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2004年遺伝子組み換え野外実験、栽培の状況(牧下圭貴)

[ 2004年05月31日 レポート ]

■遺伝子組み換えイネ開発の状況
 今年も、国内で遺伝子組み換えイネの野外実験が行われます。当初は4品種4カ所で予定されていましたが、 花粉症予防イネの栽培実験が中止されたため、3品種3カ所となりました。

●短幹・ 耐倒伏イネ
 農水省外郭である独立行政法人農業生物資源研究所が開発したもので、 短幹性のものと直立葉性のものの2品種を実験しています。 いずれも、倒伏防止、多収穫、作業性の向上で新たな「緑の革命」 をねらうものです。
 宿主として「どんとこい」を利用し、2004年5月より、茨城県つくば市の農業生物資源研究所内の施設で隔離ほ場栽培試験を行っています。
 具体的には、植物ホルモン・ジベレリンを不活化するジベレリン2酸化酵素遺伝子を導入し、短幹性にします。もうひとつは、 植物ホルモンのブラシノライドの受容体の変異型、改変型ブラシノライド受容体遺伝子を導入し、直立葉のイネにしたものです。

農業生物資源研究所 http://www.nias.affrc.go.jp/gmo/rice/

●花粉症予防イネ(実験中止)
 独立行政法人農業生物資源研究所が開発したもので、 日本で主に春先のアレルギーとして多くの患者をかかえるスギ花粉症を予防する目的で開発されています。 アレルゲンとなるタンパク質の一部の活性部位(エピトープ)に対応する人工DNAを合成し、 自然界に存在しない7Crpというタンパク質を発現させています。これについて、遺伝子組み換え情報室の河田昌東さんは、 自然界に存在していないタンパク質であり、従来の遺伝子組み換え作物とは違う安全性評価が必要であり、食品としてではなく、 医薬品としての安全性評価が必要と指摘しています。
 また、読売新聞インターネット版2003年9月6日付けによると、厚生労働省は、 組み込んだ遺伝子がすでに知られているアレルギー原因物質の遺伝子と同様のものであるならば、食品としては認められないとの立場を示した。 流通段階での混入や栽培時の交配により花粉症ではない人が食べる可能性もあるため、同記事は「『治療効果を持たせるためとはいえ、 あえてアレルギーの原因となる物質を入れている食品が認められるわけがない。国際的な遺伝子組み換え食品の安全基準にも合わない』 と同省新開発食品保健対策室は説明した」と伝えています。

 この花粉症予防イネを、こともあろうに全農(全国農業協同組合連合会)が、神奈川県平塚市にある全農営農・ 技術センターで隔離ほ場栽培すると発表しました。
 説明会では、平塚市や神奈川県の理解や、農協の理解は得ているとしていましたが、周辺市民や農業生産者、 全農と提携している生活クラブ生協などは納得しませんでした。結果的には理解しているはずの神奈川県から口頭で中止を要請され、全中 (全国農業協同組合中央会)からも中止要請があった模様で、5月26日、ホームページ上で 「風評による農業等への影響を懸念する声が強いことなどから、関係機関と協議のうえ中止」と発表しました。
 しかし、5月27日に開かれた院内集会(スギ花粉症GMイネに反対する会ほか)で、全農側は、今回の野外実験は中止するものの、 閉鎖系での栽培実験などなんらかの形で栽培や開発実験を続ける意向もうかがわせおり、開発中止ではないので引き続き注意が必要です。

全農 http://www.zennoh.or.jp/

●トリプトファン高蓄積イネ
 農水省外郭の独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構作物研究所が開発し、 茨城県つくば市の中央農業総合センターの実験ほ場で隔離ほ場栽培される予定です。2003年にはじめて隔離ほ場実験が行われ、 今年も引き続き行われることになっています。
 飼料用作物として、飼料添加物に使われるアミノ酸トリプトファンの含量を高めたもので、「日本晴れ」 に導入されている2系統を栽培する予定です。2004年は、鶏への給餌実験に必要な試験米を生産するのが目的としています。
 作物研究所http://nics.naro.affrc.go.jp/

■2004年イネ以外の野外実験の状況

●収量性向上ジャガイモ
 農業生物資源研究所が開発した、 トウモロコシ酵素を導入し収量性を向上させたジャガイモを茨城県つくば市の農業環境技術研究所で栽培試験されています。
 なお、このジャガイモは西東京市の東京大学大学院ほ場でも栽培実験を予定していましたが、説明会後に周辺生産者が強い反対を行ったため、 同ほ場での栽培実験は延期されました。事実上の本年度中止です。

●モンサント社の除草剤耐性ワタ、大豆
 モンサント社が開発し、すでに日本にも流通している除草剤耐性ワタと除草剤耐性大豆が茨城県河内町モンサント社ほ場で、 同じ除草剤耐性大豆がつくば市の農業環境技術研究所のほ場で一般ほ場栽培試験されています。いずれも長期モニタリングという名目です。

●ダウ・ケミカル社の除草剤耐性・殺虫性トウモロコシ
 ダウ・ケミカル社が開発し、社団法人農林水産先端技術産業振興センターと共同で、つくば市の

農業環境技術研究所ほ場にて隔離ほ場栽培実験を行います。 チョウ目害虫抵抗性遺伝子と除草剤グルホシネート耐性遺伝子を導入したトウモロコシです。

●デュポン社の除草剤耐性・ 殺虫性トウモロコシ
 デュポン社が開発したもので、 茨城県牛久市の財団法人日本植物調節剤研究協会研究所で隔離ほ場実験が行われます。 コウチュウ目害虫抵抗性と除草剤グルホシネート耐性を導入したトウモロコシです。

