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論点整理 新担い手政策の問題点

[ 2006年02月17日 ]

論点整理 新担い手政策の問題点

提携米ネットワーク

提携米ネットワークとして、新農政、担い手政策に対する問題提起と考え方をまとめました。
議論の一助となれば幸いです。

1 総論
農家ひとりひとりが創意工夫し、自立する農業のために必要な政策は、貿易措置(関税措置)と個別農家への必要に応じた直接支払い (環境直接支払い)のみでよい。
それ以上の政策措置は農業構造の変化をかえって遅らせ、政策のための無駄な税金の投入となる。
担い手集中政策、集落営農誘導は、強制ではないとしているが、それにともなう助成、補助金のありかたによって、本来の農業自立ではなく、 地域社会に対する強制圧力となり、個人の経営の自由を奪い、かえって農村の地域社会を崩壊させる原因ともなる。 戦時中の大政翼賛会的な発想での農業経営への国家介入であり、危険な思想である。
国家による農業経営への直接介入と、地域社会の慣習、人的なつながりをみこした政策(補助、助成)は中止し、新規就農や農業環境の整備、 輸入に対する貿易措置、環境保全と農業生産の調和など農業や社会が必要とする政策に集中することが必要である。

2 各論(1) 集落営農
集落営農を、地域への補助金という形で強制・誘導することは、民主主義に対する挑戦である。そもそも、農業にはふたつの側面があり、 個別経営体として家族、法人といったそれぞれの形での生産・経営を行う私的領域と、水路・水管理、 共有地などの地域社会共同体として維持管理を行う公的領域がある。
今回の集落営農誘導政策は、農業の公的領域での合意形成(環境保全政策、地域協定等)のみならず、私的領域の生産・ 経営にまで国家が立ち入り、集落営農を行わなければ地域社会、地域農業が成り立たないと脅迫している。しかし、本来、生産・ 経営部分はそれぞれの経営体が考え、選択する自由をもつ部分であり、集落営農(経営体の統合)を行うのも、個人として経営を維持するのも、 小グループで法人化するのも、また、極端には廃業するのも自由である。この部分を、農業の公的領域と混同し、「農業を守るため」 との名目で集落営農を誘導するのは民主国家の行うことではない。
農業は、ひとつの産業であり、経営体の自己実現の場である。
集落営農誘導政策は、自立する農業者に対し、その土地を奪い、アイディアを奪い、認定農業者になれば重荷を背負わせ、 反対すれば村八分にする政策である。

3 各論(2) 担い手政策
集落営農とならび、農地集約のためとして担い手への集中政策がとられているが、これもまた、 集落営農と同様に農業の私的領域への国家介入である。農業を、経営として拡大していきたい経営体(個人、法人)は、自ら地域を説得し、 農地の貸借、買い入れを行うであろう。それを適切に判断し、農地を農地として有効に利用することさえ政策として担保されればよいのであって、 その経営体に農地を貸す、あるいは売るかどうかは、その経営体の信頼(信用)の問題である。この問題を単純化し、 集落営農に対する担い手の位置づけを行うことは、担い手となる経営体・経営者の自立を阻害し、農業の産業としての成長を妨げるものとなる。
国家が、国策として産業を選択し、その成長を管理誘導する手法は、日本が戦前より資本投下型の工業手法として鉄鋼、自動車、 半導体などで行ない、ある意味で成功してきた手法であるが、こと農業に関しては、過去の膨大な国家予算投入をしても成功せず、 むしろ農業経営体の自立を妨げ、農業を今のように弱体してきた最大の理由となっている。
担い手集中政策は過去にも行ってきたが、その担い手政策こそが、 本来もっとも国策に合致すべき大規模農業を志向する農業者さえも経営を困難にさせてきた。それは、 常に経営に対して国家が介入してきたからである。担い手要件を並べたて、担い手にならなければ融資がうけにくくし、 担い手になれば要件にそった経営を迫られる。それでは、創意工夫した自立的な農業経営などできないではないか。
戦後の米の生産調整(減反政策)を多額の国家予算をもって行い、その結果、農家が自立意識を失い、経営体としてのモラルを低下させ、 農地の固定化(流動化阻害)や耕作放棄を招き、その上で、需給を狂わせ、米に対する消費者の信頼を失わせてきた。 そしてついにその政策が破綻し、食糧庁が解体されたにもかかわらず、今もまだ、 自主的な生産調整といいながら事実上の国家指導型減反政策を続けている。今回の担い手要件にふたたびこれら「自主的な生産調整」 が取り入れられていることを見れば、この担い手もまた、手足を縛られ、 創意工夫ある自由な経営が許されないことは火を見るよりも明らかである。
経営体に対する国家介入は、行うべきではない。

