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農薬取締法改定はなんだったのか 提携米セミナー講演録

[ 2003年12月02日 レポートに戻る ]

2003年第2回提携米セミナーを6月20日に開催しました。
講師に反農薬東京グループ代表の辻万千子さんをお招きし、「農薬取締法改定はなんだったのか 結局、喜んだのは農薬メーカー」 をテーマに農薬取締法の問題点を明らかにしていただきました。

■反農薬東京グループ

2002年の7月末に無登録農薬問題が大きく取り上げられました。これをうけて、農薬取締法の改定があり、省令の修正がありました。 この1年で農薬を取り巻く状況が大きく変わりました。
 実際、農薬取締法の改定とはなんだったのでしょうか。
 結論から言うと、農薬取締法の改定で喜んだのは結局、農薬メーカーだけでした。
 今回の農薬取締法改定では、農薬の問題を作物の残留農薬に矮小化しました。もちろん、 作物への農薬残留により消費者の被害がまったくないとは言いませんが、農薬全体の毒性から考えれば、農薬を使う生産者や周辺住民、 環境への影響の方が重大です。

【残留農薬問題へのすりかえ】
 2002年、無登録農薬問題とならび、中国の「毒菜」問題が起きました。輸入冷凍ほうれん草に違反農薬が高濃度に残留していたという問題です。 中国では残留農薬で何十万人が中毒になったという噂が流れています。この噂の確認はできていません。
 1980年代にアメリカ・カリフォルニアではスイカにアルディカーブという農薬が残留し、約1000人が被害を受けた事件がありました。 作物の残留農薬で直接被害を受けた大事故はこれくらいです。残留農薬で慢性毒性による人体被害を特定した例はまだありません。
 しかし、農薬を散布する農家の健康問題、周辺住民の健康問題、 土壌や水など環境汚染を通じて水道などから毎日摂取するなどの問題の方がより大きいと思います。
 それなのに農薬問題を作物の残留に限ってしまうのは、問題の矮小化です。
 武部・前農相は、「生産者から消費者へ軸足を移す」と言いましたが、これは残留農薬を減らすという意味でした。生活環境での農薬・ 農薬類似物質による化学物質過敏症・アレルギーが増えています。2002年9月に武部大臣と面談して規制を求めましたが、 今回の農薬取締法の改定では、生活環境に対する規制は無理だとはっきり言いました。残留農薬の規制であり、 農薬を使用する農家の不正使用に罰則をつけるための改定だということでした。
 この農薬取締法の改定は、本当に消費者のためになったのでしょうか? いいえ、むしろ、今後数年間は、 どういう農薬が使われるかさえわからないような状況となっています。

【増える農薬の広告】
 最近の日本農業新聞には農薬メーカーの広告がものすごくたくさん掲載されています。それも、一番目立つところにです。
 たとえば、プリグロックスLというパラコートとジクワットの混合剤の広告があります。この農薬は今も日本で一番死者が多い農薬です。 プリグロックスLはパラコートを含み、これは杯1杯で死にいたります。それもすぐに死ぬのではなく、 2週間ぐらい苦しみ抜いて最後は肺の呼吸困難で死にます。それでも自殺目的で使う人がいます。
 ずっと以前の例ですが、グラモキソンというやはりパラコートの入った農薬の原液をいれた洗面器に尻もちをついて、 皮膚から吸収され死んでしまったという例もあります。この農薬はパラコート25%入りでした。
 プリグロックスLはパラコート5%、ジクワット7%で低毒性になったとメーカーは言いますが、それでも毎年数百人がパラコートで死んでいます。
 現在、この農薬は、まったくマイナス表示なしに「よく効く」と広告されています。なぜ、このプリグロックスLを宣伝しているかというと、 パラコートは土壌に吸着してしまって作物に残らないとされるからです。
 この農薬は、一時、日本で製造が中止されていましたが、現在原体が輸入され、 シンジェンダと大塚化学は農薬取締法の改定後にどんどん宣伝をはじめました。
 仮に、彼らの主張が正しく、土壌に吸着し、作物に残留しないとしても、撒く人の危険は去りません。誤って飲んでしまったら助けようがなく、 80%の人が死にます。助かった人も血液を全部替えるなどいろいろなことをやってようやく助かったという状況です。
 そのような危険は広告に載りません。農薬取締法が変わってからもこのような宣伝は減ることなく、むしろ増えています。
 今回の農薬取締法改定が、問題を残留農薬に矮小化した結果です。