●シンジェンタシード社の殺虫性トウモロコシ
 シンジェンタシード社が開発したもので、 茨城県牛久市の財団法人日本植物調節剤研究協会研究所で隔離ほ場実験が行われます。 チョウ目害虫抵抗性とコウチュウ目害虫抵抗性のトウモロコシで、Bt菌の殺虫毒素導入です。

■カルタヘナ法と情報公開
 2004年2月に生物多様性条約・カルタヘナ議定書の国内法である 「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」が施行されたことでふたつの大きな変化がありました。
 ひとつは、遺伝子組み換え作物について、すべて生物多様性への影響評価が必要になったことです。 生物多様性への影響評価が不足している作物は、すでに流通されているものであっても、あらためて評価が必要になりました。
 もうひとつが、農水省が関係する研究機関に対して示した「第一種使用規定承認組換え作物栽培実験指針」です。第一種使用とは、 環境中への防止しない使用で、農業生産などがこれにあたります。これにより、関係する公的研究機関には、事前の説明会や経過説明により、 周辺住民の理解を得ることと、情報公開が求められることになりました。
 この「実験指針」は、隔離距離が十分でなく、交雑防止策として不満が残るなど不備があります。しかし、この法律と指針により、 事前の情報公開と周辺住民理解を求められた点は評価できます。
 今回、いずれの栽培実験も、このカルタヘナ法の結果として、事前に情報公開され、説明会が開かれたものです。ダウ・ ケミカル社とデュポン社が財団法人日本植物調節剤研究協会で行う隔離ほ場実験については、この「実験指針」に合わせる必要のないものですが、 同財団によると「公益団体として準じて行った」とのことです。
 カルタヘナ法と、「実験指針」により、各自治体も独自に「指針」をつくり、また、規制条例をつくるなどの動きも出ています。

■対話への道
 この春の作付け期の特徴は、「情報公開と対話の模索」です。
 ほとんどすべての説明会で、十分な説明は行われず、「効果と利点と安全性」のみの説明で、リスクや不明点について、 きちんと説明する姿勢はありませんでした。住民への十分な理解を求めるということにはほど遠く、 行わなければならないから形式的に行うという姿勢です。
 そのなかで、西東京市の東京大学大学院ほ場で行われる組み換えジャガイモ栽培実験については、4月27日に説明会が開かれ、 十分ではないとして、5月7日に2回目が行われ、さらに、都議会議員有志による「説明を聞く会」が続けて行われるなどの結果、 実験農場長の大杉立教授が、市民の理解を得られないまま実験はできないとして実験の延期を決めました。議論をつくせなければ、延期(中止) するという姿勢は、今後、研究開発と市民の理解・対話に向けた第一歩だと評価できます。
 一方、同じく中止を決めた全農については、説明会を1度行ったままで、「見学はいつでも受け入れる」としたものの、 不十分な説明のままで説明会を終え、不明瞭な形で栽培実験を中止しました。中止の判断を下したことについては高く評価しますが、 生産者組織として、市民、周辺の生産者との対話の姿勢に欠けていることに、不安が残ります。
 筆者は、遺伝子組み換え作物を許容するものではありませんが、環境中に放出される生物、化学物質などの研究・開発・産業化にあたっては、 その手順ごとにきちんと市民に対し説明し、必要性とリスクを市民とともに議論し、社会的な合意があった上で、 一歩ずつ進めていくことが必要だと考えています。
 不十分なカルタヘナ国内法ではありますが、社会と自然環境に大きな影響を与える科学技術の急速な開発と隣り合わせの現代社会において、 この法律を一歩として、情報公開と対話の道を築き上げていくことが大切です。

■第一種使用申請農作物
 カルタヘナ法に基づく、第一種使用の申請が行われているのは以下の12品目です。このうち、最初の3つについては、 すでに申請が通っています。4つ目以降は、今年、隔離ほ場栽培試験が行う、または行う予定だったものです。
・青紫色カーネーション サントリーフラワーズ(株)
・チョウ目殺虫性トウモロコシ 日本モンサント(株)
・コウチュウ目殺虫性トウモロコシ 日本モンサント(株)
・除草剤耐性ワタ 日本モンサント(株)
・チョウ目及びコウチュウ目殺虫抵抗性トウモロコシ 日本モンサント(株)
・直立葉半矮性イネ 農業生物資源研究所
・半矮性イネ 農業生物資源研究所
・スギ花粉症予防イネ 全農
・高トリプトファンイネ 農業・生物系特定産業技術研究機構
・チョウ目殺虫性トウモロコシ シンジェンタ シード(株)
・コウチュウ目殺虫性トウモロコシ シンジェンタ シード(株)
・チョウ目殺虫性及び除草剤耐性トウモロコシ ダウ・ケミカル(株)

■モンサント社、 GM小麦の開発延期
 5月、モンサント社が、アメリカとカナダで申請し、2005年からの商業栽培開始を目指していた除草剤耐性小麦について、研究・ 開発の延期を明言しました。他社のGM小麦が導入されるまで育種・野外実験を行わないという、事実上の撤退宣言です。
 カナダや日本の小麦製粉業界が反対したこと、最大の消費先である日本と韓国の消費者が激しい反対運動を行ったことが、 今回のきっかけとなりました。
 3月に、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンなどの代表団6名が、GM小麦反対の団体署名をカナダ政府、アメリカの州政府に提出、 反対キャンペーン活動を行いました。大地を守る会事務局で提携米ネットワークの事務局もになう前川さんも同行したものです。 この署名414団体、構成員で120万人超のインパクトは大きかったようです。
 しかし、アメリカ、カナダ政府への申請は取り下げられておらず、申請取り下げと、シンジェンタなど他社の開発中止に向けて、 さらなる運動が必要です。