4 各論(3) 環境政策とインフラ整備
では、農業政策はなにをすればいいのか。国内に対しては、持続的な農業生産ができるための環境政策とインフラの整備である。
環境政策に関しては、持続的な農業生産のための環境負荷低減技術の支援、本来の環境保全のための地域協定と、 その個別作業に対する直接支払い、農地の非農地使用への制限、耕作放棄地等に対して農地として維持するための土地流動化支援等である。
インフラ整備に関しては、環境政策とあわせ持続的な農業生産、環境保全のための公共事業、新規就農に対する低利融資、 税制優遇などの産業としての導入策、あるいは、廃業にともなう農地の保全(と農地としての流動化)のための政策、 あるいは小規模経営体に対する必要に応じた融資保証等の最低限の私的領域政策が望まれる。

5 各論(4) 貿易と国境措置
むしろ、国家に求められる最大の農業政策は貿易と国境措置である。WTO体制とFTA政策の推進によりにより、世界および地域の環境、文化、 社会のありようを崩壊させるような自由貿易体制がとられつつある。無制限な食糧貿易は、国家の自立や安全保障をゆるがし、 自然環境を崩壊させ、食料の安定供給に対し潜在的な危機と不安を増大させる。先進国最大の食料輸入国=外国依存国である日本は、輸出国の水、 土といった環境資源、労働資源を奪い、貧困層の食料へのアクセス力(調達力)を奪うことによって食糧供給を成り立たせている。それは、 国家として恥ずべき行為であり、先進国として、持続的な社会、環境を維持発展させる上でも、できる限りの食料自給率向上を行い、 他国への環境負荷等をさけるべきである。
そのために、貿易に対する国境措置は必要である。WTO・FTA体制の中で、世界を説得し、食料の無制限の自由貿易をくい止め、同時に、 最大限の国境措置を行う、これこそが我が国の長期的な自立と世界への責任のとりようである。

付記:WTO農業交渉は2006年4月のモダリティ確立、7月の譲許表提出といったスケジュールが組まれている。 農産物輸出国に都合のよい、関税引き下げ案、輸出補助金削減案、などを認めるべきではない。

 

WTO農業交渉の現状 山浦康明 日本消費者連盟

[ 2005年12月31日 ]

