1998年11月 遺伝子組み換えの基礎知識1
遺伝子組み換えとは
牧下圭貴
1998年11月(初出:学校給食ニュース)
学校給食ニュースに掲載したものを一部増補の上、転載するものです。
学校給食ニュースでの本稿は無記名ですが、牧下の執筆です。
●遺伝子組み換えって、なに?
「収穫してしばらく店頭においていたら、トマトがいたんでしまった。
いつまでも日持ちして新鮮なままのトマトがあったら、売れ残りにならなくていいなあ」
「強力な除草剤を開発できたんだけど、作物まで枯れちゃった。じゃあ、この除草剤をかけても枯れない作物があればいいんだ」
「虫がやってきて、作物を食べてしまう。だったら、虫が作物を一口食べたら死んでしまうようにならないかな。そうしたら、作物は安心だ」
こんなことを考えた人たちがいました。農薬メーカーや種メーカーの人です。
作物の品種改良をするのには、長い長い時間がかかります。ちょっと甘くしたり、ちょっと病気に強かったりする品種をつくるのに、
たくさんの交配を繰り返して、たまたま甘かったり、病気に強かったものを、選んでいく作業です。
たとえば、稲の場合、日本の自然環境では1年に1回だけしか育てられませんし、人工的な環境でも1年に3回ぐらいが限界です。それでは、
品種改良まで何年も何十年もかかってしまいます。
まして、上にあるような、日持ちするトマトや特定の除草剤に強い作物、葉を食べた虫が死んでしまう作物なんていうのは、
自然交配をいくら繰り返してもそうそうできるものではありません。
そこで、たとえば、虫にとっては毒になるタンパク質を生み出す別の生物を見つけてきて、
毒タンパク質をつくる性質を作物に入れることができたら、長い時間をかけなくても、簡単に新しい品種をつくることができるのでは、
と考えたのです。
そして、遺伝子組み換えがはじまりました。
●生物は細胞でできています
動物も植物も細菌も、ウイルスなどをのぞくほとんどの生物は、細胞の集まりです。そのしくみは、動物と植物で少しちがいますが、
だいたいのところ同じです。
同じような細胞の集まりなのに、ウシやカエル、トリやワニや魚、キャベツやリンゴのようにいろいろな種類の違いが生まれます。また、
1頭のウシにも目や脳や胃など形や役割が違います。
このような細胞の役目や形、生物の種類や性質を決めるのは、すべての細胞に存在する「遺伝子」です。
遺伝子は、細胞の核の中にあって、DNA(デオキシリボ核酸)という物質でできています。
DNAは、タンパク質を作る指令を出します。DNAの違いが、タンパク質の種類の違いになり、生物の形や特徴、性質の違いを生みます。
同じ生物の中でも、細胞の役割がそれぞれ違うのは、DNAがそれぞれの細胞の場所・
役割に合わせてタンパク質をつくる指令を出し分けているからです。
注:ウイルスは、細胞を持ちません。また、DNAのかわりにRNAを遺伝子として利用するウイルスもあります。
ちょっとイラストを使って説明しましょう。

DNAは、物語の朗読が記録された録音テープのようなものです。あいうえお…のかわりに、ATGCという4つの音があって、
その4つの音で物語が語られ、記録されています。

この物語のある部分は、「こんなタンパク質をつくりなさい」という命令になっています。ある部分は、よく意味が分かりません。

ひとつの生物の細胞は、ぜんぶ同じ物語です。
ちがう生物には、ちがう物語があります。

たとえば、チンパンジーとヒトのように近い種類の生物では、ちょっとだけちがう物語になっています。

カエルとコスモスでは、ずいぶんちがう物語になっているでしょう。
●遺伝子組み換えのしくみ
遺伝子組み換えを、イラストを使って説明します。

ここに、虫を殺す毒をだす細菌(BT菌)がいます。
そして、虫に弱いトウモロコシがいます。

BT菌の物語をよく読むと、「毒タンパクをつくりなさい」という部分が見つかりました。この部分の録音テープをハサミで切り取っておきます。

トウモロコシの物語のテープを広げて、1カ所を切り取り、BT菌の「毒タンパクをつくりなさい」を貼り付けてしまいました。

すると、トウモロコシがBT菌と同じ毒タンパクをつくり虫を殺すようになりました。
つまり、遺伝子組み換えとは、植物の遺伝子に、他の生物の遺伝子(一部)を無理矢理入れる技術です。
[ 2005年05月05日 | レポート ]