■シュマイザー裁判、 敗訴
 5月、カナダ最高裁判所が、モンサント社とナタネ生産者パーシー・シュマイザーさんの裁判で、 シュマイザーさんの特許権侵害を認める判決をくだしました。裁判官9名が5対4に分かれた僅差の判決でした。 シュマイザーさんのモンサント社への損害賠償については、実質的にモンサント社に被害はなかったとして認められず、 シュマイザーさんはモンサント社に支払う必要はなくなりました。差し押さえられていた農地、家が戻ることになります。
 しかし、モンサント社が持つ遺伝子・細胞レベルの特許を認め、事実上、生命特許の商業的使用が認められたことは、世界中の市民・ 農民にとって恐るべき脅威です。
 モンサント社は、「すべての人によいニュース」と勝利宣言を行っています。
 

食品のカドミウム汚染問題概要

[ 2004年05月09日 レポート ]

提携米ネットワークでは、2002年3月、里見宏さん(健康情報研究センター)をお招きし、「提携米ネットワークセミナー・ どうなるカドミウムの国際基準」で、カドミウム問題について議論をはじめました。食品中のカドミウム問題については、 日本全土の農業に大きく関わることであり、慎重に議論を続けています。
2003年11月25日、国民生活センターにて全国産直産地リーダー協議会主催により、食品のカドミウム汚染に関するセミナーが開催されました。 そこで得られた情報と、農林水産省などが出しているカドミウム汚染の現状や対策についてまとめます。

牧下圭貴 提携米ネットワーク事務局

●カドミウムの健康被害と摂取量
 カドミウムの大量暴露による健康被害は、 主に神通川流域で発生したイタイイタイ病です。食品や水を通して長期間大量のカドミウムを摂取し、身体に蓄積したため、腎臓を害し、 カルシウムの再吸収がうまくできなくなって骨折しやすくなり、触るだけでも骨が折れるような深刻な障害が起こりました。
 イタイイタイ病は1968年、当時の厚生省により認定された公害病ですが、認定されているのは神通川流域の184人だけであり、 他の流域などの患者や腎障害などに対しては認定、経済的支援等の救済が行われていません。
 カドミウムの人体障害はイタイイタイ病だけではありません。カドミウムは微量にとり続けても排出されにくく、身体に蓄積し続けます。そして、 ある一定量を超えたところで、腎臓機能を徐々に破壊し、腎尿細管障害、骨軟化症、骨粗鬆症、死亡リスクの増加が起こります。
 カドミウムは身体に蓄積してはじめて障害を起こしますので、年齢が高くなってから影響が出ます。特に、女性の場合、鉄分不足、 出産によるカルシウム低下などにより、影響が大きくなります。
 国際化学物質安全性計画(IPCS)によると、一般住民の場合、 世界的にカドミウムの汚染されていない地域の食物からの1日平均摂取量は10~40μgで、汚染地域では1日数百μgとされています。そして、 1日140~260μgのカドミウムを長年摂取したり、約2gを累積摂取した場合、 低分子量タンパク尿が増えるなど影響がでると推定されています。
 厚生労働省国立医薬品食品衛生研究所の調査では、日本人の日常食で1日29.3μgで10年間ほとんど変わっていないとのことです。また、 そのうちコメからのカドミウム摂取が食品からのカドミウム摂取の約半分を占めています。
 食事や飲用水からのカドミウム摂取だけでなく、たばこに含まれるカドミウムが肺を通じて吸収されます。 喫煙者の方がカドミウム蓄積量は大きくなります。

●カドミウムの食品残留規制~国内外と国際規格
 FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)は、カドミウムの暫定耐容1週間摂取量を体重1kgあたり7μgとしています。 これは、1日あたり、体重1kgあたり1μgということです。しかも、この暫定値は高すぎるという指摘もあります。
 この数字は、体重50kgの日本人で1日50μgとなります。日本人が1日29.3μgをとっていることを考えると、 この暫定値に近い量を毎日摂取していることになります。
 日本人の日常食では、コメからのカドミウム摂取量が相対的に大きいため、コメの含有基準が問題になります。現在、コメについては、 食品衛生法で、玄米はカドミウムを1ppm以上含んではならないことになっています。また、農水省が、 0.4ppm以上1ppm未満の玄米については、農家から買い上げ、工業用糊にするという対策を実施しています。
 これに対して、コーデックス委員会は、国際的な基準案を検討し、そのなかで、 コメの中に含まれるカドミウムの上限許容量を0.2ppmにする案を提出しています。
 この0.2ppmをめぐって、日本の厚生労働省はよりゆるやかな基準を求めています。
 しかし、日本環境学会食品中カドミウム基準値検討専門委員会は、独自に、日本のコメ摂取量を前提とした摂取耐容量の試算を行ない、 0.2ppmは基準として高すぎる(厳しすぎる)規制値とは言えないと結論づけ、 コーデックス委員会の0.2ppmを受け入れるよう求めています。
 なお、玄米中1ppm以上の濃度が確認された農地とその周辺地域は「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」によって汚染対策地域となり、 汚染防止や除去が行われることになっています。
 田んぼに使われるたい肥についても、肥料取締法により5ppmという規制があり、現在、さらに厳しくする方向に動いています。
 ちなみに、玄米を精米し、日常的に食べる精米ベースでは、平均約0.05ppmという調査もあります。
 水道水の基準は0.01ppm、排水基準は0.1ppmとなっています。

●国内のカドミウム発生源と農業、 コメ
 日本のコメのカドミウム含有量は、非汚染地域で平均0.06ppmです。しかし、37,250点の調査では、 対象が非汚染地域としながらも1ppmを超えるコメが1点あり、0.4ppmをこえるものが94点(0.2%)、0.2ppmを超えたものが、 1,244点(3.2%)ありました。つまり、現状でも非汚染地域とされるところでコーデックスの基準を超えるものが3.2% はあるということになります。
 海外産のコメは、文献情報として0.01~0.2ppmでほとんどの場合、コーデックス基準を超えていません。

