コーデックス特別部会会合を傍聴して
[ 2001年04月30日 レポート ]
2001年3月29日
日本消費者連盟副代表
山浦康明
コーデックス委員会バイオテクノロジー応用食品特別部会第2回会合の傍聴をして
■ 2001年3月25日から29日にかけて千葉・
幕張で開かれたバイオテクノロジー応用食品特別部会は3月27日、実質的な討議を終え、
「モダンバイオテクノロジー由来食品のリスク分析の一般原則」の予備的報告書(CX/FBT 01/4)を採択し、
「追跡可能性に関する討議文書(フランス作成)」を来年3月の特別部会で再討議することを了承し、
「組み換えDNA植物由来食品の安全性評価実施のガイドライン」の予備的報告書(CX/FBT 01/5)を採択した。また今後、
「微生物由来の遺伝子組み換え(GM)体の安全性に関する特別作業部会」を設置し、
アメリカが議長国となり2003年までに報告することを了承した。そして、3月29日、こうした内容をまとめた中間報告を採択し、また、
カナダが議長国となり、「GM食品アレルギー作業部会」を設置することを新たに決めた。
■ 本会合は現在世界各地の市場を席巻しつつあるバイオテクノロジー由来の食品の安全性の確保を図るための作業がおこなわれたわけであるが次のような問題点をはらんでおり、
今後も監視し続けなければならない、と考える。
■ まず、本会合がバイオテクノロジー由来の新規食品を、食料の増産の救世主のようにとらえ、また、ビタミンAライス(ゴールデンライス)
の推進などを図るうえで、社会的な合意をとりつけようとする意図がみられることは問題である。上記報告書の協議においても、
食品の最終摂取者である消費者の抱く危惧、バイオテクノロジー由来穀物・食品の流入に悩まされる発展途上国の不安を軽視している。
- 具体的には上記CX/FBT 01/4文書のパラグラフ6の「定義」に関して、「実質的同等性」の考え方を背景に、アメリカ、カナダ、 日本などが強調し、モダンバイオテクノロジーと比較すべき伝統的食品の中に、こともあろうに市場化された遺伝子組み換え食品を含める、 などとの主張があり、バイオテクノロジーの市場化を既成事実化しようとしたのは問題である。この項目は原文をそのままに、「当面は、 バイオテクノロジー食品は含めない」との脚注をつけることになった。
- また01/4文書のパラグラフ19の「追跡可能性Traceability」(危険な食品の履歴証明義務など)に関して、 この文書からの削除をアメリカ、オーストラリア、カナダ、などが求め、多くの代表団が反対する中、日本代表が態度を明確にしないまま、 本文の脚注へ押しやろうとする妥協案を出したことは、スターリンク問題で不安を抱える日本の消費者として納得できない。この項目は、最終的には [ ]をつけたまま、報告書に残すことになった。
■会議の透明性の確保、という点では、37カ国の代表と国際機関・NGOの25組織が集まり、NGOの主張も各国代表の主張と同列に扱われ、
議事進行も日本の吉倉議長のもとで、公平に行われた点は評価できる。しかし、
多くの発展途上国はバイオテクノロジー応用食品の影響を受けるにもかかわらず、本会合にはわずかしか参加することができず、
安全性の基準が世界的なものとなる中でバランスを欠いている。また議論の核心が専門家会合に委ねられる傾向があり、
今回の会合の議題でもあったリスク分析の制度化という点でも問題がある。
■日本政府代表の本会合における行動は日本の消費者にとって納得のいかないものであった。
-本会合の議題に関して事前に政府の方針を十分に情報公開せず、また国民の声を十分に本会合に反映させようとする姿勢がみられなかった点。
-バイオテクノロジーに由来する食品の安全基準をめぐる議論であるにもかかわらず、次のような態度を会合の中でみせることにより、
バイオテクノロジー食品の市場化を推進しようとする側面ばかりを強調し、結果的に日本の消費者の安全性重視の立場を阻害したこと。
- 日本政府から委嘱された吉倉議長が比較的公正な議事運営を行い、各論点について参加代表団の意見表明の機会を与え、 日本のNGOやCIなどを含めて活発な議論が行われた中にあって、日本政府代表団はその旗色を鮮明にすることがないまま、多くの場合、 アメリカやカナダなど、食品輸出国に賛意を示す態度を取ったこと。