【知らされない農薬登録情報】
 昨年、無登録農薬の販売や使用が全国的に問題になりましたが、この問題の本質には、農薬の毒性や失効などの情報が、 農家に伝わっていないことがあります。
 この点は、今回の農薬取締法の改定でも変わりません。
 2002年7月31日に山形県の業者が逮捕されました。このときの無登録農薬であったダイホルタン、プリプトランは、 かつて登録されたことがあり、失効した農薬です。ダイホルタンは、厚生労働省が失効後7年後ぐらいに、農産物への残留基準を厳しくし、 「残留してはいけない(ND)」に変えました。その理由は発ガン性でした。
 しかし、発ガン性があるという事実が明らかになったのは、今回の問題が起こってからのことです。私たちは「農薬毒性の事典」を発行し、 昨年改定版を発行しています。この中で、独自に文献を調べてダイホルタンには発ガン性があると記載していますが、 農水省や厚生労働省に接している私たちでさえ、厚生労働省が「発ガン性がある」とした情報は知りませんでした。まして、 一般の農家の方が知るはずがありません。
 ダイホルタンに発ガン性がある、プリプトランに催奇形性があるという情報は、業者が逮捕されてはじめて出てきました。「ダイホルタンとは何か」 と新聞にコラムが載っていて、そこに「発ガン性がある」と書かれており、記者にどこからの情報か問いただすと、「農水省が言った」 ということだったので、確認すると、農水省は「厚生労働省が言った」と言いました。つまり、情報公開がきちんとされていないのです。
 ダイホルタンを使っていたのは、東北地方が多かったのですが、その方々が「発ガン性があると分かっていたら使わなかった」と言っています。 しかし、その情報は入らず、ただ安くてよく効くとして使われていたわけです。

【無登録農薬使用は氷山の一角】
 無登録農薬は、最終的に、44都道府県、4641農家が購入、使用したとされています。ただし、 この数字の根拠は県の調査を農水省がまとめたものです。最終的に30種類の無登録農薬がありました。
 この中に、ナフサクという、メロンの肥大調整に使われる農薬があります。
 このナフサクはマスクメロンの表面にきれいに網を出すため、全国的に使われています。私は、 ナフサクの使用をやめた静岡のメロン農家に呼ばれたことがあります。この地域には、3つの生産組合があり、1000人以上の生産者がいます。 ナフサクを使われているとおぼしきメロンを分析したところ、ナフサクが残留しており、その結果が新聞に出ました。
 しかし、静岡県は、この事例などを今回の問題で取り上げていません。何人かの農家が、 県に対しナフサクを使っている農家があるではないかと言いに行ったのですが、取り合ってくれなかったそうです。
 だから、静岡県のリストには出てきませんし、農水省のまとめにも上がらない。つまり、この人数は氷山の一角なのです。

【拙速な改定がもたらす混乱】
 無登録農薬問題から農薬取締法の改定まではものすごく拙速です。
 武部農相が、2002年8月に、使用農家への罰則がないのがおかしいと発言しました。そして、10月には、農薬取締法の改定案が提示され、 12月には、衆議院、参議院を通過、成立しました。2003年3月に、使用基準などの省令が決まっています。
 私たちとしては、農薬取締法の改定や使用基準の見直しは必要だが、単なる罰則強化ではなく、抜本的な改正を主張してきました。 私たちが問題にしている生活環境での農薬や類似物質については、今回の改定はむしろ後退しています。