どうして日本のコメはカドミウムの量が相対的に多いのでしょうか。まず、日本はカドミウムを含む鉱山が数多くあり、 亜鉛鉱山の副産物として排出されてきた歴史があります。その後、カドミウムそのものもメッキや電極など産業に使用されるようになり、 カドミウムを目的とした採掘が行われるようになりました。日本はカドミウムの生産国であり、また、 輸出国として1970年代~80年代前半には生産量の半分ほどを輸出していました。
 カドミウムは、メッキや電極、電気器具、塩化ビニルの安定剤や半導体、顔料などに使われます(塩ビには近年使用されなくなりました)。さらに、 携帯電話など充電式の小型通信機器、電気機器の登場によってニッカド電池(充電池)の需要が高まりました。
 1980年代後半から輸出量は激減し、ほとんどなくなります。そして、輸入が急増し、生産量をはるかに超える量が輸入されるようになりました。 そのうち多くの割合がニッカド電池生産に使われました。日本は世界一のカドミウム消費国になっています。
 現在では、ニッケル水素電池などカドミウムを使わない充電池が急速に拡大していますが、 まだまだ日常のいたるところでニッカド電池を見ることができます。
 環境省、経済産業省のPPTR(化学物質排出移動量届出制度)によると、2001年度に、カドミウムおよび化合物が大気中に約2トン、 公共用水域中に約6トン排出されています。これとは別に、分別回収されず焼却され大気中に放出されたり、 埋められて地中などに排出されたカドミウムもあります。

●抑制技術
 水田での稲作については、カドミウムの低減技術がさまざまな形で開発されています。
 現在、農水省外郭の独立行政法人農業環境技術研究所では、いくつかの方法を提案しています。
 1:客土 
 そもそも1ppmを超える汚染地域では法律によって義務的に行われています。 客土層を25cm以上にすれば20年以上経過しても稲の根からのカドミウム吸収をほぼ抑えられるという調査結果があるそうです。しかし、近年、 客土用の山土などが入手困難になっていることと、費用が大きいという欠点があります。
 2:水管理 
 カドミウムは金属であり、土壌中の酸素が少ない還元状態ではイオウと結合し水に溶けにくくなります。しかし、落水して土壌が酸化状態になると、 硝酸カドミウムとしてイオン化し、水に溶け出します。そこで、稲がカドミウムを吸収・ 蓄積する時期に湛水状態を続けることで玄米のカドミウム含有量を減らせます。しかし、中干しや出穂後の落水の制限などがあり、 収穫期に田んぼを乾かすことと矛盾するため排水をよくするなどの工夫や、 10アールあたり1~2トンのベントナイトを投入して床締めをするなどの工夫が必要です。
 3:土壌改良材 
 土壌の酸性度(pH)がアルカリ性になると、カドミウムがリン酸イオンや炭酸イオンと結合して水に溶けにくくなり、さらに、 カドミウムのような陽イオンの土壌吸着力を増加させることができます。そ

こで、珪酸カルシウムや熔成りん肥などによってカドミウム吸収を抑制することも可能です。ただし、 微量要素の欠乏症や後作物でのアルカリ障害などにも気を付けなければなりません。
 4:汚染土壌を修復する 
 ソルガムやケナフなど、土壌中カドミウムを吸収しやすい植物を栽培し、 それらによって土壌中のカドミウムを減少させるというファイトメディエーション(植物修復)や、土壌を塩化カルシウムなどと水で洗浄し、 カドミウムを流すという方法も開発されています。
 5:品種の選択 
 稲、大豆の品種の中には、カドミウムの吸収が比較的に低い品種や地上への移行が少ない品種があるため、 それらの品種に切りかえるなどの方法もあります。

●コメも問題だが、 畑作は大きな問題に
 カドミウムは、ほとんどの食品に含まれますが、貝類や動物の内臓に高く存在します。私達の主食である米にも含まれます。もちろん、 水や土の影響を受けてカドミウム濃度は異なります。多くの日本人の場合、コメからのカドミウム摂取が問題になります。もちろん、 麦ばかり食べるのなら、麦のカドミウム摂取量が問題になります。
 現在、日本では減反政策とコメの消費減少をうけて水田を畑に転換し、大豆や小麦を作付けする動きが広がっています。畑作の場合、 土中のカドミウムは酸化状態で作物に吸収されやすくなるため、大豆や小麦、野菜などのカドミウム含有量にも注意が必要です。
 農水省による、カドミウム実態調査では、小麦、大豆、ほうれん草、ゆりね、里芋、ごぼう、オクラなどいくつかの作物に高い値が出たり、 全体的に含有量が多い作物があります。コメの対策も必要ですが、畑作農産物、貝類などへの対策も考えなければなりません。
 いずれにしても、日本がカドミウムの世界最大の消費国であり、輸入国であるという事実に目をむけなければなりません。カドミウムの生産、輸入、 消費量を減らすこと、出回っているカドミウムの回収をすすめること、そして、農産物や海産物、土壌、水などのモニタリングを行い、 少しずつカドミウムを減らしていく以外に、対策はありません。
 コメや農産物の問題については、提携米ネットワークとして、取り組みを深めていく必要があります。


■カドミウム問題 参考

●農林水産省 食品中のカドミウムに関する情報 

●里見宏氏(健康情報研究センター)「提携米ネットワークセミナー・どうなるカドミウムの国際基準」講演

●全国産直産地リーダー協議会主催により、食品のカドミウム汚染に関するセミナー資料
 ■「食品中カドミウムの基準値に関する検討」 人間と環境 2003 VOL.29 No.2 122-146
  日本環境学会食品中カドミウム基準値検討専門委員会
 ■浅見輝男氏(日本環境学会会長・茨城大学名誉教授)講演
 ■「カドミウムの低減技術」小野信一氏(独立行政法人農業環境技術研究所科学研究部)

