1999年産地確認会(黒瀬農舎)
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1999年産地確認会(黒瀬農舎)

[ 1999年12月31日 黒瀬農舎 ]

 秋田県大潟村は、八郎潟の干拓地であり、入植農家1世帯あたり15町歩の面積が割り当てられています。 それぞれの農家の圃場は2団地に分かれており、1枚田んぼは2~3町歩という大面積での栽培が基本です。
 大潟村は、その独特の成り立ちから、条件面、作業面なども他の産地とは違った利点と問題点を抱えています。
 田植え、機械除草、収穫などの作業は、すべて大型機械で作業します。大潟村のほ場は、もともとが八郎潟の湖底そのものですから、 田んぼが湿潤で地盤が弱く、作業が大変です。干拓された当時と比べれば今ではずいぶん地盤が形成され、固くなりましたが、それでも、 田植えや除草中に機械が沈んでしまうことが多く、沈まないように気をつけたり、引き上るのに苦労が多いとのことです。
 田んぼは、計画的な干拓工事によって用水と排水は、すべて分離されています。取水水源は、八郎潟の湖で、この湖には、 周囲から河川が十数本流れ込んでいます。
 このため、上流域の生活廃水などの水質汚染の防止や水源地の森を守ろうと、ライスロッヂ大潟のメンバーが中心になって、 流域の人々に呼びかけて、上流部となる馬場目川で「秋田・ブナを植える集い」を行っています。 毎年11月3日文化の日に行われるこの催しには地元の人だけでなく、 提携米を利用している各地の消費者もライスロッヂに無料宿泊して参加できるようになっています。

 ライスロッヂ大潟では、「あきたこまち」が中心で、一部の田んぼでモチ米の「キヌノハダ」が育てられています。栽培方法は、 すべて無化学肥料で、病害虫農薬の使用はなく、労働力の関係で、除草剤を1回だけ使用する栽培方法と、 除草剤もまったく使用しない無農薬栽培の2種類になっています。各生産者は、農薬の使用をしなくて済む合理的な方法を、 個々人がさまざま工夫をこらし、定期的に開かれるほ場見学会や勉強会で情報交換を行っています。
 各メンバーの学習意欲と先取意欲はすばらしく、今回の訪問時にもほぼ全員が集まり、 炎天下に4カ所の田んぼを回りながら葉緑素計やメジャーを取り出し、葉の色や丈をきちんと計測しては肥料や栽培方法の議論を行っていました。

 代表の黒瀬正さんは、今、早めに水を切ってしまい、そのまま水を張らずに自然状態のままで収穫に向かう方法を実験中です。
 有機栽培の基本は、先ず「土作り」です。このために有機物を土に入れることは一番大切なことですが、堆厩肥や稲ワラなど有機物や、 有機肥料の過剰な投入は問題があります。大潟村の田んぼは太古からの湖底の堆積物など元々有機物が多いところへ、 稲ワラなどの有機物を毎年多量に入れ続けてきたため、水田内に分解されない有機物が過剰に蓄積され、 稲の根っこの成長に悪影響があるのではないかという考えから実験しているしているものです。
 水を切ることで土の中に酸素を供給し、有機物の分解の促進と、根っこの成長をうながし、土壌の環境バランスを回復させ、 イネが健康に育つことをねらっています。
 この実験田の稲を見学したところ、他のほ場の稲に比べ、丈が短く、茎や葉も細く非常に貧相に見えます。しかし、 この方がかえって風通しがよくなり、病気や害虫の発生もなく、水ぶくれのイネより健康ではないかとのこと。 収量的にも心配するほど減らないのでは、と黒瀬さんは考えています。
 この他にも、1枚が2~3町歩もの大きな面積のほ場では、広すぎて鴨が片寄って除草効果が期待できないのではないかと考えられてきた、 アイガモやマガモを使った除草方法に取り組む生産者などもおられます。これら各生産者の工夫が、ライスロッヂ大潟のみならず、 大潟村で有機栽培が拡大、安定していく原動力になることは間違いないようです。

 ライスロッヂ大潟の提携米は、それぞれの生産者がモミで貯蔵して、出荷時期には玄米にして、 すべて黒瀬さんの精米所の低温保管庫に集められます。低温倉庫には、各生産者の名前、ほ場、栽培方法を記録したラベルが張られ、 精米時まできちんと分別されています。ここで精米されるのは提携米だけであり、一般栽培米などが混ざることはありません。
 精米施設は、すべて黒瀬さんが中古の機械に改造を加えて手作りした設備です。これまでに消費者から出された意見やクレームをもとに、 次々に改良されてきた「傑作」の施設装置です。例えば「玄米に小石がある」というクレームを受けて、石抜きラインを増設し、 小石混入をゼロにしました。また、「玄米食用の玄米のモミ混入をゼロにして欲しい」という要望から、 モミを完全に除去するための設備を整えています。
 生産者と消費者が直結している強さを、黒瀬さんは充分に活かしています。
 消費者に届けるおコメは、現在5kgごとポリ袋に入れられ、段ボール箱で届けられています。黒瀬さんは、 消費者に届いてからのごみ処理のことを考え、米袋や結束バンドなどをすべて紙にできないものかと検討しています。
 紙袋は、ボリ袋より環境面だけでなく、吸湿性など優れているところも多いですが、作業性が悪く、保存性や運びやすさ、 耐久性などの欠点もあります。これらの欠点の改善を目下工夫中で、テストがうまくいけばいずれはすべて紙にしたいということでした。

 訪問時の7月末、早いほ場では出穂が始まっており今年も順調に育っています。農薬を使っていないので、小さなイナゴが無数におり、 ところどころ葉をかじっていましたが「イナゴに幾ら食べさせても、収量や品質に極端に影響するものではない」 というのがライスロッヂ大潟の生産者の説明でした。
 私たちが訪れた時も、無農薬田ではパートで草取りに来た女性達が、10人ほど列になって、気温35度以上の炎天下、 キビキビとヒエ抜き作業に頑張っておられました。
 収穫は例年より少し早まりそうです。

ライスロッヂのメンバー学習会。真剣に葉の色や茎数を確認。
38度を超える暑い中、ほぼ全員が集まって、ほ場を回ります。
ひえの種類や今年の傾向をみんなで情報交換。

 

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