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食品のカドミウム汚染問題概要

[ 2004年05月09日 レポートに戻る ]

提携米ネットワークでは、2002年3月、里見宏さん(健康情報研究センター)をお招きし、「提携米ネットワークセミナー・ どうなるカドミウムの国際基準」で、カドミウム問題について議論をはじめました。食品中のカドミウム問題については、 日本全土の農業に大きく関わることであり、慎重に議論を続けています。
2003年11月25日、国民生活センターにて全国産直産地リーダー協議会主催により、食品のカドミウム汚染に関するセミナーが開催されました。 そこで得られた情報と、農林水産省などが出しているカドミウム汚染の現状や対策についてまとめます。

牧下圭貴 提携米ネットワーク事務局

●カドミウムの健康被害と摂取量
 カドミウムの大量暴露による健康被害は、 主に神通川流域で発生したイタイイタイ病です。食品や水を通して長期間大量のカドミウムを摂取し、身体に蓄積したため、腎臓を害し、 カルシウムの再吸収がうまくできなくなって骨折しやすくなり、触るだけでも骨が折れるような深刻な障害が起こりました。
 イタイイタイ病は1968年、当時の厚生省により認定された公害病ですが、認定されているのは神通川流域の184人だけであり、 他の流域などの患者や腎障害などに対しては認定、経済的支援等の救済が行われていません。
 カドミウムの人体障害はイタイイタイ病だけではありません。カドミウムは微量にとり続けても排出されにくく、身体に蓄積し続けます。そして、 ある一定量を超えたところで、腎臓機能を徐々に破壊し、腎尿細管障害、骨軟化症、骨粗鬆症、死亡リスクの増加が起こります。
 カドミウムは身体に蓄積してはじめて障害を起こしますので、年齢が高くなってから影響が出ます。特に、女性の場合、鉄分不足、 出産によるカルシウム低下などにより、影響が大きくなります。
 国際化学物質安全性計画(IPCS)によると、一般住民の場合、 世界的にカドミウムの汚染されていない地域の食物からの1日平均摂取量は10~40μgで、汚染地域では1日数百μgとされています。そして、 1日140~260μgのカドミウムを長年摂取したり、約2gを累積摂取した場合、 低分子量タンパク尿が増えるなど影響がでると推定されています。
 厚生労働省国立医薬品食品衛生研究所の調査では、日本人の日常食で1日29.3μgで10年間ほとんど変わっていないとのことです。また、 そのうちコメからのカドミウム摂取が食品からのカドミウム摂取の約半分を占めています。
 食事や飲用水からのカドミウム摂取だけでなく、たばこに含まれるカドミウムが肺を通じて吸収されます。 喫煙者の方がカドミウム蓄積量は大きくなります。

●カドミウムの食品残留規制~国内外と国際規格
 FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)は、カドミウムの暫定耐容1週間摂取量を体重1kgあたり7μgとしています。 これは、1日あたり、体重1kgあたり1μgということです。しかも、この暫定値は高すぎるという指摘もあります。
 この数字は、体重50kgの日本人で1日50μgとなります。日本人が1日29.3μgをとっていることを考えると、 この暫定値に近い量を毎日摂取していることになります。
 日本人の日常食では、コメからのカドミウム摂取量が相対的に大きいため、コメの含有基準が問題になります。現在、コメについては、 食品衛生法で、玄米はカドミウムを1ppm以上含んではならないことになっています。また、農水省が、 0.4ppm以上1ppm未満の玄米については、農家から買い上げ、工業用糊にするという対策を実施しています。
 これに対して、コーデックス委員会は、国際的な基準案を検討し、そのなかで、 コメの中に含まれるカドミウムの上限許容量を0.2ppmにする案を提出しています。
 この0.2ppmをめぐって、日本の厚生労働省はよりゆるやかな基準を求めています。
 しかし、日本環境学会食品中カドミウム基準値検討専門委員会は、独自に、日本のコメ摂取量を前提とした摂取耐容量の試算を行ない、 0.2ppmは基準として高すぎる(厳しすぎる)規制値とは言えないと結論づけ、 コーデックス委員会の0.2ppmを受け入れるよう求めています。
 なお、玄米中1ppm以上の濃度が確認された農地とその周辺地域は「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」によって汚染対策地域となり、 汚染防止や除去が行われることになっています。
 田んぼに使われるたい肥についても、肥料取締法により5ppmという規制があり、現在、さらに厳しくする方向に動いています。
 ちなみに、玄米を精米し、日常的に食べる精米ベースでは、平均約0.05ppmという調査もあります。
 水道水の基準は0.01ppm、排水基準は0.1ppmとなっています。

●国内のカドミウム発生源と農業、 コメ
 日本のコメのカドミウム含有量は、非汚染地域で平均0.06ppmです。しかし、37,250点の調査では、 対象が非汚染地域としながらも1ppmを超えるコメが1点あり、0.4ppmをこえるものが94点(0.2%)、0.2ppmを超えたものが、 1,244点(3.2%)ありました。つまり、現状でも非汚染地域とされるところでコーデックスの基準を超えるものが3.2% はあるということになります。
 海外産のコメは、文献情報として0.01~0.2ppmでほとんどの場合、コーデックス基準を超えていません。