●国立医薬品食品研究所

●富山医科薬科大学医学部公衆衛生学教室 

 

2003年 遺伝子組み換え稲をめぐる動き

[ 2004年05月09日 レポート ]

遺伝子組み換えはいらない! 人々の声が伝わりはじめた

 2002年秋、愛知県とモンサント社がすすめていた除草剤耐性イネ「祭り晴」は、消費者、生産者による全国的な反対運動で、 開発を進めないと愛知県が明言し、開発は中止されました。
 2003年も、遺伝子組み換えイネの栽培実験、遺伝子組み換え大豆のデモンストレーション的な作付け、 遺伝子組み換えイネの新品種開発の大きなプレスリリースがありました。
 しかし、市民、生産者の監視、反対の目は大きく育っています。

牧下圭貴 提携米ネットワーク事務局

 
●岩手県の栽培実験、来年以降中止へ
 低温耐性イネ「ササニシキ」は岩手県の外郭団体である(財)岩手生物工学研究センターが開発中の品種です。 2003年に隔離ほ場栽培が認められ2年間に渡って隔離ほ場栽培試験を行うとしていました。 他のイネの遺伝子を導入することで低温耐性を高めたササニシキです。試験は、岩手県北上市の同センターにある屋外ほ場にて行われ、同センターは、 「低温耐性イネの開発は、2003年のような冷害に苦しむ岩手県稲作にとって必要だ」として商品化に向かう意欲を見せていました。
 この動きに対し、岩手県の生産者が呼びかけて岩手遺伝子組換えイネ監視ネットワークを結成、監視と試験栽培中止を求める運動を広げました。 10月3日には同研究センターによって刈り取りが行われました。
 11月28日、岩手県盛岡市で大きな反対集会が開かれ、全国から生産者、消費者が集まりました。そして、市内のデモ行進、 40万筆を超す署名を岩手県に提出するなどの行動を行いました。
 岩手県は、この署名提出の際に、当初2年行う予定だった栽培実験を1年で終了させ、 今後一切遺伝子組み換えイネなどの野外栽培実験を行わないと明言しました。
 これは、愛知県の栽培実験中止に続く、大きな市民の勝利です。
 これにより、都道府県レベルでの遺伝子組み換えイネ開発は当面なくなりました。

●北海道、遺伝子組み換え野外栽培実験規制へ
 酸性土壌耐性(トウモロコシ遺伝子導入C4) イネ「キタアケ」は、2002年に隔離ほ場栽培、2003年に開放ほ場栽培が認められました。開発は、農業生物資源研究所・ 農業環境技術研究所が中心になっており、2003年、北海道の農業技術研究機構北海道農業研究センターにて開放ほ場栽培が行われました。
 主な用途は、酸性土壌に耐性を持つ品種の母種をつくることとされています。 この品種自体が来年以降すぐに食用として作付けされるとは考えにくいですが、「祭り晴」が中止された現在、 もっとも開発が進んでいる遺伝子組み換えイネとなっています。
 この動きに対し、北海道遺伝子組み換えイネいらないネットが結成され、実験の中止と監視活動を行っています。このイネは、 10月16日に北海道農業研究センターにより刈り取りが行われました。
 しかし、反対運動の高まりをうけ、北海道議会が12月10日に、遺伝子組み換え作物の商品化を行わないよう、国に求める意見書を採択しました。
 さらに、北海道庁が、2004年1月に、北海道における遺伝子組換え作物の栽培に関するガイドライン骨子(案)を示しています。
 それによると、基本的な考え方として、
・多くの道民が遺伝子組換え食品や開放系での遺伝子組換え作物の栽培について不安感を抱いており、全国の消費者も同様の意識
・遺伝子組換え作物の栽培は、花粉の飛散による交雑や混入による環境への影響などが懸念
・道産食品に対する風評被害や本道農業全体の著しいイメージダウンにつながる恐れがあるものと強い危倶
・特に、遺伝子組換え作物と一般作物等との交雑や混入を防止することが重要
・道としては、道内において開放系での栽培が行われることのないよう、強い姿勢で臨むことが必要
 だと明言し、食に関する条例が北海道で成立するまでのガイドラインという位置づけで、北海道内での遺伝子組み換え作物の開放系野外実験、 商業栽培などを認めないという厳しい内容になっています。
 さらに、農林水産省が示している、独立行政法人などの研究機関が試験栽培する際のガイドラインについても、 パブリックコメントに対する意見を提出し、研究機関だけでなく、すべての野外栽培について対象にすべきであり、 交雑防止のための隔離距離も厳密に広くとるべきで、周辺住民同意の必要性などを訴えています。
 日本の中でも大きな生産地を抱える北海道庁がこのような姿勢をとることに、多くの市民は共感を覚えており、 この姿勢を持続するよう支援することにしています。

●組み換え大豆のデモ栽培は、産地からの反発を生む
 2002年に引き続き、バイオ作物懇話会は、茨城県谷和原村、滋賀県中主町、岐阜県瑞穂市の3カ所での作付けを行いました。 2003年は結実までを想定しており、組み換えた遺伝子の拡散が心配されました。
 茨城県谷和原村では、作付けした生産者およびバイオ作物懇話会に対し、市民団体や周辺生産者が交渉を行い、 花粉の飛散防止策をとるところまで合意がされたものの、すでに花粉は飛んでおり、飛散防止策がとれなかったため、 第三者が大豆を畑に埋め込む直接行動を取りました。
 その後、谷和原村議会は、12月18日に、遺伝子組み換え作物の栽培禁止を求める意見書を採択し、国に提出しました。
 滋賀県中主町では、茨城県谷和原村での埋め込みを受けたバイオ作物懇話会が、その直後に作付けしたもので、 農水省を通じて市民団体がその情報を確認し、滋賀県や地元の農協が地主に対してすき混みを要請、畑に埋め込まれました。その後、滋賀県は、 県内に遺伝子組み換え作物が作付けされないようガイドラインを作成する方針を打ち出しました。
 岐阜県瑞穂市の畑については、市民団体の要請を受けて、生産者が畑に水を入れて腐らせました。
 このように、バイオ作物懇話会が作付けを行った自治体や生産者、JAなどは、遺伝子組み換えに
対しての警戒を強めるという結果になっています。