WTO農業交渉の現状
山浦康明 日本消費者連盟

□ 12月13日から18日にかけて行われるWTO香港閣僚会議に向けて、各国の農業交渉への取り組みが大詰めを迎えている。 農業分野が他の分野の交渉のリード役ともなるだけに、 香港会議で各国閣僚の合意文書が採択されるかどうかは次のような論点での合意の行方にかかっている。
 関税引き下げなど「市場アクセス分野」では「一般品目」について階層を4つにするなどとし、 また階層内の具体的な関税引き下げ方式を途上国、輸入国、輸出国ごとに決定すること、「重要品目」 という枠を設け関税削減の例外とし関税の緩やかな削減と関税割当の組み合わせで対処することついて議論は続いている。また、 上限関税を設定する提案をG20の途上国グループ(インド、ブラジルなど)が出し、米国、EUも賛同し始めた。 日本は輸入国として反対している。
 国内補助金分野では、(農家が意欲を出し生産量が拡大する)生産を刺激する補助金について、 農業補助金が多い先進国とほとんど出していない途上国・ケアンズの主張が対立している。ウルグアイ・ラウンドの約束水準を守っている日本 (AMSで18%まで削減)、64%まで削減したEU、75%までしか削減していない米国などの状況をふまえ、日本は「黄色の政策」 について先進国を3階層に分けた上で例えば米国は50%まで削減すべきだ、などと主張している。「青の政策」 (生産調整を実施している作物の直接支払い)の強化については米国の柔軟性を示さないかたくなな態度が目立っている。 輸出補助金をめぐっては、04年の枠組み合意で、期日を設けて撤廃することや、輸出信用、輸出国家貿易、 食料援助も輸出補助金的な部分は撤廃することは合意されている。
 今後、10月4~7日に事務レベル会合、10日に少数国貿易担当会合、中旬に非公式閣僚会議、17~21日事務レベル農業交渉、19、 20日一般理事会、11月中旬閣僚会議文書案(合意原案)をラミー事務局長が提示する見通しが立てられている。
 農業交渉をめぐる全体構図として日本、韓国などの「G10」(農業の多面的機能を重視するグループ)、「EU」、「米国」、 実質的にオーストラリアのみとなった「ケアンズ・グループ」(農産物輸出国グループ)、ブラジル・インド・中国などがリードする「G20」、 インドネシア・トルコなどの「G33」(途上国の特別扱いに関心が高いグループ)、多くの途上国がグループを作っている「G90」 などの対立が続いている。また昨今リーダーシップを発揮し始めた「FIPs」(米国、EU、ブラジル、インド、豪州)の動きも目立っている。
□ 市民はこの閣僚会議に対して、現地香港には香港ピープルズ・アライアンス(HKPK)も作られ、日本の「脱WTO草の根キャンペーン」 をはじめとする市民団体、農民団体、労働団体なども、WTO閣僚会議への対抗運動を行う。12月10日から18日にかけて、 デモンストレーション、シンポジウム、ワークショップなどのプログラムの企画が進んでいる。ふーどアクション21、 日本消費者連盟としても12日から18日まで、現地でのNGO行動に参加し、閣僚会議の傍聴、NGO会議などに参加する。

 

提携米通信24号  2005年10月10日発行

 

米国産牛肉輸入再開とBSE問題 山浦康明 日本消費者連盟

[ 2005年12月31日 ]

米国産牛肉輸入再開とBSE問題
山浦康明 日本消費者連盟

□ 米国のBSE発生と日本への輸出再開問題
 2005年7月26日、日本消費者連盟も含む市民団体が、東京の憲政記念館講堂に約200名の参加者を得て「大丈夫? アメリカ産牛肉の輸入」と題する日米公開討論会を行った。発言者は、在日米国大使館のクレイ・ハミルトン主席農務官、 食品安全委員会の金子清俊プリオン専門調査会座長代理(東京医科大学教授)、鳥取県畜産農協の鎌谷一也組合長(畜産農家)、 日消連副代表運営委員の山浦康明(明治大学兼任講師)で、コーディネーターは食の安全・監視市民委員会の三宅征子さんが務めた。 米国のBSE(牛海綿状脳症)対策について、日本側と米国側で次のような討議がかわされた。

(1)日本側は米国の2頭目のBSE牛につき、その感染経路、同居牛の範囲とその処理結果など、詳細なデータを求めた。米国側は、 2005年6月10日の米国農務省(USDA)発表以上のデータしか示さず「できるだけ早く追加情報を提供する」と述べるにとどまった。 日本の食品安全委員会の米国政府への照会や各種情報をもとにするとこの2頭目のBSEをめぐっては次のような状況である。 2004年6月のBSE1次検査(エライザ法)で擬陽性となったものの、その後の確認検査(IHC・免疫組織化学的検査) で陰性とされた3頭の牛について、消費者団体の指摘を受け米国政府内の農務省監査局(OIG)が再調査を要請したため、 USDAが2005年6月にウエスタンブロット法(WB)で再検査したところ、この3頭のうち1頭が陽性と確認された。 この2頭目のBSE牛はテキサス州生まれで約12才、同じ群れで飼育されていた67頭はBSE検査では陰性であった。 しかしどのような飼料を与えてきたのかについては不明であり、厳しい規制前の肉骨粉がその原因であるとすれば、 この牛以外にもBSEの感畜はいるだろうと考えるのが自然である。 こうした情報については米国側は顧客たる日本の消費者に早急に情報提供するほうが信頼を得られるにもかかわらず、 そうした姿勢を見せていない。