- "Traceability"の議題を始めにもってくるかどうかの議論(3月25日午前)において、スウェーデン、オランダ、イタリア、 ベルギー、フランス、ポルトガル、が重要な議題であるため、先にもってくるべきとしたのに対し、アメリカ、カナダ、ブラジル、 タイとともに日本は、その必要がないと述べた。吉倉議長は妥協案として、CX/FBT 01/4のパラ19の前に時間をとってtraceabilityの議論をすることを保証した。
- CX/FBT 01/4文書のパラグラフ23の「ハーモナイゼイション」の議論(26日午前)において、 コーデックスの基準が世界標準となり、各国の主権に基づく規制方法をも左右しかねないことから、各代表団から、真剣な議論が行われる中で、 日本政府は沈黙し、日本の安全行政の責任を放棄したかのようであった。このパラグラフは最終的には削除された。
- CX/FBT 01/5のパラグラフ58の中で抗生物質の残留問題が討議された際にも、抗生物質の利用の有用性を主張する意見と、 規制強化を主張する多くの意見表明に対し、日本政府としての発言はみられず、都合の悪い議題には態度を明らかにしない立場をとることは、 国民の健康を所管する役所の姿勢としては許されない。この問題に対しては、吉倉議長がバンコマイシン耐性の問題を取り上げ、 この原文はそのままとなった。
- "Traceability"の扱いをめぐる議論で、ほとんどの代表団が賛否を表明する中、日本政府の意見はついに聞かれず、 この文言を脚注に落として各国の同意をとりつけようとの動きをみせたことは、 この文言をはずしたいという本音を隠しつつ根回しによる協議をまとめるといった悪しき慣行を国際的に見せつけ、 日本の傍聴者として極めて残念に感じた。
WTO交渉などをめぐる動き
[ 2001年04月30日 レポート ]
2001年4月9日山浦康明
■ 2001年に入りWTO交渉は農業交渉の分野において、各国の提案が出され、
それをめぐり議論が始まっている。日本政府提案については、多面的機能の重視をめぐって、
ヨーロッパ諸国や一部途上国の賛同とケアンズグループや一部途上国の反対がみうけられる。11月のカタールでの閣僚会議に向けて、
7月までに具体的な交渉項目や方式など合意すべき事項をまとめたいとのムーア事務局長の意向は、実現できるかまだ不透明な状況である。
2000年の輸入野菜による国内農家の被害に対し、政府は今月4月一般セーフガード措置を決めようとしている。しかし、これはネギ、
生シイタケ、イ草の3品目に限定され、また秋までの需要が少ない時期での暫定措置であり、効果のほどは疑わしい。
中国のWTO加盟問題は、まだその結論を出すに至っていない。
また、食品の安全性の問題をめぐっては、3月25日から29日にかけて、千葉・幕張において、コーデックス・
バイオテクノロジー食品特別委員会第2回会合が開かれ、安全基準をめぐって議論が行われた。別稿で述べたように、
バイオテクノロジーの安全性問題をめぐって、コーデックス委員会の姿勢はかならずしも消費者の不安を解消するものではなく、
今後とも監視し続ける必要がある。
こうした状況において、WTO体制をめぐる問題点を改めて整理し、今年の交渉経過を見守っていこう。
■ 貿易自由化論をめぐって
GATT-WTO体制の問題点をみておく必要がある。
日本が貿易の自由化により貿易立国として離陸できた、との議論があるが、鉱工業製品の輸出ラッシュを支えた背景を考えてみると、
単に関税の引き下げがなされ、各種非関税障壁がなくなったからだ、との議論は一面的である。それは、
工業生産において日本が各国の資源を安く購入し原材料コストを引き下げることができたこと、国内での生産にあっては、
労働賃金を低く押さえる政策がとられ、ここでもコストを引き下げることができたことなどに負っているのであり、
世界のまた国内の多くの人々に多大な犠牲を強いるなかで貿易による利益が生じたということである。そして、