 このように、2003年は、生産者、市民が抱く遺伝子組み換え作物の身体や環境への影響を懸念する声が、具体的な行動に結びつき、 地方自治体も積極的に動くようになりました。今後も、このような動きを拡大させていく必要があります。

■開発はまだ続いている
 2004年は、農水省外郭の独立行政法人農業生物資源研究所が中心となって、遺伝子組み換えイネの品種開発を行っており、 その内容を開発企業などと共同でプレスリリースすることで、注目を集めようとする動きを見せています。 糖尿病治療や花粉症予防のような品種を発表することで、遺伝子組み換え技術が有用であるような見せ方を試みています。

●糖尿病治療イネ
 三和化学研究所、日本製紙、農業生物資源研究所は、2003年5月12日、同日付でそれぞれプレスリリースを行い、 インスリン分泌をうながすペプチド薬成分を含むイネを遺伝子組み換えにより開発し、 ご飯を食べながら糖尿病治療に役立つとして商品化の意欲を示しました。
 商用化されても、医師の指導のもとで供給されることとしています。生活習慣病である2型の糖尿病に対するものであり、 その意味を疑問視する報道も行われています。
 報道では、早ければ2006年にも商品化する計画、世界で1号の商品化となる可能性もあるとしています。

●花粉症予防イネ
 農業生物資源研究所が力を入れているもうひとつの品種が、花粉症予防イネで、同所のホームページでは特設ページを解説して、 本技術が有効であると強調しています。
 これは、スギ花粉症の原因となるタンパク質のうちの1種類をイネに組み込み、このタンパク質を生むイネを開発したもので、 コメをマウスに食べさせ、減感作療法と同様にアレルギーの発症抑制を起こし、加熱しても効果が落ちないとものだとしています。
 これに対し、厚生労働省は、組み込んだ遺伝子がすでに知られているアレルギー原因物質の遺伝子と同様のものであるならば、 食品としては認められないとの立場を示しています。
 農業生物資源研究所は、2004年には野外隔離ほ場で栽培したいとしています。

●耐病性イネ
 2003年12月22日、 農業生物資源研究所と中央農業総合研究センターがプレスリリースした品種です。カラシナ由来の抗菌蛋白質ディフェンシン遺伝子を導入し、 選択マーカーにイネ由来の除草剤耐性の遺伝子を導入した品種を開発。さらに、北陸研究センターが開発した、イネの「可食部」 で組み換え遺伝子が発現しないようなスイッチとなるプロモーターを導入し、緑色部分のみで発現するものであるとしています。

■2004年、LLライスと組み換え小麦
 2004年にもっとも警戒すべきは、 アメリカでのLLライス作付けと遺伝子組み換え小麦の栽培認可動向でしょう。飼料用の除草剤耐性LLライス(リバティリンクライス)は、 すでに日本での輸入認可を受けており、アメリカで作付けされれば、日本に輸入される可能性の高い飼料用イネです。現在は、 アベンティスクロップサイエンス社から、バイエルクロップサイエンス社に移行しています。
 もうひとつ、モンサント社の除草剤耐性小麦の動向にも注意が必要です。 アメリカとカナダで栽培に向けた申請準備がすすめられているとのことですが、カナダでは、カナダ政府が乗り気ではなく、 申請作業が遅れるだろうとの報道がされています。アメリカでの申請を通さないように運動を展開する必要があります。
 国内では、やはり、バイオ作物懇話会が2004年も作付け実験を行う姿勢をみせており、注意が必要です。また、 農業生物資源研究所が開発するいくつかの遺伝子組み換えイネについて、野外実験を行わせないよう監視活動が必要です。

 

食品安全委員会には期待できない

[ 2004年05月09日 レポート ]