【条文から削除された防除業者の規制】
 今回の農薬取締法改定では、いくつか削除された項目があります。
 特に、防除業者の届け出と監督が規制されなくなりました。これまでの農薬取締法では、 農薬を散布してお金をもらう防除業者は都道府県に届け出が必要でした。都道府県は、業者に対し、指導監督ができました。もっとも、 ほとんど指導はしていませんでしたが、その権限をもっていたのです。
この届け出義務がなくなり、都道府県はどこでどんな業者が散布しているか分からなくなりました。
 農水省はこの理由として次のように説明しています。これまでは、製造業者、輸入業者、販売業者という規定がありましたが、この「業」 がなくなり、製造者、輸入者、販売者となりました。防除業者も、「業」がなくなるため、防除者です。そこで、 防除業者も一般の農薬を使う農家も同じ「防除者」である。そういう発想だそうです。
 この件について、私たちはなんども規制を残すよう交渉しましたが押し切られました。
 そこで、2月に都道府県知事宛にアンケート調査しました。この中で、 半数ぐらいがこの防除業者の届け出義務がなくなることを問題視していました。今後把握する方法は検討中というところが多かったのですが、中には、 従来よりもっと厳しくしたいという意見もありました。
 防除業者は、田んぼや学校、街路樹の防除だけでなく、マンションの木、シロアリ防除、衛生害虫駆除、ネズミ駆除などと同じ業者です。 農薬だけでなく、様々な薬剤を散布する業者が参入しています。
 防除業者は散布器と薬剤があれば成立します。安全性の知識は持っていません。人がいようがいまいが、安全だと思って薬剤を撒きます。
 ひとつの例ですが、2000年、北海道静内町にある特別養護老人ホームでゴキブリ駆除が行われました。もちろん、 北海道にはゴキブリがほとんどいません。
 ここで、ハウス栽培で使われる有機リン系の燻蒸剤DDVPをはじめ、スミチオンなど数種類の農薬を散布しました。 散布中一時的に入居者を外に出していましたが、7時間後に入居者を入れました。そこで、健康被害が発生しました。中毒で入院する人もいました。 この業者は農薬防除業者であり、シロアリ駆除をはじめ、様々な散布業をやっていました。しかし、この程度の認識しか持っていなかったのです。

【防除業者のための行政】
 今、西ナイルウイルスがアメリカで問題になっています。これは蚊が媒介します。 もうすぐ日本に入ってくるのではないかと厚生労働省が戦々恐々としています。担当の結核感染症課は西ナイルウイルスは蚊が媒介するので、 蚊を駆除すれば安心だという考えになっています。もし、患者が発生したり、 カラスが死んでいて西ナイルウイルスが検出されたら周囲10km四方に空中散布し、蚊を駆除しろといっています。 そういうガイドラインを都道府県に通達しようとしています。化学物質過敏症の人だけでなく、一般の人にも健康に影響がでてくるでしょう。 私たちはこの通達を出すなと申し入れをしているところです。
 このガイドラインは、国立感染症研究所、PCO業者代表、防除業者を指導する日本環境衛生センターらがつくっています。PCOとは、Pest Control Opaerator(ペストコントロールオペレーター・害虫防除技術)のことです。
 昔、伝染病予防法という法律があった時代、町内会が農薬散布、駆除を行ない、必要のないような薬剤散布をやってきました。 私たちがさまざまな運動をしてようやくこの事業は減りつつあります。
 本当に蚊の発生を抑えようと思ったら、成虫を駆除するのではなく、発生源をなくすことです。幼虫段階で抑制するしかないのです。
 多くの反対運動の結果、ようやくこの町内会での防除体制がなくなってきたと思ったら、今度はPCO業者が行なうというのです。 ガイドラインによれば、蚊の駆除について専門的な知識を持っているのはPCO業者であり、 市町村はPCO業者に頼んで駆除しなさいということです。
 このガイドラインには、散布するための農薬として、危険な有機リン系農薬がリスト化されています。防除機についてもリスト、写真、 連絡先まで記載された業者にやさしいガイドラインになっていました。
 6月2日にガイドラインについての新聞記事が出ました。そこで、6月10日に厚生労働省に申し入れをしました。その際、 厚生労働省は万一西ナイルウイルスが入ったらパニックになるので、その防止対策だとして聞き入れませんでした。その後国会で、 業者名が入っているものを国のガイドラインとして出していいのかと質問してもらいました。その結果、厚生労働省の名前をはずし、 ガイドラインではなくなり、特別研究の研究報告との内容に変わり、農薬散布だけでなく、日常的に水たまりをなくすとか、 散布時には乳幼児等の家族に配慮するようになどの課長通知をつけて、昨日公表されました。
 私たちは、町なかで農薬が散布されるような状況を少しずつ抑えてきたつもりです。ところが、この西ナイルウイルスの問題でいっぺんに元に戻り、 とにかく殺虫剤を撒けという状況になりつつあります。
 この例をみてもわかるようにPCO業者と厚生労働省はとても仲よしです。
 彼らの利権は直ちに取り入れられ、70頁におよぶようなガイドラインをさっさと作ったりします。そして、 市民の健康被害を示す意見は無視するという構図は変わっていません。