その富の配分は多国籍企業に典型的に見られるように、日本の国民の生活を豊かにするものではなく、企業の利益を増大させるものであった。
そしてこれは、国富の枠を越え、今や一国の貿易収支がその重要性をもたなくなりつつあるのである。
また、貿易自由化は地球レベルで産業化を進める歴史であったが、その中で資源浪費、エネルギー浪費、産業廃棄物の投棄よる、地球温暖化、
環境破壊など、多くの負の側面が存在することが認められる。南北格差は解消されず、資本進出による発展途上国の悪影響は、
FAOのアジア太平洋地域総会でも各国の報告にあった。
こうした点は、ネオ自由主義論の「市場経済化万能」の発想のあやまりということができる。それは所得の再分配に関する措置が国内的にも、
国際的にも十分でないこと、環境や人権など非経済的コストを内部化するするシステムがない市場の失敗、
多国籍企業の国際的独占を規制するシステムの不在などである。今やオルタナティブな経済理論の必要性があり、各国の外交政策、
産業政策としても何を優先させるべきか、が今問われているのである。
■ WTO農業交渉日本政府提案(2000年12月)
をめぐって
「交渉に際しての基本的重要事項」とのタイトルのもと、本提案の総論部分においては、
2000年に国内の市民団体などからの提案を募りその意見を反映させたこともあって、上記のWTO体制が抱える問題点を指摘した。
まず、「農産物貿易のルールの見直しが必要として、今回の交渉に際してはGATTウルグアイ・ラウンド(UR)合意の実施状況を充分に検証し、
各国が抱える食料政策・農業政策の困難を解決するように交渉をおこなうべき」とする。「ケアンズグループの中でもアルゼンチン、オーストラリア、
ブラジル、カナダといった食料輸出大国は輸出量を増加させたが、インドネシア、フィリピンなどは輸出額を減少させ、
農産物貿易から受ける恩恵は不公平な結果をもたらした。また、先進国の食料過剰と途上国の食料不足がさらに拡大した、」と述べる。
日本では食料の輸入国がUR合意後もさらに輸入量を増大させ国内自給率を低下させ国内農業も衰退の一途をたどっているのである。また、
「アメリカやカナダにおいては、穀物の過剰により穀物価格が低下し農家は経済的損失を被り、政府が農家救済策を導入している。」
次に「世界的な農政上の課題としての、農業の多面的機能の追求、食料安全保障の追求が必要」とする。
「農業は貿易の対象たる農産物のみを生産しているわけではなく、市場に反映されない多面的で公益的な価値を生産している。それは大気の浄化、
レクリエーションの場の提供、緑豊かな景観の提供、洪水調節・水資源かん養・土砂崩壊防止、地域社会の維持などである。」
食料安全保障をめぐっては、「いま、世界では、少数の特定国・地域の主要農産物の輸出に占める割合がますます大きくなってきている。
その一方で開発途上国を中心とした栄養不良問題が長期化、深刻化している、」と分析し、政府の課題として、
「食料の安定供給を確保することは国民に対する国の基本的な責務、」「食料安全保障は開発途上国にとって最優先の課題であり、
世界最大の食料輸入国である我が国の消費者にとっても最大の関心事項の一つ、」「世界の食料需給は輸出国が特定の国・
地域へ集中しており今後もその度合いは高まる、農業は異常気象の影響を受けやすいことなどから不安定な側面をもち、
需要の増大により今後の世界の食料需給もひっ迫する可能性がある、」
ことから食料の安全保障をを確保の重要性を十分に認識してWTO農業交渉を行うべきと述べる。
■ また世界の多様なNGOの提案がなされ、
WTOの改革が迫られている。2000年3月に世界の64カ国454のNGO団体(2000年6月末現在)が合意した「世界NGOキャンペーン」
の「ボストン声明」では「文化の多様性、生物多様性、経済の多様性を保護し、地域経済と地域内貿易を優先させる政策を導入し、
国際的に認知されている経済的権利、文化的権利、社会的権利および労働権を確保し、人々の主権と、
国家および地域レベルにおける民主的意思決定プロセスを取り戻す必要がある。そのためには、資源の民主的管理、生態系の持続性、公正、
および協力という諸原則、そして予防原則に基づく新しいルールが必要なのである、」と述べる。