山浦康明 日本消費者連盟 食の安全・監視市民委員会

■2003年7月1日 「食品安全委員会(FSC)」 スタート
 内閣府の食品安全委員会(以下FSC=Food Safety Commission)がスタートして7カ月が過ぎた。当初は審議会の残務整理のような仕事が中心だった。すなわち、 03年6月30日までに厚生労働省の薬事・食品衛生審議会に諮問があり答申がなされたが、手続き上まだ終了していない事項について、 03年の7月から8月にかけてはFSCが引き継いで審議を行った。
 この間、FSCはかび毒(パツリン)がリンゴ果汁に含まれる量を50PPBとした。添加物(メチルヘスペリジン、コウジ酸、 ステアリン酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、アセスルファムカリウム、タール色素)の規格、 使用基準の設定または改正によりその使用を容認、コウジ酸のみは使用禁止とした。動物用医薬品(サラフロキサシン、ジヒドロストレプトマイシン/ ストレプトマイシン、ダノフロキサシン、カルバドックス)の残留基準の設定を行い、農薬(EPN、エチクロゼート、オキサジクロメホン、 クロルピリホス、等)の食品中の残留基準値の設定または改正を行いその使用を容認した。
 また、薬事・食品衛生審議会に諮問があったものの議論が終了していない事項(清涼飲料水の規格基準、 BSEに関する牛のせき柱を含む食品等の安全性確保、食品からのカドミウム、掛け合わせた遺伝子組み換え食品、飼料添加物〔リボフラビン〕、 動物用医薬品〔エトキサゾール〕)につき、厚労大臣からFSCに諮問があった。これらはFSCの13の専門調査会で、 企業の申請資料や研究論文などによる「安全性評価」の手順を踏んだ後、 本委員会に報告されると7名の委員が議論もなくただちに承認するという流れができた。
 こうして04年1月22日までにFSCは食品添加物として13品目の使用を(一日許容摂取量を設定するという形で)容認した。 動物用医薬品は5品目を、農薬は17品目を容認した。その他、特定保健用食品6品目を承認し、液状の肉骨粉等を肥料として利用してもよい、 牛のせき柱を含む飼料・肥料は特定危険部位に相当する、BSE発生国からの牛受精卵は輸入してよい、などとしたのである。また1月29日には 「遺伝子組み換え食品(種子植物)の安全性評価基準」「遺伝子組み換え植物の掛け合わせの場合の安全性評価基準」が、 パブリックコメントは行われたものの、市民の声は反映されずに採択された。 今後遺伝子組み換え食品の申請に対する安易な承認ラッシュが危惧される。
 もっか、専門調査会では、食品添加物(16品目)、飼料添加物(3品目)、動物用医薬品(4品目)、農薬(6品目)、遺伝子組み換え食品 (11品目)、遺伝子組み換え飼料(1品目)、特定保健用食品(32品目)、清涼飲料水、再生ペットボトルなど、が検討中である。
□食の安全・監視市民委員会(FSCW=Food Safety Citizens' Watch)では、30回に及んだFSC本委員会と、 評価に係る13の専門調査会(化学物質系、生物系、新食品等)、企画、リスクコミュニケーション、緊急時対応の各専門調査会の傍聴を続け、 FSCがいかに形式的な機関であり、独立性も安全性評価の実力もないものであるかを確認している。またこれまでに、食品安全委員会や農水省、 厚労省等に対して14通の公開質問状などを送付し、異議申し立てを行っている。

ホームページ http://www1.jca.apc.org/foodsafety

 

WTO・FTAの問題点

[ 2004年05月09日 レポート ]

山浦康明
日本消費者連盟 脱WTO草の根キャンペーン

(1) カンクン会議決裂の状況
 9月10日から14日にかけてメキシコのカンクンで開かれたWTOの第5回閣僚会議は、 閣僚会議宣言文の採択ができないまま、閉会した。私も現地へ行き、WTO閣僚会議を傍聴し、WTO事務局の説明会に出席し、 またNGOのイベントにも参加した。

1) 閣僚会議においては、農業における自由化問題は大きな焦点となったが、新分野(投資・競争・貿易円滑化・政府調達透明性) や途上国配慮の分野などにおいても加盟国間の対立が続いた。10日午後より各国代表のスピーチが最終日にかけて始まった。 閣僚会議の交渉の実態は、5分野(農業、非農産品市場アクセス、新分野、開発、その他)での討議と各国代表間での非公式な折衝、 NGOによる各国代表へのロビイングなどであった。
 閣僚会議宣言文の作成過程では、WTO一般理事会カスティーヨ議長の宣言案(閣僚宣言1次案)が7月18日に提示され、8月13日の米国・ EU共同ペーパーが促進作用を果たし、8月24日のカスティーヨ議長の宣言案改訂版(2次案)が提示された。 そしてカンクン会議において9月13日、閣僚会議議長を務めたデルベス・メキシコ外務大臣の宣言案(3次案=デルベス文書)が出された。 しかし会議最終日の9月14日においても各国代表の合意はならず、カンクンにおいては閣僚宣言文は採択できずに決裂した。

2) この状況については、次のように考えられる。農業分野では、 日本がEUその他多面的機能フレンズ諸国と提案してきた各国農業の重要性の視点は事実上退けられ、EU米国など先進国主導で、 農産物の関税引き下げ率、国内保護措置撤廃のレベル、といった議論が先行してきた。 また148のWTO加盟国のうち100カ国以上を占める開発途上国の意見が討議に十分反映されておらず、シンガポール・イッシュウ(新分野: 投資、競争、貿易円滑化、政府調達透明性)の拙速な交渉開始提案に対する反発を買った。途上国はインド、ブラジルを中心にG22(グループ・ オブ・22)を結成し、途上国の立場を最後まで貫いた。さらに9月11日にはアフリカ4カ国(ベニン、ブルキナファソ、マリ、チャド) が米国に対して「綿花の補助金の撤廃」を要求する声明を提出した。

3) カンクン会議・市民運動には世界の多くのNGOが参加し、閣僚会議の監視活動、各国政府代表へのロビイング、シンポジウム、ティーチイン、 デモンストレーションなどを行った。メキシコや諸外国の団体が実行委員会を作り、シンポジウム、ティーチイン、フェアトレード・ フェアなどのイベントが9月8日から14日まで延べ90以上開かれ、10日の集会・デモンストレーションには約2万人、 13日のデモンストレーションには約1万5千人の市民が参加した。 10日の抗議行動においては韓国の農民団体の前会長が農業の自由化に対して抗議自殺を行い人々に衝撃を与えた。 追悼集会にはベネズエラ政府代表も姿を見せ、11日にはWTO事務局、韓国政府がこの出来事に対して遺憾の意を表明した。 日本政府は具体的な行動はとらなかった。
 NGOのWTO交渉に対する立場は様々であるが、共通しているのは、WTOの交渉過程が不透明であり、 とくに途上国の実質的な参画が妨げられていること、経済のグローバル化が各国の人々に多くの困難をもたらしていることを指摘することである。 例えば「先進国の輸出補助金漬けの安い農産物により農民達は被害を被っている」 「各国の食糧主権を認め農業分野はWTO交渉の対象からはずすべきだ」「自由貿易の実態は企業により管理された貿易である。 各国の法律や経済上の国境が取り払われ資本の自由な移動といわゆる自由貿易が実現しつつある。 しかし民主的な管理が行き届かないところで世界貿易が行われるようになれば、生活や健康の基準が切り下げられ世界は危険な状態になる」 といった主張である。各国政府がとらわれる国益の範囲を超えて、世界の貿易ルールのあり方を地球市民という立場から考えることができるのである。
 今後、日本がWTO交渉に臨むにあたっては、途上国を含めさらに幅広く各国に働きかける必要があるが、その際にはNGOの主張を尊重し、 以下のようにWTO交渉そのものに対する根本的な改革を盛り込んだものとする必要がある。
・WTO交渉のプロセスを民主的なものに改めること。グリーンルーム会合や非公式閣僚会議に象徴される閉鎖的な決定プロセスを改める必要がある。
・途上国における農地改革の実現に向けた協力を行い、多国籍企業や大地主の支配から農民を解放する方法を提案すること。
・グローバリズムではなくローカリズムを重視し、各国・地域社会の伝統的な農業や食生活を尊重するシステムを支援する必要がある。
・企業による大規模な工業的農業ではなく、分権的農業こそが効率的で生産的であることを認識する必要がある。