 農薬取締法の改定でPCO業者の届け出はなくなりました。もちろん、農家と同じように「使用者」として同じような罰則があります。食用作物、 飼料作物の使用基準には罰則があります。しかし、非食用作物については罰則がありません。抜け穴があるのです。たとえば、 桜の木に使う農薬については罰則がありません。これではほとんどのPCO業者の行為が罰則から逃れられます。
 たとえば、桜につくアメリカシロヒトリの防除で、 有機リン系のディプテレックスはアメリカシロヒトリには1500倍に希釈しなければなりません。しかし、 他の虫では1000倍の希釈でいいとされます。それでは、桜の木にアメリカシロヒトリ防除を目的に1000倍で撒いたら違法ではないかというと、 「違反ではあるが罰則はない」ということになります。
 私たちは、このPCO業者の届け出がなくなったのはあまりにもひどいと訴えつづけ、法律からは削除されましたが、省令で復活しました。 空中散布、ゴルフ場、農薬燻蒸業者は届け出になりました。しかし、一番問題にしていたPCO業者の届け出は不要となりました。 PCO業者が防除業者全体の8割から9割を占めています。これでは意味がありません。

【問題だらけの特定農薬規定】
 農薬取締法の改定で追加された主な条文とは、使用禁止、使用規制、使用指導です。使用禁止とは、無登録農薬を使ってはいけないということです。 そのためには、どれが登録農薬で、どれが無登録農薬かはっきり知らなければなりません。そこで、 ようやく農薬検査所のホームページに失効農薬の一覧が出るようになりました。しかし、理由は明らかにされません。 毒性上の問題で失効したのか、 メーカーがもうからないから製造をやめたのか、それが分かりません。
 さて、この結果、使える農薬は、登録農薬か特定農薬しか使えなくなりました。罰則は、個人で最高刑は、懲役3年か100万円、 法人は1億円となっています。
 ここで問題なのは「特定農薬」です。
 なぜ、特定農薬が出てきたのか? 結局、化学農薬を使わない有機農家なども規制しようという発想です。最初の農水省の説明では、 有機農家が使っている資材はもちろん登録された農薬ではなく、かといって、それを農薬取締法違反だとして規制するのは過剰規制になる、よって、 原材料に照らして安全なものは農水省が使用を認めるというものでした。最近は説明がどんどん変わっています。
 農水省は2002年12月に、特定農薬候補の調査、情報収集をしました。有機農家、JAS有機認定機関や都道府県から情報を集め、 600種類ぐらいが上がってきました。
 合鴨やカエルなどもあり、こんなものも認定されないと使えないのか、と、社会問題になりました。
 特定農薬は、 農業資材審議会農薬分科会特定農薬小委員会と中央環境審議会土壌農薬部会農薬専門委員会の合同委員会で指定することになっています。法律には、 農業資材審議会の意見を聞くとなっていますが、実際には、この合同委員会です。
 農薬取締法が12月改定、3月施行となりました。農水省はこの委員会に特定農薬を決めろと丸投げしました。本山直樹農薬分科会部会長 (千葉大学教授)に、「事前に改定についての情報を持っていますか」と聞いたところ、もっていないとのことでした。 なんの相談もなかったようです。改訂後に聞いたら、「3カ月以内に特定農薬を決め、使用基準を決めろと言われた」とのことです。 特定農薬の規定がまったくなく、事前の相談もなかったため、「原材料に照らして安全」なもので決めろということでした。検討委員会では、 「安全であっても効果がなければ農薬とは言えない」という話になり、結局、「安全で、効果があるものを特定農薬に指定する」となりました。 その結果、最終的に、重曹、食酢、地域でとれる天敵の3種類が特定農薬として指定され、あとはすべて保留となりました。保留は、 指定されるまでは、使用者が効果があると信じて使う分にはかまわない。ただし、販売業者は農薬として効果があるといって売ってはならない。 というあいまいなことになりました。