(2)次に日本側は「米国のサーベイランス(BSE対策の効果の確認を目的とする抜き取り検査)の方法を全頭検査のスクリーニング (篩い分けをして陽性牛を市場へ出さない措置)へと転換すべきだ」と米国側に質した。
 2頭目のBSEの確認をめぐる混乱した状況からも、検査対象の牛をリスク牛ばかりに限定することは間違っており、 対象牛のサンプリングも公正に行われているのか疑問だからでる。米国のサーベイランスの目的は米国が清浄国であること、 米国のBSE対策に欠陥がないことを証明するものと位置づけられていたが2頭目のBSE感染牛も確認された現在その思惑はもはやはずれた。
 また確定検査方法もIHCだけでは不十分であり、WBも併用する必要がある。金子清俊氏も、「日本での若齢牛のBSE診断もふまえて、 英国のような高リスク国モデルではなく、米国・日本・カナダのような低リスク国にふさわしい検査システムを用いるべきだ」、と強調した。
 これに対して米国側は、「90年からBSE検査を実施しており、また対象を04年37.5万頭へ拡大した」と釈明したが、 約1億頭の飼養頭数(年3千3百50万頭のと畜頭数)に対してのべ41万頭と、わずかな率の検査を行っているだけである。 そして米国政府はBSE対策はSRMの除去こそが重要だと主張した。

(3)日本側は、「SRM(特定危険部位)の除去も30ヶ月齢以上のみであり、若齢の牛からは除去していない、 牛肉骨粉は牛の飼料へ利用することを禁止するのみで、豚や鶏への給餌が行われており、交差汚染の可能性がある」、 と米国のずさんさを指摘した。
 米国側は「OIE(国際獣疫事務局)の国際基準に沿った最善の方法をとっている」と釈明するに留まった。このSRMの除去に関しては、 2004年1月から2005年5月までに1036件の違反事例があったことを米国の市民団体パブリックシティズンの指摘により米国政府は認めた。 SRMの除去の実効性もままならないようでは、米国側の説明は納得力を持ち得ない。

(4)この討議では生産者が、日本でのBSE対策に生産者として取り組んできた苦労をまじえて、 「なぜ米国は全頭検査やトレーサビリティを行わないのか」と米国側に迫った。しかし米国側は「米国のBSE対策は有効に機能している」 として、「BSE対策にはSRMの除去が重要だ」と主張するばかりでした。 当日米国側が配布した新聞広告もOIEの総会結果を歪曲して利用する始末であった。

(5)米国側は建前論を繰り返すのみで、日本向け牛肉・内臓の安全性、vCJD問題を含めBSE対策の実効性の保証はない。 議会で安全規制のルールが立法化されても、改めて政策の実施ルールを決定し、予算措置を確定しなければならず、 実効性が発揮されるまでに数年を要することもある。また飼料規制の点でも1997年から実施されたと米国政府が強調する法規制も、肉骨粉、 血粉を含む餌の袋の表示に「牛など反芻動物肉骨粉が含まれている餌は牛などに与えないように」という表示を明記させるだけであり、 農家がそれを遵守しているかどうかは不明である。 牛の肉骨粉が鶏や豚の餌に含まれておりそれが交差汚染をもたらすおそれがあり肉骨粉を製造し続ける米国の危険性は高いといえる。

