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WTO・FTA・EPAをめぐって

[ 2004年08月10日 レポート ]

山浦康明 日本消費者連盟 脱WTO草の根キャンペーン

WTO交渉は03年9月の第5回閣僚会議の失敗以来、交渉はストップしていたが、ここへ来て動きが始まっている。
6月2~4日 農業交渉
  4日5日 APEC貿易担当相会合
  8~10日 サミット
  13~14日 東アジア・ダボス会議(ソウル)
  13~18日 UNCTAD総会
  23~25日 農業交渉 グローサー議長が草案提出か?
7月14~16日 農業交渉
7月末    WTO一般理事会 枠組み合意予定

 農業分野では、7月末の大枠合意の目標が掲げられ、輸出補助金をめぐり、撤廃に向けた譲歩を取り始めたEUと米国が途上国のグループ20 (G20)のブラジル、インドなどに近づき始めた。パリで4月14日に開かれたWTOの非公式閣僚会議においてG20が 「関税引き下げの新提案をする」と表明した。6月2日からジュネーブで開かれている農業交渉には、日本、韓国など食料輸入国のG10が 「主要農産物の関税引き下げは最低限とする、上限関税の考えには反対」などとする提案を提出し、G20は上限関税などの考え方を含む提案をした。 有力発展途上国を代表するインド、ブラジル、とケアンズグループを代表するオーストラリア、そしてアメリカ、EUでG5と呼ばれはじめ、 WTO交渉の主導権を握ろうとしている。6月3日の農業交渉では、グローサー議長が小数国会議を提案し、G5とG10の日本、スイス、韓国、 ノルウェー、そしてカナダと中国も参加した。
 6月4日から開かれていたAPECでは、7月末までの農業交渉の大枠合意の確認がなされた。 また6月13日から開かれるUNCTAD会議においてG5の会議が開かれる予定だ。
 WTO交渉のシンガポール・イッシューでは4分野のうち貿易円滑化だけに絞る譲歩が行われ交渉が始まろうとしている。

FTA(Free Trade Agreement、自由貿易協定)では3月12日、 日本とメキシコのFTAが実質合意され協定文の策定に着手した。8月末の正式署名をめざしている。
 内容は、1:物品の貿易では農産品と工業品の包括的な関税の引き下げ、2:貿易円滑化のための迅速な税関手続きの実現、3: サービス貿易の原則自由化(規制が残る分野は付属書に掲載する)、4:投資の自由化(米国、カナダなどの企業と同レベル)、5: 日本企業がメキシコの政府調達事業に参加できる、6:競争政策にかんする両国の連携、7:ビジネス環境整備委員会を設置し両国の企業の貿易・ 投資を促進させる、8:両国の経済連携のための二国間協力(貿易投資促進、裾野産業、中小企業、科学技術、人材養成、知的財産、農業、観光、 環境の分野)、9:仲裁裁判などの紛争処理手続。
 日本・韓国のFTAは政府間交渉が2月(東京)に続いて4月(ソウル)に開かれ、農産物を含む物品の貿易、 サービス及び投資などの分野で作業計画の議論が続く。次回は6月23日(東京)に開かれる。
 日本とマレーシア、フィリピン、タイとのFTA(日本政府は最近はEPA、Economic Partnership Agreement、 経済連携協定という用語を使う)は03年12月11日の小泉首相とそれぞれの首脳との会談で政府間交渉の開始が合意された。 その後フィリピンとは2月、4月、タイとは2月、4月、マレーシアとは1月、3月の各2回行われ、 対象分野の範囲や交渉の進め方の議論がなされた。第3回交渉は対マレーシアは5月19日、対タイは6月16日、 対フィリピンは7月5日がそれぞれ予定されている。

□6月ソウル行動
 政財界のサミットである、ダボス会議(WEF、Wold Economic Forum、世界経済フォーラム)は毎年1月に総会を開き、 世界の政治・経済・文化に関するオピニオンリーダーと称される人々が討議をしている。しかし、 これは経済のグローバリゼーションを押し進め南北格差を拡大する結果をもたらしているためNGOは世界社会フォーラム(WSF、World Social Forum)を開いてきた(2003年のポルトアレグロ、や2004年のムンバイ)。このダボス会議の地域版として6月13日、 14日にソウルで「アジアの戦略を考えるラウンドテーブル」と題した会議が開かれ、北東アジアの経済の発展について討議する。 テーマはアジア経済におけるITや金融の役割、朝鮮半島の和解に経済界が果たせる役割、カンクン後のアジア経済、といったもの、 討議の議長はサムソン電子、英国の銀行、シンガポールの企業、中国企業のトップなどが務める。
 これに対してアジアのNGOが12日から15日まで対抗アクションを開く予定だ。韓国のNGOや労働団体、農民団体などが中心となって 「WEF反対韓国組織委員会」が作られ、日本からの70名以上の参加者を含めアジア各国からも集結する。12日の反米軍のデモ、 WEF反対の文化イベント、13日WEF反対デモに続いて14~15日は「アジア社会民衆運動会議」が開かれる。多くの分科会の中で私は 「食料主権」、「食の安全」に関わる予定だ。ビアカンペシーナ(貧農・小農の運動団体) や遺伝子組み換え作物に反対するグループと討議できる予定だ。