 現在、特定農薬を決める基準を作っているところです。
 基準案は、農水省が出しています。
 まず、特定農薬が「特定防除資材」という通称になります。通称の方が長いというのも変ですね。この指定には科学的評価が必要だとして、薬効 (効果の確認)、安全性(農産物、人畜水産物への確認)を求められます。
 特定農薬に指定されると、効果があり、安全だというお墨付きになります。
 ですから、特定農薬に指定されると、安全と効果が農水省によって保証されるということで、木酢やニームなどの販売業者らが、 現在採用のロビー活動をしています。
 指定の対象にならないものは、化学合成物質です。ただし、食品は除かれます。次に、抗生物質、天敵、微生物、弱毒ウイルスはだめです。 化学合成界面活性剤の補助剤を入れるのもだめです。石けんもだめでしょう。
 だめだと決められたものは、ナフサク、塩化ベンザールコニウム(逆性石けん)、クレゾール、クレオソート、タバコ抽出物、ナフタリン、ホウ酸、 ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、灯油、消石灰などです。これらは、特定農薬に指定されず、必要ならば、登録をとるしかありません。
 では、化学合成物質を指定しないとなっていますが、「化学合成物質とはなにか」、その議論が審議会で行われています。傍聴していたのですが、 農薬対策室長は、化学合成物質についてわからない、と発言し、委員から、それでは困ると返されています。たとえば、酢にも、発酵と合成があり、 合成は化学合成物質なのか、と聞かれると、事務局は答えられず、「化学合成とは、化学合成的手段によって作られる」というのが、 何かの法律にあるそうで、それを読み上げたところ、大笑いになっていました。
 化学合成物質の整理さえできないという討議です。
 加熱したらいけないのか、抽出したらいけないのか、疑問が多い点ですが、まだ決まっていません。
 たとえば、除虫菊粉剤は特定農薬になりうるでしょうか。農薬対策室長は、販売するなら登録が必要だといいます。実際に、 過去に除虫菊粉末は登録されたことがあり、主成分のピレトリンは登録されています。
 つまり、特定農薬の指定は、最初に考えられていたより厳しく、安全性と薬効を申請者が提出しなければなりません。薬効については、 2カ所以上の研究機関で認められデータが必要とされています。農水省は、農家の負担を考え、予算の範囲で試験も考えているとしています。
 おそらく、化学農薬メーカーも特定農薬の指定を待っていると思います。ニームやセルコート(セルロース系の合成化学物質で虫を窒息死させる) などが指定されたとき、化学農薬メーカーが販売し、今、そういう資材を開発している中小のメーカーはつぶれていくと思われます。 大手のメーカーは、一方で化学農薬を売りながら、品揃えとして特定農薬を扱っていくことになるでしょう。
 この制度そのものをなくしてしまわなければならないと、食の安全と農薬問題連絡会で運動を続けてきました。
 農薬取締法の修正案を作り、国会で社民党と共産党に提案してもらいましたが、否決されてしまいました。
 有機農業で使うような資材は、別の法律で管理すべきで、農薬ではないというのが私たちの主張です。農薬とは、 化学農薬のことでいいはずだと考えています。今後、この特定農薬をいかにして農薬取締法からはずすのか、これが大きな問題で、 非常に難しい問題でもあります。抜本改正が必要で、あきらめず運動を続けていきたいと思います。

