政府の「食品安全委員会」の問題点
[ 2003年12月02日 レポートに戻る ]
市民委員会常任運営委員・日本消費者連盟 山浦康明 政府の食品安全委員会が7月1日内閣府に発足した。この日は第1回の会合が開かれ、委員長に寺田雅昭・元国立がんセンター総長を選んだ。
また首相は谷垣禎一郎食品安全委員会等担当相を食品安全担当相に任命した。副大臣には根本匠氏、大臣政務官には木村隆秀氏が決まった。
食品安全委員会の第2回会合が7月9日に開かれたため、市民委員会(FSCW)の水原さんと私が傍聴した。
会議時間は午後1時30分から午後2時30分という短時間にすぎず、次の4議題が討議された。
①「委員長代理の指名」では、寺田委員長から既定のように寺尾充男氏の推薦があり、質疑もなく了承された。
[本来ならば候補者の推薦の理由を説明し、経歴やリスク分析に関する考え方、
消費者の立場をどのように考えているかなどを委員の間で討議すべきであった]*[ ]は山浦の見解以下同じ
②「専門調査会運営規程」について(15分間):事務局が「規程案」を説明し、「添加物専門調査会」など科学的評価を行う13の調査会、及び
「企画」「リスクコミュニケーション」「緊急時対応」の3専門調査会を置くとした。各専門調査会の座長は食品安全委員会委員長が指名する。
[討議内容はおそまつなモノだった。委員7名の内発言したのは本間委員が6回、中村委員が1回、見上委員が1回だけだった。
その内容は食品安全委員会事務局に対して、「専門委員の兼任、任期、専門調査会の設置の優先性」などについて、
この規程の内容を質問するというものにすぎず、委員会が主体性をもって専門委員会を構築しようとする姿勢は皆無だった。小泉、坂本、寺尾、
各委員は無言のままだった。専門調査会の委員の人選がとくに重要であるが、各座長の案は討議されず、のべ
200人にわたる専門委員の人選は事実上、事務局まかせとなり、7月末にこの委員会で承認するという段取りになりそうである。
このままでは事務局主導の形骸化した委員会となってしまう恐れがある]
③「食品安全モニター」について(15分間):全国で470名を選びリスク管理のチェックを市場などにおいて行ったり、
食品危害情報を集めるという重要な任務を持つモニターだが、応募資格についてはまたもや事務局をもとに若干の修正を行い決定された。
[発言は中村委員が2回、坂本委員、本間委員が各1回、寺田委員長が2回行いまとめた]
すなわち
A:食品に関係の深い学問(理科系を中心)を修めた者(修正により流通・経営の分野は入った)
B:食品に関係の深い資格を持つ者
C:食品の安全に関する行政・業務に従事したことがある者。
[これらは一般の消費者、社会科学専攻の者を排除する意図がある。これにはさらに、D:として一般
消費者や社会科学専攻の専門家にも応募資格を与えるべきである]
④「諮問事項」について(25分間):委員会第2回会合で、7月1日付けの厚生労働大臣よりの諮問があった。その内容は「農薬残留基準」
「動物医薬品の食品への残留基準」「食品添加物」などである。(発言は中村委員、本間委員、寺田委員長が各3回行った。他の委員は無言)
[私たちは7月16日、食品安全委員会に対して安易な安全性評価を行わないことを要請した]
□第3回「食品安全委員会」は7月18日(金)14時から開かれた。中村靖彦委員は欠席。
議題は①食品安全基本法第24条に基づく委員会の意見の聴取について、②その他だった。
①は農薬・動物医薬品・かび毒・清涼飲料水など数え切れないほどの品目について「リスク評価をお願いしたい」ということである。新たな基準設定、
改正もあるが多くはすでに「薬事・食品衛生審議会」で審議済みの物が大半である。
厚生労働省の担当官から法律と基準設定の手続き、部会報告の内容の説明があった。質問は本間委員3回、坂本委員1回、寺尾委員1回。
質問に事務局が答えていたが、すべて納得かどうか、反論はない。1時間たらずであっけなく終了。専門調査会(これから人選)
で再評価の必要の有無を区分するということであるが、調査会の委員が、旧「薬事・食品衛生審議会委員」と同じなら“再評価必要なし”
