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コーデックス特別部会会合を傍聴して

[ 2001年04月30日 レポートに戻る ]

2001年3月29日
日本消費者連盟副代表
山浦康明

コーデックス委員会バイオテクノロジー応用食品特別部会第2回会合の傍聴をして

■ 2001年3月25日から29日にかけて千葉・ 幕張で開かれたバイオテクノロジー応用食品特別部会は3月27日、実質的な討議を終え、 「モダンバイオテクノロジー由来食品のリスク分析の一般原則」の予備的報告書(CX/FBT 01/4)を採択し、 「追跡可能性に関する討議文書(フランス作成)」を来年3月の特別部会で再討議することを了承し、 「組み換えDNA植物由来食品の安全性評価実施のガイドライン」の予備的報告書(CX/FBT 01/5)を採択した。また今後、 「微生物由来の遺伝子組み換え(GM)体の安全性に関する特別作業部会」を設置し、 アメリカが議長国となり2003年までに報告することを了承した。そして、3月29日、こうした内容をまとめた中間報告を採択し、また、 カナダが議長国となり、「GM食品アレルギー作業部会」を設置することを新たに決めた。

■ 本会合は現在世界各地の市場を席巻しつつあるバイオテクノロジー由来の食品の安全性の確保を図るための作業がおこなわれたわけであるが次のような問題点をはらんでおり、 今後も監視し続けなければならない、と考える。

■ まず、本会合がバイオテクノロジー由来の新規食品を、食料の増産の救世主のようにとらえ、また、ビタミンAライス(ゴールデンライス) の推進などを図るうえで、社会的な合意をとりつけようとする意図がみられることは問題である。上記報告書の協議においても、 食品の最終摂取者である消費者の抱く危惧、バイオテクノロジー由来穀物・食品の流入に悩まされる発展途上国の不安を軽視している。

  • 具体的には上記CX/FBT 01/4文書のパラグラフ6の「定義」に関して、「実質的同等性」の考え方を背景に、アメリカ、カナダ、 日本などが強調し、モダンバイオテクノロジーと比較すべき伝統的食品の中に、こともあろうに市場化された遺伝子組み換え食品を含める、 などとの主張があり、バイオテクノロジーの市場化を既成事実化しようとしたのは問題である。この項目は原文をそのままに、「当面は、 バイオテクノロジー食品は含めない」との脚注をつけることになった。
  • また01/4文書のパラグラフ19の「追跡可能性Traceability」(危険な食品の履歴証明義務など)に関して、 この文書からの削除をアメリカ、オーストラリア、カナダ、などが求め、多くの代表団が反対する中、日本代表が態度を明確にしないまま、 本文の脚注へ押しやろうとする妥協案を出したことは、スターリンク問題で不安を抱える日本の消費者として納得できない。この項目は、最終的には [ ]をつけたまま、報告書に残すことになった。


■会議の透明性の確保、という点では、37カ国の代表と国際機関・NGOの25組織が集まり、NGOの主張も各国代表の主張と同列に扱われ、 議事進行も日本の吉倉議長のもとで、公平に行われた点は評価できる。しかし、 多くの発展途上国はバイオテクノロジー応用食品の影響を受けるにもかかわらず、本会合にはわずかしか参加することができず、 安全性の基準が世界的なものとなる中でバランスを欠いている。また議論の核心が専門家会合に委ねられる傾向があり、 今回の会合の議題でもあったリスク分析の制度化という点でも問題がある。

■日本政府代表の本会合における行動は日本の消費者にとって納得のいかないものであった。
-本会合の議題に関して事前に政府の方針を十分に情報公開せず、また国民の声を十分に本会合に反映させようとする姿勢がみられなかった点。
-バイオテクノロジーに由来する食品の安全基準をめぐる議論であるにもかかわらず、次のような態度を会合の中でみせることにより、 バイオテクノロジー食品の市場化を推進しようとする側面ばかりを強調し、結果的に日本の消費者の安全性重視の立場を阻害したこと。

  • 日本政府から委嘱された吉倉議長が比較的公正な議事運営を行い、各論点について参加代表団の意見表明の機会を与え、 日本のNGOやCIなどを含めて活発な議論が行われた中にあって、日本政府代表団はその旗色を鮮明にすることがないまま、多くの場合、 アメリカやカナダなど、食品輸出国に賛意を示す態度を取ったこと。
  • "Traceability"の議題を始めにもってくるかどうかの議論(3月25日午前)において、スウェーデン、オランダ、イタリア、 ベルギー、フランス、ポルトガル、が重要な議題であるため、先にもってくるべきとしたのに対し、アメリカ、カナダ、ブラジル、 タイとともに日本は、その必要がないと述べた。吉倉議長は妥協案として、CX/FBT 01/4のパラ19の前に時間をとってtraceabilityの議論をすることを保証した。
  • CX/FBT 01/4文書のパラグラフ23の「ハーモナイゼイション」の議論(26日午前)において、 コーデックスの基準が世界標準となり、各国の主権に基づく規制方法をも左右しかねないことから、各代表団から、真剣な議論が行われる中で、 日本政府は沈黙し、日本の安全行政の責任を放棄したかのようであった。このパラグラフは最終的には削除された。
  • CX/FBT 01/5のパラグラフ58の中で抗生物質の残留問題が討議された際にも、抗生物質の利用の有用性を主張する意見と、 規制強化を主張する多くの意見表明に対し、日本政府としての発言はみられず、都合の悪い議題には態度を明らかにしない立場をとることは、 国民の健康を所管する役所の姿勢としては許されない。この問題に対しては、吉倉議長がバンコマイシン耐性の問題を取り上げ、 この原文はそのままとなった。
  • "Traceability"の扱いをめぐる議論で、ほとんどの代表団が賛否を表明する中、日本政府の意見はついに聞かれず、 この文言を脚注に落として各国の同意をとりつけようとの動きをみせたことは、 この文言をはずしたいという本音を隠しつつ根回しによる協議をまとめるといった悪しき慣行を国際的に見せつけ、 日本の傍聴者として極めて残念に感じた。


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