2004年5月 説明会報告 全農よどこへいく 花粉症予防の遺伝子組み換えイネ、隔離ほ場栽培実施へ
説明会報告
全農よどこへいく
花粉症予防の遺伝子組み換えイネ、隔離ほ場栽培実施へ
提携米ネットワーク・
遺伝子組み換えイネ監視市民センター
牧下圭貴
2004.5.9
全農(全国農業協同組合連合会)は、2004年5月9日(土)に、神奈川県平塚市の全農営農・技術センターで、
同所で行う遺伝子組み換えイネの隔離ほ場試験について説明会を行った。主催は、全農の営農総合対策部で、
ゴールデンウィーク直前の4月26日にホームページで公開し、連休明けには説明会を実施するというあわただしいものであった。
それにもかかわらず、神奈川県下の生協、消費者団体、近隣の生産者、生産者団体、
全国の遺伝子組み換えに反対する団体など120人が説明会に詰めかけた。
説明会は、営農総合対策部長の高田氏、営農・技術センター長の川名氏(司会)、技術センターの粉川氏、遠藤氏、それに、
生物資源研究所新生物資源創出研究グループ遺伝子操作研究チーム長の高岩氏により行われた。説明は、主に全農側が行ったものの、内容は、
生物資源研究所の資料そのままである。
全農は、冒頭「遺伝子組換えによる健康機能性稲の開発への取組みについて」とする文書を読み上げた。
遺伝子組換えによる健康機能性稲の開発への取組みについて
平成16年5月
JA全農は、平成12年度から国の「新事業創出研究開発事業」に参画し、独立行政府法人農業生物資源研究所等と共同して健康機能性稲
(スギ花粉症緩和米など)の開発に取り組んできましたが、平成16年度、これまでの閉鎖系・非閉鎖系温室での試験結果をもとに、本会営農・
技術センター内の隔離ほ場で環境に対する安全性試験を行うことになり、2月に農水省および環境省に承認申請をしました。
遺伝子組換え技術には、食糧の増産、低農薬栽培、健康機能性の付加などが期待されており、今後、
国内における研究開発が進むことが予想されています。
しかし、一方では、遺伝子組換えに対してその安全性への懸念から反対する声もあります。
このような情勢のなかでJA全農は、遺伝子組換えのない安全・安心な国内農産物を取扱う(生産・販売)ことを基本としながら、
将来に大きな可能性をもった遺伝子組換え技術を適正に評価・判断するとともに、遺伝子組換え作物については、
その安全性を見極めたいと考えています。特に、健康機能性を付加した農産物について大きな関心を持っています。そのため、
スギ花粉症緩和米の開発に参画し、環境に対する安全性の試験に取り組んできました。
JA全農は、今後とも、消費者・生産者の危惧する「食品としての安全性」、および「環境に対する安全性」
の見極めを第一義として開発に取り組むと同時に、遺伝子組換え技術を適正に評価・判断するために組換えに関する技術・
情報の蓄積につとめていきたいと考えています。 以上
質疑は紛糾を極めた。
それは、ひとつには、技術的な質問を生物資源研究所の高岩氏に丸投げであったことによる。高岩氏の立場をまとめると、
いかなる問題も乗り越え、花粉症に苦しむ人を助け、国家の医療財政負担を助け、世に出すというものである。それを前提に、
ここまでの安全性は確保しており、それ以上の知見は不要であり、実際に目的とするペプチド(アミノ酸の集合体)以外のタンパク質の増加、
減少が起こっているにもかかわらず、すべてを知ることは「神でない限り」分からないとして実験の正当性ばかりを強調した。
質問者のひとりは、「伝えたいことだけを伝えられ、分からないこと、分かっていないことなどは伝えられない説明会は、説明会ではない」
と喝破した。
全農は、あきらかに中途半端な姿勢を示した。
上記の文書にあるとおり、一方で、全農は「遺伝子組み換えのない」ことを国内農産物を消費者受け入れる根拠として認め、
その方針を打ち出している。
