、額縁の真ん中にかこまれるようにして、組み換え大豆が実をつけていた。これはラウンドアップレディ大豆、
食用ではなく油脂用の除草剤耐性大豆である。除草剤ラウンドアップを散布しても大豆が立派に育つので、省力大量生産に向くと宣伝されてきた。
実際にみる大豆の葉は小型でいろがこく、実は一見カビがはえているように白い絨毛でおおわれている。実も小型である。
となりに植えられているのは、日本の食用大豆エンレイで、これとの交雑が試験されていた。隣り合って植えて、実をつけたエンレイを種として、
となりの圃場で栽培、その実を分析して結果をみるという。となりの畑はすでに収穫を終え、鋤きかえされていた。
交雑試験の結果は語られなかったが、交雑の心配があるからこそ、時間と費用をかけての交雑試験である。
組み換え大豆畑では、40センチ、50センチくらいの広さで、大豆の立ち枯れが2カ所みうけられた。
うまくいかない場合もあるとの説明だったが、だとすると、組み換え大豆は、病気に弱いのか、虫に弱いのか、実際では、
多収だと宣伝されているのに、反対の実態をここでも実際に見せられたのである。
芝とてんさいが日程に
組み換えとうもろこしと組み換え大豆の隣りに、施錠して、
目を細かくした網で囲った圃場があり、なかに芝とてんさいが植えられていた。希望したが、ここは未公開で、網の外からのぞいてくださいとのこと。
芝はアメリカ種でグリーンに使うのだそうである。遠くからみたところ、青々ときれいに育っているようだった。
ここでは土壌検査が行われているという。この圃場をL字型の囲んで、水路が流れている。周辺は水田地帯。
水を圃場内にとどめておく施設はみあたらない。芝やてんさいに使った水は、当然水路を伝わって、流域一帯にひろがっていくであろう。
雑草防除の組み換えが、ここでは主なテーマと聞いた。
汚染の懸念
はじめにも触れたが、ここは利根川流域の水田地帯に位置し、竜ヶ崎市からさほど遠くなく、河内町の町の一角に立地する。ここへ進出したのは、
河内町町長みずからの協力によるとのことであるが、成田空港はじめ、日本の主な農業地帯のひとつのなかに、隔離圃場とはとうてい判断できない、
周辺に未知の汚染が懸念される施設が存在することは、現在、将来の生命ぜんたいにたいし、危険というほかない。
わたしたちは、この事実をしっかりと胸にきざみ、
未知の危険が予想されるものは、いらないのだ!の声をこれからも粘り強くあげつづけていこう。