(6)日本側は2005年8月2日、 米国のジョハンズ農務長官と在日米国大使館のハミルトン主席農務官に再質問と意見を提出しそれに対する回答書が同年8月22日に送られてきた。 米国側は、「BSE検査はあくまでもハイリスク牛を中心とするサーベイランスでよい。 全頭検査は消費者に誤った安心感を与えるので実施しない。 牛の肉骨粉による交差汚染については適切な清浄プロセスを実行することを事業者に義務付けているので問題ない。日本向けの米国産牛肉・ 内臓製品はA40という格付けと輸出証明プログラムにより保証される。」などと、自分に都合の良い説明と、 制度上の建前を繰り返すのみである。鶏の飼料には牛の肉骨粉、血粉などが使われており、 鶏舎から出される鶏糞や鶏の食べ残した飼料などは牛の餌となるサイクルも考えられ交差汚染の可能性は高い。また検査方法、 肉質判別の作業も政府の監視がいきわたるわけではなく建前どおりに行われる保証はない。

(7)日本の食品安全委員会のプリオン専門調査会では2005年5月24日に政府諮問「現在の米国・ カナダの国内規制及び日本向け輸出プログラムにより管理された米国・カナダから輸入される牛肉及び牛の内臓を食品として摂取する場合と、 わが国でと殺解体して流通している牛肉及び内臓を食品として摂取する場合のBSEに関するリスクの同等性」を受けた。 プリオン専門調査会は5月31日、6月21日、7月14日、8月1日、8月24日、9月12日に会合を開き、答申案をまとめ始めた。 9月12日には「答申案たたき台」を作成し、米国産牛肉の安全性諮問については、厚労省農水省など管理部門が、 米国でのBSE対策の実効性について責任を持つこと、管理措置の可否を問わないことなどを前提として、文章化を開始した。 その後9月26日にも会合を開いたが、委員から慎重を期すようにとのコメントも出され、10月以降の審議に待つことになった。 次回は10月4日に開かれる。
 答申書案たたき台の内容は生体牛のリスクと食肉のリスクに分けて検討し、定性的評価を中心とし、定量的評価も用いるというものである。 生体牛のリスクについては生体牛のBSEプリオンの蓄積度を検討した。英国などからの生体牛の輸入実績、肉骨粉、 動物性油脂の輸入実績に関して米国と日本の比較をおこなっている。
  食肉のリスクについては食肉のBSE汚染度を検討する。すなわちと畜検査、と畜場でのBSE検査、高リスク牛の排除、 スタンニング、ピッシング、SRMの除去、せき随除去・枝肉洗浄後の確認、手順・記録、トレーサビリティなどの項目につき、 米国と日本の状況の比較検討を行っている。
 この答申書は、定量的評価を、様々な仮定を前提としておこなったとしても、 米国における牛肉生産の実態をふまえて米国のBSE対策の実効性が確認できなければ、 定性的評価を中心として言葉によって日米間のリスク評価の比較は空虚なものにおわるだろう。 今後日米間の政治日程に合せて食品安全委員会が安易に答申をすることがあれば、 その科学的判断を独立して行うと自認する立場は崩壊することとなる。

□ 食の安全の確保のために
 BSE問題は近代的な畜産のあり方と深く結びついている。 すなわち、本来草食の反芻動物である牛に肉骨粉を与え、フィードロットで人工的に肥育し、 また成長ホルモン剤を使用するような効率優先の大量生産の畜産のあり方が、BSE発生の原因の1つであろう。 また米国においてはレンダリング業者が大きな力を発揮し、肉骨粉、血粉を製造し続けており、生産・ 流通のあり方が大きくこの問題にかかわっている。
 牛肉の安全性の確保のためにはこうした状況そのものを見直す必要がある。 その際には動物の生産には自然の摂理を大きく変えてしまう効率優先の考え方を用いないこと、 動物の福祉という考え方を尊重することが必要である。
 また社会的にみても各国の食料自立を尊重することが必要である。日米間での牛肉輸入再開問題についてみれば、 米国の食肉産業の政治的圧力によって、日本市場への牛肉輸出が再開することは日本の畜産のあり方をゆがめ、BSEのリスクを高め、 総じて日本の農業全体に影響を及ぼすことになる。
 BSE対策についてみれば、現在の日本が行っている全頭検査、全頭からのSRMの除去、フィードバン、 トレーサビリティなどの厳しいBSE対策は、BSEの拡大防止と封じ込め、BSE研究にとって極めて有効であろう。 こうした対策を国際的に広げていくことこそが求められるのである。