その一方で、遺伝子組み換え作物に対する色気を出している。
ここに一番大きな矛盾がある。
全農側は、実験はあくまで安全性を知るための実験であり、「科学的にわからないところを解明するためのもので、
遺伝子拡散などについては安全性に万全を期す」と繰り返し強調した。さらに、もし仮に安全性が確認されたにしても隔離生産、分離流通・加工、
および消費者の理解のない限り取り扱うことはないとする。
そして、商業化に際し、必要ならば、開放系栽培ではなく、閉鎖系(温室など)栽培を行い、米としてではなく、
粉体やパッケージ入りにするなども考えられると発言している。
同時に、「今商業化を考えてはいない」とも発言する。
質問者で近隣の生産者が、「ならば、今回の実験も温室でやればよい」「本当に安全性が確認でき、
すべてのわからないところが明らかになるまで、研究室内で行えばいいではないか」との問いかけには、答えを持たなかった。
これもまた質問者のひとりが強調したことであるが、「全農は、近年、偽装や不正表示などで信頼を失い、今、
その信頼回復に向けて全力を注いでいるところではないか。その全農が、安全や万全や完全な分離を言っても、それは説得力が持たない」と、
詰め寄ったが、これにも「万全の体制」「安全性を確認するための実験」と繰り返すばかりで、正面を切った回答はなかった。
近隣生産者や、生産者の聞いたという消費者は、個々の農家が、今回の情報を知らないことを指摘した。これに対し、
平塚市の湘南農業協同組合には4月19日に訪問し、幹部に説明したとしている。また、近隣JAに対しても、
直前に説明会の文書を流したとして、情報公開と理解は得られているとした。さらに、平塚市や神奈川県の理解は得られていると言っているが、
これにも、質問者から「市長らは知らない」と指摘があり、担当部局だけであることが明らかになった。
そのため、近隣の消費者や農家は、行政当局も含めた説明会のやり直しを要求した。そして、「今の時期、
この地区の農家がすでに田んぼ作業などで忙しいのは、農協組織として常識であろう。きちんとした説明や準備期間なしに行うのは常識外だ」
「組合員として恥ずかしい」と声を荒げた。これには全農側もうつむくばかりである。
しかし、説明会の再開催については、「万全の対策を現時点でとっている」として、「十分に理解が得られたとは思わない」としながらも、
開かない意向を明言している。ただし、行政側に、今回の報告と要請については伝えるとした。
今回の説明会では、全農側と農業生物資源研究所側の発言や温度差の食い違いが明らかになっている。また、数々のやりとりの中で、
全農側の矛盾に満ちた不誠実な姿勢が明らかになった。
農水省・環境省の承認が得られ次第、6月1日には作付けする予定である。全農側は、「承認が得られてから検討」と言っているが、
もはや既定路線であることは間違いない。
隔離ほ場を見学した生産者は、昆虫やねずみなどの侵入は簡単ではないかと、その施設に憤慨している。
ある記者は、「ここは誰でも入れるではないか。セキュリティ対策はとられているのか?」と、疑問を呈していた。それに対して全農側は、
「心配している」とだけ答えていた。
いったい、全農は何がしたいのであろうか。そして、これがJA全農の意志なのであろうか? 研究・開発系の先走りであり、
組織方針でないことを切に願いたい。そして、自らの現状をあらためて確認し、律し、今、全農としてやらなければならず、かつ、
取り組んでいる信頼の回復にこそつとめてもらいたいものである。
日本有機農業研究会の久保田裕子氏が、別途短信や報告を作成している。また、参加した方々からもそれぞれの視点で報告があると思う。
今後、同地域を中心に「スギ花粉症GM米に反対する会」が結成され、署名や抗議行動などが行われる予定である
[ 2005年05月05日 | レポート ]