2000年10月 遺伝子組み換えの基礎知識3
遺伝子組み換え食品表示制度の問題点
牧下圭貴
2000年10月(初出:学校給食ニュース)
本稿は、
学校給食ニュースに掲載したものを一部増補の上、転載するものです。
なお、学校給食ニュースでの本稿も執筆は牧下圭貴です。
日本では、遺伝子組み換え食品が流通しはじめた当初、表示制度がまったくありませんでした。また、旧厚生省(現厚生労働省)
も農水省も、「実質的同等性」を引き合いに出して、表示制度は不要としていました。そのため、旧厚生省や、農水省あてに、
全国から100万人を超す表示を求める署名が集まりました。また、地方議会の3分の1近くが表示を求める意見書などを採択しています。
市民の声の大きさに、国会、農水省、旧厚生省なども重い腰を上げ、
農水省管轄のJAS法改正によって遺伝子組み換え食品の表示制度を成立させました。
●農水省の改正JAS法による表示制度
農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)が1999年7月22日に改正され、
遺伝子組み換え食品について表示することが決まりました。2000年3月31日に「遺伝子組み換えに関する表示の基準」が告示され、
表示制度がスタートしました。この表示制度は2001年4月1日以降に製造、加工、輸入、
販売されるものから適用されることになっていますが、すでに移行期間として多くの食品が対応しています。
■表示されるもの
「従来のものと組成、栄養素、用途等は同等である遺伝子組換え農産物が存在する作目(大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、
綿実)に係る農産物及びこれを原材料とする加工食品であって、
加工工程後も組み換えられたDNA又はこれによって生じたタンパク質が存在するもの 」
については遺伝子組み換え品や不分別品を使用した場合、表示が義務づけられます。
加工食品として対象となるのは以下の食品およびそれを主原料とした加工食品です。
豆腐・油揚げ類、凍豆腐、おから、ゆば、納豆、豆乳類、みそ、大豆煮豆、大豆缶詰・瓶詰、きな粉、大豆いり豆、大豆(調理用)、大豆粉、
大豆たん白、枝豆、大豆もやし、コーンスナック菓子、コーンスターチ、ポップコーン、冷凍・缶詰・瓶詰とうもろこし、コーンフラワー、
コーングリッツ、とうもろこし(調理用)
表示方法としては、
大豆(遺伝子組み換え不分別)
大豆(遺伝子組換えのものを分別)
大豆(遺伝子組換え)
などとなります。
■表示されないもの
「従来のものと組成、栄養素、用途等が同等である遺伝子組換え農産物が存在する作目(大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、綿実)
に係る農産物を原材料とする加工食品であって、組み換えられたDNA及びこれによって生じたタンパク質が加工工程で除去・
分解等されることにより、食品中に存在していないもの」
つまり、遺伝子組み換えでできたタンパク質が分解しているから表示する必要はないとされるものは以下の通りです。これらの場合、
遺伝子組み換え品や不分別品を使用していても表示されません。また、これらを主な原材料とする食品についても同様です。
醤油、大豆油、コーンフレーク、水飴、異性化液糖、デキストリン、コーン油、ナタネ油、綿実油、マッシュポテト、ジャガイモでんぷん、
ポテトフレーク、冷凍・缶詰・レトルトのジャガイモ製品
■組み換えではないものの表示方法
遺伝子組み換え農産物を原料とした食品で遺伝子組み換え農産物ではない原料を使用した場合、以下の表示ができます。
表示をしなくてもかまいません。なお、遺伝子組み換え品であることを表示しなくてもよいものであっても、
遺伝子組み換えでないことを表示することはできます。
表示例
大豆(遺伝子組換えでないものを分別)
大豆(遺伝子組換えでない)
●表示制度の問題点
次のような問題点があります。
■表示しなくてもいいものがある
まず、遺伝子組み換え農産物の原料を使っていても表示しなくていい品目がたくさんあります。
遺伝子組み換え技術によりできたタンパク質が分解されているから区別がつかないという理由で表示されませんが、
消費者が遺伝子組み換え食品を選ぶ、選ばないの選択には必ずしもタンパク質が分解されているかどうか、
つまり安全性への不安だけではないと思います。社会的に、自然環境への影響を考えて、遺伝子組み換え食品を認めない消費者にとっては、
表示が必要なはずです。現状では、任意表示で遺伝子組み換えではないことが表示できますので、組み換え品ではないものを選ぶしかありません。
■分別の限界
遺伝子組み換え農産物と組み換えでない農産物が分別されていても、途中で混入したり、
とうもろこしのように遺伝子組み換えとうもろこしの花粉によって組み換えでないとうもろこしに遺伝子汚染が起こることがあります。そのため、
大豆では混入率5%と規定され、とうもろこしでは混入率が指定されていません。つまり、
遺伝子組み換えでないものを分別してあるという表示でも、100%ではない可能性があります。なお、ヨーロッパでは1%
が混入率として一律に規定されています。
■主な原材料
表示義務がある加工食品でも、主な原材料として重量の5%以上で、原材料の上位3品目になるものだけが義務表示になります。つまり、
重量が5%以上あっても原材料の上位3品目に入らなければ、義務表示外になってしまいます。
このJAS法による表示制度は、遺伝子組み換え品が増えるなどの変化に対応するため1年ごとに見直すとされています。
より厳しい表示制度を求めていくことが必要です。
●厚生省の食品衛生法によるもの
厚生省は、これまでガイドラインとして法的な拘束力がなかった遺伝子組み換え食品の食品としての安全審査について、
2000年5月1日付で関係省令、告示を改正することで義務化しました。2001年4月1日より施行されます。これにともなって、
2000年7月13日に出された食品衛生調査会表示特別部会は、
食品衛生法による遺伝子組み換え食品の表示が必要であるとの報告をまとめました。農水省のJAS法とほぼ同じ内容になりますが、こちらは、
安全審査を受けていない遺伝子組み換え食品が食品に入らないようにするという目的が加えられています。今後、
この報告に従って法案がつくられ、改正される見通しです。この表示制度も、JAS法の表示制度と同様の問題点があります。
[ 2005年05月05日 | レポート ]