どうして日本のコメはカドミウムの量が相対的に多いのでしょうか。まず、日本はカドミウムを含む鉱山が数多くあり、 亜鉛鉱山の副産物として排出されてきた歴史があります。その後、カドミウムそのものもメッキや電極など産業に使用されるようになり、 カドミウムを目的とした採掘が行われるようになりました。日本はカドミウムの生産国であり、また、 輸出国として1970年代~80年代前半には生産量の半分ほどを輸出していました。
 カドミウムは、メッキや電極、電気器具、塩化ビニルの安定剤や半導体、顔料などに使われます(塩ビには近年使用されなくなりました)。さらに、 携帯電話など充電式の小型通信機器、電気機器の登場によってニッカド電池(充電池)の需要が高まりました。
 1980年代後半から輸出量は激減し、ほとんどなくなります。そして、輸入が急増し、生産量をはるかに超える量が輸入されるようになりました。 そのうち多くの割合がニッカド電池生産に使われました。日本は世界一のカドミウム消費国になっています。
 現在では、ニッケル水素電池などカドミウムを使わない充電池が急速に拡大していますが、 まだまだ日常のいたるところでニッカド電池を見ることができます。
 環境省、経済産業省のPPTR(化学物質排出移動量届出制度)によると、2001年度に、カドミウムおよび化合物が大気中に約2トン、 公共用水域中に約6トン排出されています。これとは別に、分別回収されず焼却され大気中に放出されたり、 埋められて地中などに排出されたカドミウムもあります。

●抑制技術
 水田での稲作については、カドミウムの低減技術がさまざまな形で開発されています。
 現在、農水省外郭の独立行政法人農業環境技術研究所では、いくつかの方法を提案しています。
 1:客土 
 そもそも1ppmを超える汚染地域では法律によって義務的に行われています。 客土層を25cm以上にすれば20年以上経過しても稲の根からのカドミウム吸収をほぼ抑えられるという調査結果があるそうです。しかし、近年、 客土用の山土などが入手困難になっていることと、費用が大きいという欠点があります。
 2:水管理 
 カドミウムは金属であり、土壌中の酸素が少ない還元状態ではイオウと結合し水に溶けにくくなります。しかし、落水して土壌が酸化状態になると、 硝酸カドミウムとしてイオン化し、水に溶け出します。そこで、稲がカドミウムを吸収・ 蓄積する時期に湛水状態を続けることで玄米のカドミウム含有量を減らせます。しかし、中干しや出穂後の落水の制限などがあり、 収穫期に田んぼを乾かすことと矛盾するため排水をよくするなどの工夫や、 10アールあたり1~2トンのベントナイトを投入して床締めをするなどの工夫が必要です。
 3:土壌改良材 
 土壌の酸性度(pH)がアルカリ性になると、カドミウムがリン酸イオンや炭酸イオンと結合して水に溶けにくくなり、さらに、 カドミウムのような陽イオンの土壌吸着力を増加させることができます。そ

こで、珪酸カルシウムや熔成りん肥などによってカドミウム吸収を抑制することも可能です。ただし、 微量要素の欠乏症や後作物でのアルカリ障害などにも気を付けなければなりません。
 4:汚染土壌を修復する 
 ソルガムやケナフなど、土壌中カドミウムを吸収しやすい植物を栽培し、 それらによって土壌中のカドミウムを減少させるというファイトメディエーション(植物修復)や、土壌を塩化カルシウムなどと水で洗浄し、 カドミウムを流すという方法も開発されています。
 5:品種の選択 
 稲、大豆の品種の中には、カドミウムの吸収が比較的に低い品種や地上への移行が少ない品種があるため、 それらの品種に切りかえるなどの方法もあります。

●コメも問題だが、 畑作は大きな問題に
 カドミウムは、ほとんどの食品に含まれますが、貝類や動物の内臓に高く存在します。私達の主食である米にも含まれます。もちろん、 水や土の影響を受けてカドミウム濃度は異なります。多くの日本人の場合、コメからのカドミウム摂取が問題になります。もちろん、 麦ばかり食べるのなら、麦のカドミウム摂取量が問題になります。
 現在、日本では減反政策とコメの消費減少をうけて水田を畑に転換し、大豆や小麦を作付けする動きが広がっています。畑作の場合、 土中のカドミウムは酸化状態で作物に吸収されやすくなるため、大豆や小麦、野菜などのカドミウム含有量にも注意が必要です。
 農水省による、カドミウム実態調査では、小麦、大豆、ほうれん草、ゆりね、里芋、ごぼう、オクラなどいくつかの作物に高い値が出たり、 全体的に含有量が多い作物があります。コメの対策も必要ですが、畑作農産物、貝類などへの対策も考えなければなりません。
 いずれにしても、日本がカドミウムの世界最大の消費国であり、輸入国であるという事実に目をむけなければなりません。カドミウムの生産、輸入、 消費量を減らすこと、出回っているカドミウムの回収をすすめること、そして、農産物や海産物、土壌、水などのモニタリングを行い、 少しずつカドミウムを減らしていく以外に、対策はありません。
 コメや農産物の問題については、提携米ネットワークとして、取り組みを深めていく必要があります。


■カドミウム問題 参考

●農林水産省 食品中のカドミウムに関する情報 

●里見宏氏(健康情報研究センター)「提携米ネットワークセミナー・どうなるカドミウムの国際基準」講演

●全国産直産地リーダー協議会主催により、食品のカドミウム汚染に関するセミナー資料
 ■「食品中カドミウムの基準値に関する検討」 人間と環境 2003 VOL.29 No.2 122-146
  日本環境学会食品中カドミウム基準値検討専門委員会
 ■浅見輝男氏(日本環境学会会長・茨城大学名誉教授)講演
 ■「カドミウムの低減技術」小野信一氏(独立行政法人農業環境技術研究所科学研究部)

●国立医薬品食品研究所

●富山医科薬科大学医学部公衆衛生学教室 

 


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