農業基本法の改定の動き始まる
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1998 10.16 山浦康明
首相の諮問機関である「食料・農業・基本問題調査会」は去る9月17日、最終答申を提出した。今後は年内に「政策プログラム」 を策定し来年の通常国会に法案を提出、というスケジュールが予定されている。
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答申内容を見ると、第Ⅰ部総論(「基本的考え方」)では、中間報告と同様に、農業の持つ多面的な機能をふまえて、
世界の食料不足にも対応するため、農業をとりまく厳しい環境の中で、あえて食料の安定的供給、農村地域社会の維持、
自然循環機能を十分発揮できるような農法による地域農業の発展の重要性を力説している。
しかしこれに反して第Ⅱ部各論(「具体的政策」)では、(1)「総合食料安全保障」において、「国内農業生産を基本にする」
といいながらも食料自給率の設定には二の足をふみ、消費者・食品産業界・農業生産者に責任をおしつけ、
政府自らが国産の安全な食料で国民の健康な食生活を確保しようとする政策責任者たる役割を放棄している。
ここでは遺伝子組み換えの表示の必要性は述べながらも、HACCPを安易に導入する、米の減反を当面認めるなどの問題もある。(2)
「農業の担い手」では、農業生産法人に株式会社形態の追加を認め、農業経営の規模拡大・生産性向上を全面に押し出し、
家族的な有畜複合経営が有機農業の主体としてはたす役割を等閑視しているのは問題である。株式会社問題では、出資制限や譲渡制限を設けても、
農地法が形骸化され企業が資本力を背景に実質的支配する可能性もある。(3)「農業・農村の有する多面的機能の十分な発揮」では、
農村の計画的土地利用の提案、中山間地に対する直接所得保障、都市農業の発展などを述べるが、その具体化の方法が乏しい。
これまでの農業予算のばらまき手法とどう決別するのかも明示すべきである。
その他、答申では、農協などの見直し、行政手法・財政措置の点検・評価、政策情報の公開、国と地方との役割の見直しなどにも、ふれているが、
その表現は抽象的なものにとどまる。
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総じて本答申は調査会のうち生産者・消費者側委員と経済界側委員との対立を残したまま、玉虫色にまとめあげたという性格が強く、今後の
「政策プログラム」、法案化の中身をどう作るのかにかかっている。
この最終答申が出されて以来、農水省と自民党は新たな農業基本法関連の法案提出に向けて既定の筋書きを遂行するかのように動き始めた。
9月24日の参議院農林水産委員会で農水省は、国内生産力の強化、市場原理に基づいて実需者(加工業者など食品産業)のニーズに答える必要性、
農業生産法人としての株式会社が土地を取得することを容認した。
9月25日の自民党農業基本政策小委員会に農水省は食糧安全保障政策を具体化するための基本方針を示した。「食料の安定供給の確保」では、1)
農地の流動化、法人化の推進、2)加工業者向けのコスト低減などを示した。「食料自給率の目標設定」では、1)
2010年程度までに達成する目標を掲げる、2)品目ごとに生産努力目標を作る、3)麦、大豆、飼料作物の生産を拡大する、4)食生活を改善、
品目ごとに望ましい消費量を作る、とした。その他、危機管理の手法の策定として生産、流通の管理を挙げている。
9月29日の自民党甘味資源作物等価格小委員会に、農水省はテンサイ、サトウキビの価格政策の見直しの方針を示した。
調査会答申の市場原理を価格政策に導入するもので、1)価格競争力の回復、2)市場原理の活用と担い手の経営安定、3)
テンサイ原料糖の在庫べらしの3項目につき自民党と調整に入る。
その後10月8日にはサトウキビを除いた甘味資源作物と大豆の今年産価格について最終調整され、
生産者価格は引き下げるものの関連対策という名の補助金で農家の手取りを確保することになった。これにはJAの要請が大きく影響したと思われる。
9月30日の自民党の農業基本政策小委員会に、農水省は「新たな食品流通政策」を示した。政策の柱は、1)「食品表示制度」として、
原産国表示の拡大、有機食品の検査・認証、遺伝子組み換え食品の表示ルール作り、2)「食生活を見直す国民運動」、を挙げているが、3)
「食品の安全性確保」では、路地野菜にも衛生管理ガイドラインを策定し、流通段階でも生鮮食品の取扱ガイドラインを策定するなど、
導入されたHACCP(危害分析管理点)とあいまって国家管理体制を強調している。4)「食品産業と農業の連携」では、
残ぱんを飼料や肥料に利用するリサイクルにもふれているものの、国内農産物の需要拡大のために新製品の共同開発や販路拡大、
地域内流通の促進を示すなど、食品産業の利益拡大がはかられようとしている。
10月1日の自民党農業基本政策小委員会に、農水省は農地確保・流動化政策の基本方針を示した。1)「優良農地の確保と有効利用」では、
国が基本方針を策定し、自給率目標達成に必要な作付面積などを示す、農振法を改正して計画的な土地利用を徹底するとしている。また、
耕作放棄防止対策として中山間地への直接支払いを検討するとしている。2)「農地の流動化の推進」では、市町村ごとに流動化の目標を設定し、
農地保有合理化法人を通じて規模拡大する農家に機械・施設をリースする、集落営農の推進などを示している。
10月9日の自民党農業基本小委員会に、農水省は農政改革の一環として、農村整備の基本方針を示した。
「計画的な土地利用と総合的農村整備の推進」と称して農村部での乱開発に歯止めがかけられかが問題である。グリーン・
ツーリズムの推進を提言しているがその具体化は見守る必要がある。
10月14日の自民党農業基本政策小委員会に、農水省は食料自給率向上に向けた国産農産物の生産方向を示した。
あくまでも食品業者が引き取りうる価格や品質といったものさしで、規模拡大、生産性向上による「売れる米の生産」、「需要にマッチした麦づくり」
、「売れる大豆づくり」を強調する。農村を支える家族農業をいかに維持するかを考えなければならない。
ただし畜産における飼料自給率の向上のための、畑・水田での飼料生産拡大、家畜ふん尿の土地還元、日本型放牧、
林地の放牧利用などの提言は注目される。
しかし、このように農水省主導で関連法案が作られようとしており、
また来年度の減反面積も今年と同程度とするとの食糧庁長官の方針も提示されている(10月6日)現在、
野党を含め私たちの声を法案や農業政策にいかに反映させるかが緊急の課題となっている。(山浦 記)