■ これまで農産物の貿易自由化は、
価格低下と選択幅の拡大をもたらす、食料自給努力は食料の価格を押し上げ社会的弱者が入手しにくくさせた、などと楽観的立場をとっていたCI
(国際消費者機構)も、2000年11月の第16回世界大会では、GATT-WTO体制への態度を変化させた。貿易の自由化を「持続可能な開発」
「貧困撲滅」「消費者の権利」という観点から再評価する必要がある、としました。現在の消費パターンが資源浪費型であることを認め、
資源の保全と公平な分配を図る必要があること、生物多様性や自然のエコシステムを守る必要性があること、
食料自給について国内消費用の主食の生産を優先させる必要があることを認めている。
■「食の自給と安全の全国行動」
を行っている市民運動団体「ふーどアクション21」も日本政府に対しWTO農業交渉に対する意見書を2000年8月29日に提出したが、
その中で政府提案の各論部分については次のように提案している。
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1.「貿易交渉における農産物の扱いについて」は工業製品と同じルール上で扱うことはもっての他です。日本政府が主張するように、
「農業は人が生きるために不可欠な食料を生産する産業であり、また、食料供給を行う以外に自然環境や国土の保全といった役割も果たし」、
人類の生存にとり背中合わせの活動でもあります。WTO交渉においては、農業部門は自由化の論理を強調すべきではありません。
自由化の波にのせることは各国の農業発展を後退させ、その人々の生存の危機を招くことになるからです。
それと同時に工業製品の自由化の論理も見直す必要があります。
比較生産性優位の考え方からは経済力のある先進国や多国籍企業がその利益を得る傾向がありました。資源の収奪や廃棄物の拡大、
といった地球環境破壊の弊害もみられます。また投資やサービス部門の自由化は南北間の格差を拡大するおそれがあります。
2.「農業の多面的機能を配慮」することには賛成です。ウルグアイラウンドの農業合意においても「非貿易関心事項(non-trade
concerns)」が言及されており、日本提案におけるように「国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承、
保健休養、地域社会の維持活性化、食料安全保障」を多面的機能の内容として盛り込むことは当然です。
そしてこの考え方の背景にはすべてのものを商品化し貿易の対象とすることは人類の生存の危機をもたらすことを自覚し、
これを貿易制度一般のルールとすべきではないという理念があることを強調する必要があります。また日本政府としては、
農業の多面的機能維持を主張する以上、国内支持の口実として述べるのではなく農業政策として実質化しているという裏付けが必要です。
緑の政策として位置づけている基盤整備事業などの項目は農業の発展にとって本当に役立っているのかを検証してみる必要があります。
自然環境の保全を主張する以上、日本においても有機農業への転換を進める必要もあります。
3.「食料の安全保障」について日本政府の主張に同意します。すなわち「どんな場合でも国内に食料を安定的に供給することが国の義務であること、
人口の急増等により世界の食料需給が大幅に増加することや砂漠化の進行などにより食料増産にも限界があることを考えれば、
各国が輸入に過度に依存することは問題であり、食料供給は国内生産を増大させることを基本にすべき」です。
フードセキュリティを国際的合意とすることはFAOも認めるところです。これについては、
日本のような経済大国が経済力にものを言わせて発展途上国の農産物を買いあさることはその国の食料自給をさまたげること、
アメリカやケアンズグループなどの多国籍の食料産業の戦略に国民の食生活をまき込むべきではないことなどに留意する必要があります。
輸出国であろうと輸入国であろうと自国民を飢えさせない食料安全保障の権利を認め合う必要があるのです。
その上でセーフティネットを作ることが国際貿易ルールとして必要なものなのです。
4.「多面的機能を有する農業に対する措置について」