(2)カンクン以後の状況
1) カンクン以降、2003年12月15日にはWTO一般理事会が開かれたが、 新ラウンド再開に向けて早期合意を目指す姿勢を確認するにとどまり、新たな進展はなかった。 2004年2月11日の一般理事会で各交渉グループの議長を決め、交渉の進展をはかろうとするが、まだ見通しは立たない。 交渉のベースとしてデルベス文書(閣僚会議宣言文3次案)を用いようと、一般理事会のカスティーヨ議長(04年2月には任期切れ) から提案があったが、参加者から異論は出なかったものの具体的交渉の段取りは不透明だ。それに加えて04年5月にはEUの拡大、 秋のEUのフィシュラー、ラミー両委員の任期切れ、アメリカ大統領選挙があり、WTO交渉への集中力は弱まる。
 この間日本政府は、FTA(地域貿易協定)の拡大の方針を決定し、すでに締結されたシンガポールとのFTAに続けて、チリ、メキシコ、韓国、 ASEANとの交渉やその準備を開始している。この交渉過程において、農産物の関税引き下げ、知的所有権、投資ルール、 サービスなどの交渉分野があり、今後の日本農業に対しても大きな影響を与えることとなる。

2) 国内で03年5月に立ち上げた「脱WTO草の根キャンペーン」はカンクン閣僚会議以後第2期の運動を開始した。04年1月28日には 「必須医薬品問題とWTO・TRIPS協定の過去・現在・未来」と題して、NGO「アフリカ日本協議会」による学習会がもたれた。 カンクン会議直前に妥結したTRIPS協定の内容では途上国のエイズ治療には不十分であり、 アメリカなどの先進国企業による市場独占に都合のよいものであることが指摘された。1月30日には「多くの問題あり!日韓FTA学習会」 と題して、NGO「異議あり!日韓自由貿易協定キャンペーン」が昨年末から開始された日韓政府間交渉を批判した。 すなわち03年に事前に重ねられた日韓FTA共同研究会の報告書(03年10月)に現れているように、閉鎖的な協議の仕方、労働運動への圧力、 食料生産基盤の悪化が懸念される、と指摘された。

ホームページ http://www.angel.ne.jp/~globalmarch/

遺伝子組み換え排除と玄米フレーク開発

[ 2004年05月09日 レポート ]

奈良よつば牛乳を飲む会が、提携米の生産者・ライスロッヂ大潟・黒瀬農舎の無農薬米を使用した玄米フレークを開発しました。 そのきっかけなどについてお聞きしました。
 2003年のシュマイザーさん訪日講演は、遺伝子組み換え作物を一度植えてしまうと、遺伝子汚染が広く発生し、 同種の作物や有機農業にとって深刻な打撃を受けることがあらためて明らかになりました。
 近年、コーンフレークなどのシリアルを食べる人が多く、市場ではさまざまな商品が開発されています。しかし、 そのほとんどは食品添加物が多く含まれています。オーガニックのコーンフレークなども登場していますが、原料のトウモロコシは輸入品です。また、 日本の遺伝子組み換え表示制度のなかで、コーンフレークは醤油や食用油とともに表示義務がないままになっています。
 そこで、国内の遺伝子組み換え栽培をくいとめ、遺伝子組み換えでないことが確実な、 国産コーンフレークなどのシリアルを開発したいと思っていました。もちろん、会員さんからの要望も多くありましたが、やはり開発のきっかけは、 シュマイザーさんの講演です。
 しかし、コーンフレークの場合、コーンを外皮(コーングリッツ)と白い中身の粉(コーンミール、コーンフラワー) に分ける工程の工場が別にあり、生産ロットが大きく、まとまった国産トウモロコシを生産することもなかなか難しい状況にあります。
 そこで、北海道でシリアルを製造している日本食品製造さんと相談し、まずはそのまま加工できる玄米フレークをつくろうという話になりました。
 シリアルにはコーンフレークや玄米フレークなどがあります。同社は、北海道産にこだわって、大麦、小麦、オーツ麦、 玄米などのフレーク類も製造しており、私たちの思いを聞いて、原料持ち込み、無添加での加工製造を快諾していただきました。
 玄米フレークというと、圧力で米をはぜさせたいわゆる「ぽん菓子」を思いますが、玄米フレークの加工はもっとおおがかりです。 水につけた玄米を蒸して平たくし、乾燥焙煎して完成します。
 原材料玄米だけのプレーンタイプですので、牛乳と砂糖をかけてふつうのシリアルのように食べたり、即席の玄米粥にしたりと応用がききます。
 まだ、試験段階ですが、反応は上々です。

聞き取り:提携米ネットワーク 牧下圭貴


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