提携米通信24号  2005年10月10日発行

 

コーデックスバイテク部会開かれる(GM魚)  山浦康明 日本消費者連盟

[ 2005年12月31日 ]

コーデックスバイテク部会開かれる(GM魚) 
山浦康明 日本消費者連盟


 9月19日から23日まで、千葉・幕張メッセの会議場でコーデックス委員会の「バイオテクノロジー応用食品特別部会」が開かれました。 日本が議長国で参加国は50、WHOなどの国際機関が4団体、産業界が10団体、NGO(日消連もCIメンバーとして参加)が5団体で、 参加者は204名にのぼりました。開催費用は日本政府持ちで、途上国の参加にはFAOからの基金が活用されました。 こうしたたくさんのお金を使って何を決めようとしたのでしょうか。
 議題の中心は「GM食品に対する基準、ガイドラインその他のテキストの検討と作成」で、 05年から08年にかけて新たなGM食品を検討しようというものです。
 前回03年までのバイテク部会では、吉倉宏議長のもとで、GM食品のリスク分析の原則、 GM植物と微生物由来食品の安全性評価の実施方法に関するガイドラインが採択されました。日本でもこの「原則」「ガイドライン」に基づいて、 食品安全委員会が、遺伝子組み換え食品をどんどんと承認してきました。 組み換え遺伝子の掛け合わせについても世界に先駆けて承認してきました。
 今回吉倉議長は最初に「遺伝子組み換え食品が途上国の人々の栄養改善に役立つ」とか「食料増産に寄与する」、 といったメリット面ばかりを強調し、 第2世代の遺伝子組み換え食品や遺伝子組み換え動物をも市場化するためのガイドラインを作ろうというのです。
 23日までに、新たなGM食品に関する4年間の討議対象が決められました。まずは遺伝子組み換え動物です。 栄養を強化したGM食品や未承認のGMOの混入を認めようとする議題に比べれば、市場化目前のGM魚を規制する必要があり、 その安全性評価を動物に即して慎重に行う手続きが盛り込める可能性があるということから、審議対象とするのはやむをえません。 GMOを推進しようとする米国・カナダ・オーストラリアやGMO開発企業ばかりでなく、 慎重な立場からEUやCIなどNGOも議題とすることには賛成しました。ただこれを討議するにあたっては、食品の安全性の側面ばかりでなく、 魚が養殖場から外界に逃げ出したりすることから、生物多様性を侵害する環境破壊の問題を取り上げたり、動物を人間が改変することから、 懸念される宗教・倫理面の問題など「他の正当な要因(OLFs)」と呼ばれる側面を検討する必要があります。これから作業部会での討議 (06年2月~4月日本で開催)を行うに当たっては、NGOの強力な主張でできた討議文書に盛り込まれたOLFsを慎重に議論し、 環境面などを評価するガイドラインを作る必要があります。
 次回のバイテク部会(06年11月27日、幕張)では他に、「栄養が強化されたGM植物由来食品」 も取り上げられることになってしまいました。しかし、日本政府が取り上げたかった、「複数の遺伝子組み換えや交配で生じるGMO(スタック・ ジーン)」や、「未承認のGMOの意図しない混入を認める基準作り」などの議題は優先順位では低くなりました。
 これからGMOの質的・量的拡大が始まらないように監視を強める必要があります。

提携米通信24号  2005年10月10日発行

 

WTO/FTA問題への取り組み

[ 2005年09月17日 ]

WTO/FTA問題への取り組み 
山浦康明 日本消費者連盟(提携米通信05年6月号より)