農業に対する支援をすることは、農業の有する多面的機能が市場競争にそぐわない側面があることから、国民の税金でまかなうことに賛成です。
事実上、農産物輸出国も多様な形で農家支援をおこなっていることからみても、輸出と輸入のバランスをとる必要もあります。
しかし農業支援の措置については透明性を確保することが大前提です。公共事業にかかわる汚職はもっての他ですし、
個々の農家支援に役立つ予算措置を考える必要があります。そのためには、「政策評価」の手法も見直し、地域からの要求を吸い上げ、
消費者の意向も加えそれを予算化する手法を考えるべきでしょう。
5.「輸出国と輸入国の権利義務バランスの回復について」は、食料輸入国が輸入の段階的拡大を義務づけられているのに対し、
輸出国の食料供給の義務が明確ではありません。このようなアンバランスの是正が必要です。このことは、
食料の安全保障の上からも当然のことですが、この問題を政治的な妥協の対象としてはなりません。
6.「途上国への特別な配慮について」については、WTOの加盟国の大半が途上国である以上、先進国側の視点からによるものではなく、
各国のNGOなどの意見をもとにした配慮が必要です。その際に、農産物の輸出促進のために、
途上国が有する資源を収奪しない措置が国際的に必要です。特に、多国籍企業による開発輸出に対する規制が必要です。また、
教育や女性の権利の拡大等への国際支援を重視し、開発途上国の経済的自立を促進することが必要です。
7.「食品の安全性など新たな課題への対応について」は、食品の安全性に関しては独立した課題とし、消費者の基本的権利(知る権利、
選択の権利の保障)を盛り込むことが必要です。特に、GMO(遺伝子組み換え体)などバイオテクノロジー食品については、
予防原則に則った国際的協定づくりを進めることが必要です。表示の義務づけを国際ルールとするよう主張すべきです。また、
食品の安全に関する衛生検疫措置については、各国の自主性を尊重し、国民の健康が守られる水準を確保することが必要です。
8.「国内農業助成に対する規律のあり方」については、それぞれの国の助成政策について、国民に対する透明性を確保した上で、
国内農業の縮小につながることのないよう、配慮すべきです。国内助成合計量(AMS)の削減(「黄」の政策)については、各国の食料・
農業をめぐる事情を配慮し、一律的な削減を行わないよう主張すべきです。特に、輸出を行っていない農産物については、
削減対象からの除外を求めるべきです。また、削減対象としていない「緑」「青」の政策については、引き続き、削減対象外とするとともに、
その政策の範囲は各国の事情によって弾力的な運用を図るよう主張すべきです。さらに、中山間地域等の条件不利地域対策、環境保全型農業への支援、
コメなど国内生産を基本とした基礎的な農産物の経営安定のための制度等は、「緑」「青」の政策として維持するよう主張すべきです。
9.「関税やアクセス約束など国境措置のあり方」では、関税水準については、
国内農業の維持や国民生活に必要な基礎的食料の確保が可能となる水準とするよう主張すべきです。とくに多面的機能と食料安全保障のうえから、
国内生産の維持が重要な作物については、関税引き下げは行わないよう主張すべきです。また、関税水準の上限設定の導入に反対すること、
品目別の関税水準については、一律に一定率の削減をおこなうことなく、各国の自主性を確保するよう主張することが必要です。
10.「輸入急増による国内産業への悪影響を防ぐためのセーフガード措置のあり方」では、輸入量の急増、輸入価格の下落に対し、
関税を課す特別セーフガードを堅持すべきです。また、国内農業の維持が図られるよう、セーフガード措置を積極的に発動すべきです。
11.「輸出競争など輸出国に対する規律のあり方」については、輸出補助金は、最も貿易歪曲的なものであり、その廃止を主張すべきです。また、
現在認められているロールオーバー(輸出補助金未使用分の後年度使用)についても廃止を主張すべきです。さらに、
輸出国の一方的な輸出規制については、制裁措置を明確にするなど、規律を設けるよう主張すべきです。一方、