□コーデックス委員会をめぐって
 第27回総会は6月28日~7月3日まで開かれ「手続きマニュアルの改正」「各部会からの規格案の採択」「年間計画と予算」「部会、 特別部会の主催国の選定」などが議題となる予定だ。このたび日本政府の立案による「モダンバイオテクノロジー応用食品に関する新作業の提案」 が議題となる。これは2003年まで日本で開かれた「バイテク部会」を事実上延長させ、「魚を含む遺伝子組み換え動物、クローン動物、 生物活性を増幅させた植物、未承認の遺伝子組み換え食品が低レベルで検出された場合の対処法」などを作業対象とする。 来年から日本で開かれる可能性が高い。この日本提案にはすでにNGOから危惧する意見がコーデックス事務局に寄せられている。
 部会では4月19日から「残留農薬部会」が、5月3日から「一般原則部会」が、5月10日から「食品表示部会」が、また5月17日からは 「動物飼料特別部会」が開かれた。一般原則部会では「トレーサビリティ」の定義が議論され、最終的に名称は「トレーサビリティ/プロダクト・ トレーシング」とし、定義は「生産、加工及び流通の特定段階において、食品の動向を追跡する能力」と簡易化され、 消費者が関心を寄せる安全性にかかるデータの位置づけが弱くなった。食品表示部会では、 遺伝子組み換え食品の表示問題について作業部会の報告にもとづき議論されたが、製造方法による表示の有無をめぐって、米国・カナダとEU、 日本との対立があり、ステップは進められていない。有機食品の生産、加工、 表示及び流通に関するガイドラインの改定を新規作業として始めることを総会に諮ることになった。
 国内コーデックス委員会の設置に関しては、2003年春から「コーデックス連絡協議会」が開かれ、山浦も委員として参加している。 次回は6月15日に開催される。

 

食品安全委員会の動きについて

[ 2004年08月10日 レポート ]

山浦康明 日本消費者連盟

 03年7月1日にスタートした内閣府の食品安全委員会は毎週木曜日に本委員会が開かれ6月3日には通算第47回目となった。 この機関の実態はどうだったのだろうか。
 03年7月24日からリスク評価(食品健康影響評価)の結論が出され、04年5月までに、食品添加物、飼料添加物、動物用医薬品、農薬、 特定保健用食品、汚泥を含む肥料、遺伝子組み換え食品、掛け合わせた遺伝子組み換え食品、など70以上のものを、 一日許容摂取量を設定するなどして安全である、と評価した。安全性を留保したのは、もう使われていなかった食品添加物「コウジ酸」、 沖縄産で小規模業者が製造していた健康食品「アマメシバ」、BSEに関して牛のせき柱を含む食品などわずかである。
 また、遺伝子組み換え食品(種子植物)、遺伝子組み換え微生物を利用して製造された添加物、掛け合わせた遺伝子組み換え植物、 遺伝子組み換え飼料及び飼料添加物については04年1月から5月にかけてそれらの安全性評価基準を策定し、 この基準に基づいて遺伝子組み換え食品などをどんどんと承認できる体制が整えられ、実際に承認ラッシュが始まった。
 また、BSE問題をめぐっては、農水省、厚労省が行っている牛の全頭検査、肉骨粉の廃棄、特定危険部位の除去などの対策に対して、 食品安全委員会は、米国の牛肉輸入禁止措置の見直しと期を一にして、日本の国内体制の有効性を検証する作業を5月から行っている。 これは同委員会の「プリオン専門調査会」が行っているが、そこでは「スクリーニング検査は感染牛を食物連鎖から排除する目的を持つ、 これと特定危険部位除去などと合わせて牛から人への感染を防ぐ。これに対し、 サーベイランスはBSE汚染の実態を把握する目的をもつものであり蔓延防止対策の検証をするためのものだ」、などと全頭検査の意味を分離し、 日本が01年10月以来行ってきた全頭検査を「科学的立場から」と称して限定しようとし始めた。 これにはBSE対策の縮小を打ち出そうとする露払いの役割が与えられた意味がある。また人のクロイツフェルトヤコブ病のおそれについて、 イギリスと日本の飼育頭数、BSE感畜牛の頭数の違いなどから、人が感染するおそれは極めて低い、と述べる。
 こうした食品安全委員会の一連の作業をみると次のような問題点が明らかになる。
・本委員会での委員の発言は低調で、真剣な議論もないまま、専門調査会の報告を形式的に承認する役割しか果たしていない。
・食品安全委員会は食の安全の確保のために、自ら検査対象を選び出すということはこれまでなく、 申請企業からの要請に応えるため申請者のデータなどを中心に検討し、多くのものを承認してきた。その際科学的に検討するというものの、 自ら検査をすることもなく、権威ある科学者の見解だという理由から安全性を認めるということも多い。
・遺伝子組み換え食品の問題ではリスクコミュニケーションと称する意見交換会も行われたが、議論は1度限りで消費者・ 市民の疑問に対してとことん応えるものではなく、人々の納得のいくものではなかった。 
・今後BSE問題などでこれまでの対策を緩和するような結論を出した場合には米国の要求を正当化するという政治的な役割を果たすこととなり、 委員会の信頼感は地に落ちることになる。


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