 日本消費者連盟も参加している「脱WTO草の根キャンペーン」 では今年の12月に開かれるWTO香港閣僚会議やアジア諸国と日本が交渉しているFTAに対して次のような理由から反対運動に取り組んでいます。
 先進国でも途上国でも、民衆のくらしの足元に激震が走っています。この10年で一挙に貧富の差が拡大し、働く場が倒産で失われ、 農民が立ち往生し、商店にはシャッターが下り、働き口がパート・非常勤といった非正規の形しかない状況です。 その原因を探っていくと市場競争を地球規模に拡げるいまの経済のあり方に行き着きます。
 しかし、この様なグローバル化では、地球の未来はないという声も高まっています。実際、1995年設立されたWTO(世界貿易機関)は、 先進国のための「自由」貿易をすすめる機関であるとして、WTO閣僚会議開催地には、世界中から労働者、農民、先住民、 NGOが何万人も集まって抗議行動を展開する中、南北の対立が解消されず、閣僚会議は過去2回も失敗しています。
 そのために今、このグローバル化をいっそう強め、促進する動きも加速しています。昨年夏のWTO一般理事会での交渉の大枠合意を受け、 眠っていたWTO交渉が動き出したのです。今年12月ホンコンで開かれるWTO第6回閣僚会議の成功に向け、 非公式の交渉が世界各地で急速に進み、来たる7月・10月にはジュネーブで一般理事会が開催される予定です。
 一方で、日本を含め多くの国では、2国間・地域間FTA(自由貿易協定)も進んでいます。WTO交渉では決めにくい投資・サービスの自由化や、 投資保護のために相手国の労働法制や環境基準は非関税障壁であり、改悪するといったことも2国間で決めてしまうのです。例えば、 メキシコやフィリピンとのFTAでは、ビジネス環境整備委員会設置が盛り込まれ、メキシコでは現地日系企業団体がそこに参加して、 メキシコの労働条件にも口をはさんでいます。韓国のソウル・ジャパンクラブも日韓FTA交渉での非関税措置検討事項として、 退職金規程の改悪などを要求しています。日本企業撤退を脅しに、相手国政府を民衆の利害に逆らうように動かしていく内容のあるFTAは、 絶対に許されません。
 こうした自由貿易の行き着く先に現れる世界は、激烈な競争と格差が支配する社会です。世界を、アジアを、 日本を巻き込んで進むこの現実にどう立ち向かうか。「脱WTO草の根キャンペーン」では7月26日に東京・文京シビックセンターでタイ、 ホンコンの社会運動の現場で活動するゲストを招き、WTO/FTAがもたらす現実と、 それに対する私たちの運動を語り合うシンポジウムを開きます。
 またその後、以下のようなスケジュールでWTO/FTA問題に取り組みます。
・7月27日から29日WTO一般理事会を注視する。
・8月から9月にかけては、韓国の労働者・農民活動家を招いて日本各地で、WTO/FTAを問う集会や行動を行います。「WTO/ FTAを問う全国連鎖行動」
・9月2日、3日には東京で「第2回北東アジア消費者対話」が開かれます(消団連主催)。この会議には、韓国、中国、台湾、香港、 モンゴルなどの消費者団体代表が参加する予定であり、次の2つの目的が掲げられ討議内容を企画中です。 北東アジア地域における消費者団体代表者の能力開発、消費者団体代表者が関心をよせる現代の問題についての情報交換です。 日本消費者連盟としては、食の安全、貿易問題などについてこの会合で問題提起をしたいと思っています。
 その後も次のような活動が予定されています。
・9月14日から16日国連MDGサミットにおける世界の貧困問題への取り組みに注文をつける。
・9月19日から23日まで千葉・幕張メッセで開かれる、コーデックス委員会バイオテクノロジー特別部会を傍聴し、日本政府の言動を監視する。 またオブザーバー参加する国際消費者機構(CI)などを通して日本の消費者の懸念を会議に反映させる。
・10月19日20日、12月1日2日に行われるWTO一般理事会を注視する。
・11月18日から19日に韓国・釜山で開かれるAPEC会議を注視する。
・12月13日から18日まで香港で行われる第6回WTO閣僚会議に対して監視活動をおこない、 またNGOの連絡組織として今回結成されたHKPA(香港ピープル・アライアンス)参加メンバーとして活動する。


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