人道的な立場からの食料援助については、制限を設けないよう主張することや、国際的な食料の安全保障のため、
食料備蓄機構の創設を主張すべきです。
12.「途上国のニーズ・問題に対する配慮のあり方」については、7と同じように主張すべきです。
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今後もこうした見解を国内外の人々に訴え、WTOの体制を変革していかなければならない。
自立をめざす手作り学園「スワラジ学園」
[ 2001年04月04日 レポート ]
橋本明子
来春、八郷に小さな手作りの学校がスタートする。「スワラジ学園」と称し、学園生12名を募集する。
指導にあたる教職員のほうが人数では多くなるだろう。
スワラジとはヒンズー語で、マハトマ・ガンジーがインドの独立を決意して著した著書に使われた言葉で、日本語では、「自治」「自立」
を意味する。歴史をひもとくまでもなく、ガンジーはインドの人々にそれまで失われていた自立の精神にもとづく行動をよびかけ、
それがみごとに結実したのであった。
ひるがえって日本の現実をみてみよう。敗戦ののち56年、工業大国となった日本は経済的には勝者の地位を獲得したかのようにみえるが、
真のスワラジをかちとったとは言い難いのではないか。
お金ともの至上主義にもとづく競争は社会の隅々にまで浸透し、大人も子供も「人」としていかに生きるべきか」を考えずに
「いかに生きれば競争に勝って勝者の生活を送れるか」に全力を傾けている。
この流れのなかでは、「きつい、汚い、危険」のトツプとして農業は一貫して粗末にされてきた。国の政策でも安楽死がもくろまれている。が、
それでいいのだろうか。自然に従い、人として自立した生活をとりもどすには、農業の世界にもう一度目をむけ、
農業がかってもっていた活力をみずからのものとすることが先決ではないか。」
「スワラジ学園」の基本構想は、要約すれば上のような考えを長年温めてきた筧次郎さんがたてたものである。
筧さんはおつれあいの陽子さんと長年八郷で有機農業を営み、「次の世代を守る会」を結成して活動してきた。その著「百姓入門」には、「奪わず、
汚さず、争わず」の考えが詳しく述べられている。
さて、早くから構想されてきた「スワラジ学園」も、具体的なかたちをとるには長い時間が必要であった。
八郷には筧さんの考えに共鳴する人も多かったが、それらの人たちは学園設立に必要なお金とものに恵まれなかったのも事実であった。
が、3年前から筧さんの構想をふくらませて実現にもっていこうというメンバーが現れた。合田さんと野口さんである。合田さんは元編集者で、
東京から八郷へ移って十五年、自らも「筑波山麓ムラ暮らし」を書き、八郷の生活を楽しんできた。「ゆう」
という年1回刊行の八郷町民誌を編集してもいる。合田さんは、住居の一部、飼っている鶏、牛、山羊など、
耕している田畑などを学園の使用に当てることを申し出た。
野口さんは大学の基礎医学の先生で、筑波山の麓に建てたログハウスに住み、その下の田圃を耕している。
人柄も経歴も異なる3人の組合せはユニークである。その3人が学園のこととなると、こまかいことまで、
ていねいに話しあって納得の上できめてきたという。
私と「スワラジ学園」
「スワラジ学園」予定地は、私の住む家から2軒おいた隣りである。牛の鳴き声は風にのって流れて来、合田さんの耕す田圃も畑も、
家の窓から眺められる近さである。「スワラジ学園」の立ち上げのことを私が知ったのは、半年ほど前のことで、筧さんから
「少し手をだしてみませんか」と誘われたのがきっかけであった。
私は自分の経験を振り返ってみた。娘を一人育てたにすぎないが、一人を育てるには愛護する両親のほかに子供をとりまく他の子供、
大人で構成される小社会が必要である。学齢に達すれば、先生やクラスメートへと社会はひろがる。成長につれてその輪がひろがり、
その一つ一つが人格形成に大きな影響を及ぼすのだということを身にしみて知った。また一定の知的達成度を極端に重視する学校教育、
先生自らも管理されているシステム、一つの枠にはめられている息苦しさを、私は娘を通して知った。
もう少しのびのびと楽しくなければと思い、近所の中学生を集めて、少人数の英語教室をはじめた。異文化にふれる楽しさ、