【化学農薬を推進する法律】
 農薬取締法の改定は、使用者の規制をするということでしたが、回り回って化学農薬使用の推進になるとは思いもよりませんでした。 表面的な理由とは別に、抜け道があって、最終的に農薬をどんどん使いなさいという図式ができています。
 農水省や農薬メーカー、農薬推進派の人たちは、登録された農薬は安全だという基本があります。だから、特定農薬はあやしげなものであり、 あれよりは、化学農薬のかかった農産物の方がずっと安心という人たちがいます。
 さて、農薬取締法改定を受けて、農薬使用はどのように促進されるのでしょうか。
 ひとつは、作物のグループ化です。
 たとえば、従来はとうがらしにスミチオンは使えましたが、ししとうには使えませんでした。これを作物別ではなく、 とうがらしに使っていいものはししとうにも使える、つまり「とうがらし類」としてグループ化することで、使用適合の範囲が増えました。
 ミニトマトとトマトは似たような作物ですが、残留実験ではミニトマトの方がたくさん残留しました。そこで、 これらに使用できる農薬は分けられていましたが、それがグループ化されることでミニトマトは0だったのが、94も使えるようになりました。
 野菜類という分類もあります。これは、種のことですが、種でもグループがくくられました。
 このグループ化は農薬メーカーを喜ばせ、たくさんの作物に使用できるという広告を出すようになりました。大金を出して試験をしなくても、 どんどん適用範囲が増えたわけです。
 次の問題は、マイナー作物の経過措置です。
 マイナー作物とは生産量が少ない作物のことです。農薬メーカーはマイナー作物のために農薬登録しても、登録料がかかるばかりでもうかりません。 マイナー作物の生産者は登録農薬がないため栽培できないというのです。
 当面は、登録農薬がないため、生産できなくなるケースがあるということで、経過措置として、都道府県知事が申請し、 登録がなくても使ってよいことになりました。もともと使ってはいけないけれども、2年~3年は使ってもいいということです。 適用外農薬を農水省に申請した件数、農薬名と作物名をあわせると55570件(4月28日現在)です。
 経過措置の期間ですが、食品衛生法での残留基準が3年後にネガティブリストからポジティブリストに変わることになっています。今は、 残留基準のないものが圧倒的に多く、基準のないものは残留しても違反ではないネガティブリストです。これが、 残留基準のないものが検出された場合、すべて違反となる、ポジティブリストに変わります。
 日本の残留基準の決め方はかなりいいかげんです。もともと残留基準の決め方に整合性がありません。 日本人の平均食料消費量から割り出して1日のADIを超えなければよいというものです。
 中国の冷凍ほうれん草問題では、クロルピリホスが検出されました。生のほうれん草は農産物であり残留基準がありますが、 冷凍ほうれん草には基準がありません。そこで、生のほうれん草の基準をあてはめました。茹でて冷やしただけなので、 生鮮と同じという理屈にしました。クロルピリホスはほうれん草で残留基準が0.01ppmでした。ところが、大根だと3ppmです。
 中国の冷凍ほうれん草の残留最高値が2.9ppmだったため、大根よりも低いではないかと中国が怒ってきました。厚生労働省は、最近、 大根の残留基準を下げました。
 中国だって外国ですから外圧です。
 これが3年後は基準外は違反となります。すると、マイナー作物に残留基準のないスミチオンが検出されたら、今後は違反となります。
 それまでは、申請し、承認されれば使ってよいということです。
 福岡県は最高で695を申請し、承認されました。申請したらその農薬の残留を調べなければなりません。 残留基準がないものは登録保留基準を参考に調べます。調べずに出荷して、残留が分かったら回収しなければならないと農水省は言っています。 農水省は仕組みを作ったのであとは都道府県の責任ということです。そのことを理解せずにどんどん申請したのです。 残留検査費用は県が行うこととなります。そういう覚悟で申請されたのでしょうか。富山や奈良や福井は申請数が0ですが、頭がよかったのでしょう。
 しかも、申請したグループしか使えません。県単位ではありません。もちろん他県での使用もできません。しかし、 こういう情報は消費者に一切知らされません。
 厚生労働省に、このマイナー作物の経過措置で出る残留農薬について調べないのかと聞いたところ、「そんなに心配なら有機農産物を食べなさい」 ですって。
 結局、化学農薬を使いたい放題ということです。
 農水省は、経過措置の間に、農薬登録しろと言っています。そして、農薬メーカーに負担がかからないよう、 都道府県や生産者がお金を出して登録しろということだそうです。

 他にも、農薬取締法改定について、使用基準問題など、様々な問題があります。これは、別の機会にまわします。 (講演資料として問題を整理した文書をいただいています~編注)

 


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