になってしまう。新しい委員はまったく別の人にしなければ意味がない。7月16日に私たちが提出した公開質問状
(安易に安全性評価をすべきでない、等)が事務局より紹介され、委員にも渡された。
「食の安全・監視市民委員会」は7月16日「公開質問状」を食品安全委員会委員長に提出。
その慨容は以下のとおり
本年5月に成立した「食品安全基本法」に基づき7月1日より、「食品安全委員会」が設置され、2回の会合を重ねてきました。私たち消費者・
市民は今後の日本の食品安全行政が抜本的に改革され、消費者の声を反映しうるものとなるかに注目しています。
しかるにこれまでの貴「食品安全委員会」の組織・活動については以下のような疑問を抱かざるを得ません。
リスクコミュニケーションを重視する考え方に基づき、私たちの疑問に対しご回答いただくとともに、
私たちの声を7月18日の第3回委員会会合以降の運営に反映されることを要請いたします。
記
1.食品安全委員会の7名の委員のうち主に常勤委員が毒性学、微生物学、有機化学、公衆衛生学等の専門家とされる。
各分野担当は毒性学が寺田雅昭委員、有機化学が寺尾充男委員、微生物学が見上彪委員、食品流通が本間清一委員、
公衆衛生学が小泉直子委員と思料されるが、正確か否かをお答えいただきたい。事実に反する場合には正確な担当者をお知らせいただきたい。
2.同じく7名の委員のうち主に非常勤委員が農場から食卓までの生産・流通システム等、食生活、健康意識を中心とした消費者意識、消費者行動等、
食をめぐるコミュニケーションを担う情報交流の分野を担当するとされ、坂本元子委員、中村靖彦委員がこの分野を担うと思料されるが、
正確か否かをお答えいただきたい。事実に反する場合には正確な担当者をお知らせいただきたい。
3.7月9日開催の第2回委員会において「食品安全モニター」制度が討議されたが、その中で、応募資格につき事務局案に引きずられ、
応募資格を限定し、一般消費者、社会科学専攻の者を排除する意図があり遺憾である。なぜそのように狭く限定したのか釈明を求めるとともに、
モニターは食の安全を現場で確認する重要な役割を担うものであり、一般消費者や(流通、経営以外でも)
社会科学分野の専門家に応募資格を与えることを求める。
4.7月18日の第3回委員会において厚生労働大臣より7月1日に諮問された「農薬残留基準」「動物医薬品の食品中の残留基準」「食品添加物」
等につき安易な安全性評価を行わないことを要請する。評価の作業を行う場合は薬事・
食品衛生審議会等の審査とは別の食品安全委員会の独自の安全性評価を行うこと、
その際には毒性データの安全性再評価を生データに基づき充分に行いその審査経過を公開することを求める。
5.専門調査会委員の人選が事務局主導で行われようとしていることは遺憾である。食品安全委員会委員の実質的な選考を求める。
また専門調査会委員がいつ決定し、食品安全委員会の活動が本格化するのかその時期をお知らせいただきたい。
6.以上の点につき7月23日までに文書でご回答いただくことを求めます。
7月24日、市民委員会事務局に政府の食品安全委員会事務局メンバーが来訪し、私たちの質問状(7月16日付)に回答。
その後「食品安全委員会」は、7月24日(第4回)、7月31日(第5回)、8月7日(第6回)、8月21日(第7回)、8月28日(第8回)
、9月4日(第9回)、と会合を重ね、食品添加物、農薬残留基準、動物医薬品の食品への残留基準などを、薬事・
食品衛生審議会の答申通りに承認した。
また8月28日には、食品安全委員会内に「緊急時対応専門調査会」が、8月29日には、「プリオン専門調査会」が設置された。しかし、
いづれも、リスク管理機関から独立し、主体性をもって安全性評価を行おうとする姿勢は今のところ見られない。なお、「企画専門調査会」
「リスクコミュニケーション専門調査会」は一部の委員を公募したがまだ人選は終わっていない。
消費者の声を実質的に反映する委員が選ばれるかどうかは、「食品安全委員会」の運営の仕方を占うものとなる。