手だてとしてのちがう言葉の成り立ち、それらを子供の知識欲と好奇心に訴えることで、強制するまでもなく、
子供たちはじぶんで勉強を始めだしたのであった。その後、農業に活動の中心を移したが、「スワラジ学園」の計画は、
私にかっての英語教室の経験をよみがえらせた。現在かかえている「減反差し止め裁判」も近く判決がでる。
今まで裁判にかけていた力を他に振り向けることができる。多少とも自分も役にたつならうれしい、私はよろこんで筧さんのお誘いに応じた。
「スワラジ学園」の内容
「スワラジ学園」では、18-19歳位の若者12名を募集して、1年間全寮制で生活を共にする。終了しても資格が取れるとか、
就職の斡旋を受けるとかの世間的なメリットはない。そのかわり、どういう将来を選ぶべきか判断力を身につけ、体力と気力をも養って、
自信をもって巣立てるようにするのである。
基本は自立、自給である。食べ物の主なものは自給する。そのために田圃や畑を耕す。それもできるだけ機械に頼らず体を動かすための簡単な農具、
鍬や鎌を使うこととする。体力をつけること、自然の様々な生き物や、季節の移り変わりもじかに感じ取ることがねらいである。
また、鶏や豚、牛、山羊などの動物を飼い、タンパク質を自給すると同時に技術を学ぶ。収穫した米や大豆で餅を作ったり、味噌を作ったり、
季節毎の加工の技術を身につけながら、食べ回しや保存の知恵を学ぶ。
学科では自分の考えをしっかりまとめるため、作文や討論を重視する。
先人が自立のためにいかに戦ったかという視点から歴史や哲学の学科を重視する。また八郷に住む様々な職業の人たち、
とりわけ古老から手がけてきた数々の技や知恵の体験談を聞き、身につけていく。
さらに八郷に住む専門職---陶芸、彫金、絵画、書道、--の人たちからも、時には実習も交えながら学んでいくことを考えている。このように、
1年間学園生も教師も一体となって、ともに学びあう姿勢をつくりあげ、真摯な人間関係の構築をめざしている。学園生は、寝食のための経費、
教育を受ける謝礼を必要とするが、教育にあたるほとんどの人は無償のボランティアであることも特徴の一つである。
「スワラジ学園」の生活
学園は合田さん提供の地でスタートする。八郷町は筑波山を頂点とする山々に三方を囲まれ、霞ヶ浦に流入する恋瀬川の源流地であり、
水と緑にあふれる町と自負している。東京から80キロメートル、町の主産業は農業である。昔から山では椎茸、丘陵地では畑作、
川べりの平地では米が栽培されてきた。
また有機農業がさかんな町で、最近数年で新しく就農した若いカップルが4組、若者が一人定着した。また、自給生活を送るため、
定年退職後の人たちの移住も目につくようになった。
合田さんの住居は町の真ん中に座る富士山の中腹にあり、右手に筑波山を望み、眼下に集落を見下ろす景観の雄大な場所である。
いまその一角に新しい学園の寄宿棟が、基礎工事にはいった。施工は同じ集落の農家のおじさん、屋根と骨組み工事は千葉県から二人の大工さんが、
ボランティア的にかかわってくれることになった。が、工事は手作り部分を、あえて残すことになっている。このように、
学園の生活はオールラウンドをこなすように計画がすすめられている。
先にも書いたが、食べ物もできる限り自給する。有機農業の米、野菜、卵、肉、自分たちで加工した味噌なども食卓にのぼる。そのうちに、
自分たちでつくる加工品も増えていくだろう。梅が実れば梅干しや梅酒、スモモの時期にはジャムやプラム酒、梨のシロップ漬け、ワイン、
ブルーベリーのジャム、秋の干し柿と、数えあげるだけでも楽しい。
さらに豊かな実りをもたらしてくれるのは米である。春の育苗、田植え、除草、水管理と日が移って、秋の刈り取りは楽しい共同作業である。
餅米は餅にするほか、お赤飯にしたり、はれの日の主役となる。うるち米はふだんの主食のほか粉にして団子やくさもち、たがね餅、
クズ米は麹にしたり家畜の餌にしたりする。籾殻は、燻炭や被覆材に。稲わらは敷き料や堆肥に、と何一つ捨てることなく生かしきることができる。
また、大切なことの一つは体力をつけることである。日々の農作業はもちろんのこと、心がけて野外の学習を大切にし、自然に親しむ機会をつくる。
筑波山にのぼったり、霞ヶ浦に船でこぎ出したり、も楽しみながらの体力作りである。
学園生募集
1.開講日 2002年4月10日。
2.対象者 18歳以上。性別はとわない。
3.募集人員 12人
4.期間 4月から翌3月までの1年間
5.費用 学費60万円、寮費60万円の計120万円・年額
6.入学を希望する理由を文章で提出していただき、本人と面接を行って入学可否を決めます。
「スワラジ学園」は、手作りで心をこめた教育の場を全員で作り上げることをめざすが、研修期間を1年としたのは、
ひとつは季節の変化に対応した自給生活をひととおり体験するには最低1年間が必要だからである。もうひとつは、
高校を卒業したものの進路がきまらない人、在学中でも休学して研修しようとする人の受け入れも考えているからである。「スワラジ学園」
の1年間の経験は、将来どんな道を進むにしても、本人に生きる自信と体力、広い視野を与えるものと確信している。
現在、学園では、建設の資金や資材をひろく募っている。
連絡先は、
茨城県新治郡八郷町須釜838 合田農園内
スワラジ学園設立準備委員会 TEL&FAX0299-42-2240
コーデックス世界行動NGO集会報告
[ 2001年04月01日 レポート ]
遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン
小野南海子
遺伝子組み換え食品の安全評価の世界基準を作る「コーデックス・バイオテクノロジー応用食品特別部会」が、3月25日から29日まで、
千葉県幕張で開かれました。その会議に対して(NO遺伝子組み換え食品)の声を伝えようと結成された「コーデックスNGO行動委員会」
による様々な活動を報告します。実行委員会は、遺伝子組み換え食品いらないキャンペーンを中心に、消費者団体、生協、市民団体が結集し、
提携米ネットワークも参加しました。
まず、会議の前日3月24日、全体集会「止めよう・遺伝子組み換えイネ・NGO集会」が東京池袋の豊島公会堂で開催されました。
昨年から取り組んできた「遺伝子組み換えイネ阻止」の運動に、生活クラブ生協、関西生協連、グリーンコープ連合による
「ストップ遺伝子組み換えイネ生協ネットワーク」の取り組みが加わり、
主食の米への組み換えは何としてでも阻止しようという思いをこめたプログラムになりました。
米を食べているアジアの人々と連帯して反対していこうとフィリピン・タイ・韓国の運動家を招き実情を報告していただきました。タイでは、
組み換え作物の栽培は禁止されているにもかかわらず、政府の役人が無知なため、作付けがされていること、フィリピンでは、国際稲作研究所で、
着着とイネの組み換えが開発されているとのことです。
日本の農業の状況をお聞きしたく招いた、農民作家の薄井清さんは、
長年普及員として猫の目のように変わるといわれた農政に翻弄された農民を見てきただけに、お話はとても興味深いものでした。
また、パント末吉さんによる遺伝子組み換えをテーマにしたパントマイムは好評で、一時会場は笑いの渦でいっぱいとなりました。
ご本人は遺伝子組み換えをテーマにするのは難しいといわれまいたが、運動をもっと楽しくというねらいにはぴったりでした。
「楽しく運動を」の思いは、25日幕張での集会とパレードで実現しました。トウモロコシをあらわす黄色をテーマカラーとして、思い思いの扮装で、
横断幕や旗をたてて、国際会議場の周辺を1時間パレードをしました。たくさんの警察官、
会議場では中からパレードが見えないように黒い防護柵をはりめぐらすなど、過剰反応にはびっくりしました。
次の26日は、幕張で「遺伝子組み換え反対アジア交流会」が開かれました。提携米ネットワークも展示に参加し、
「遺伝子組み換えイネ市民監視センター」のお披露目をしました。会場が遠く一般の人達の参加が少なかったのが残念でしたが、
会議の昼休みに国際消費者機構の代表団を田坂先生がおつれして下さり、今会議で紛糾している問題について説明していただけたのが収穫でした。
30日には、田坂先生と海外の会議参加者をお呼びして、今回のコーデックス会議の内容とその問題点を報告していただきました。